
「気になる10代名鑑」の965人目は、りんさん(19)。面白く、楽しい環境教育に携わりたいという思いとともに、フェアトレードを広めるサークルに所属しています。地元山梨の富士山の研究所で活動した経験のあるりんさんに、その印象的な出会いや環境教育で大切にしていることについて聞いてみました。
りんを知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「大学のサークルでフェアトレードを広げる活動をしています。
フェアトレードをより多くのひとに身近に感じてもらい、その仕組みや重要性を理解してもらえるように、イベントの企画や新たなフェアトレードグッズの開発をおこなっています。
今年の2月には、バレンタインに合わせて『People Tree』や『TONY’S CHOCOLONLY』などフェアトレードブランドのチョコレートを販売しました。
また、大学の『サービス・ラーニング』というプログラムに参加し、自然の面白さや大切さを伝える環境教育について、学びを深めています。サービス・ラーニングは、非営利組織や公的機関でボランティア活動をおこない、そこで得たことを大学の学びに繋げていく教育方法のことです。昨年の夏休みには、地元山梨にある富士山科学研究所で1ヶ月活動しました」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「環境問題と聞くと、『高い』『面倒』のようなマイナスなイメージが先行してしまっている気がしていて。もっと面白く伝えることはできないのかと考えて、フェアトレードの普及活動に取り組むサークルに入りました。
そもそも環境問題に関心をもったきっかけは、保坂直紀さんの『クジラのおなかからプラスチック』という本です。
小学高学年のときに読んで、植物や動物好きだったわたしは、命の重さについて考えさせられました。『人間じゃないからといって、軽視していい命なんてあるんだろうか』『植物や動物にも、人間と同じように心や感情があるのに……』って。特に、クジラの胃袋から出てきたプラスチックごみやネットに絡まったウミガメの写真は、今でも忘れられません。
それから自分で調べたり、セミナーに参加したりして、環境問題や自然の大切さを伝える環境教育に興味を持ちはじめました」
Q3. 活動するうえで、大切にしていることは?
「ひととのつながりです。
サービス・ラーニングの活動中、活動時間に何をしたらよいか分からず戸惑ってしまったことがあったんです。でも、『仕事を教えてあげるからついてきてね』と優しく声をかけてくれる職員のひとがいて。そのひとは職員全員の仕事も把握していて、そんな気遣いのできるロールモデルのようなひとたちに出会えたことは、ひとと直接つながることの魅力だと感じています。
他にも環境教育では、子どもたちの好奇心を大切にしたいと思っています。
実際企画を考えるうえで、大人に真面目で堅い話をしながら環境問題を意識してもらうよりも、小中学生の好奇心を惹きつけられるような面白いフックを考えるほうが楽しいんです。『ペットボトルって何からできてると思う?』みたいな単純な入り口から始まり、自然の大切さに気付いてもらいたい。そんなきっかけづくりはできないか、日々考えています」
Q4. 活動の中で、悩みがあれば教えてください。
「フェアトレードや環境教育に興味があるわりには、自分の知識が乏しいのではないか、というのが課題です。
インプットの場を増やそうと、本を読んだりエシカル・コンシェルジュという教育講座を受けたりしています。でも、まだまだ足りないなと感じることもあって……。まわりの先輩や同級生を見ていると、さらにそれを痛感するんです。
そうやって知識を得ていくことは、『どこまでいったらゴールなのか』がわからないですがが、辛い部分でもあり、楽しい部分でもあると思っています」
Q5. 将来の展望は?
「エコな行動を、面白く、楽しく促せるような方法を考えていきたいと考えています。
例えば、フェアトレード商品は値段が高いけれど、普段2個買うところをフェアトレードチョコレート1個に変えて、その分大切に味わって食べてもらう。そんな行動を増やしていきたいと思っていて。わたし自身もそうですが、フェアトレード商品は値段が高いので、すべてを置き換えることは難しいことだと思います。なので、よりたくさんのひとが少しでも多い回数、置き換える選択を取れるような社会を作りたいですね。
そして、将来は環境教育に携わる職場で働けたらいいなと思っていて。環境問題に取り組むことって、いま生きている人間の笑顔だけでなく、将来世代や他の生き物たちを守ることにもつながると思うんです。人間だけが楽しくて資源を独占する地球ではなくて、植物も動物も幸せな世界の実現を目指して活動していきたいです」
りんのプロフィール
年齢:19歳
出身地:山梨県富士吉田市
所属:国際基督教大学、ICU SDGs推進室、ICU ELABEL、ICU compost、ICU Plant Based、ICU地産地消
趣味・特技:読書、裁縫、人が楽しそうにしたり笑ってるのを見ること、自然の中にいること
大切にしている言葉:「1秒でできる事なんかたかが知れてる。でもそれを3600個積み重ねると1時間になる。1時間あると何が起きるか」(コード・ブルー )
Photo:Nanako Araie
Text: Haru Ninagawa