
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今回は、アフリカで広がっている、日本人も被害者になりうる「SNSを使った詐欺」についてご紹介します。
あなたの身近にもあるかもしれない、男女関係を狙った詐欺
みなさんは、「セクストーション」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。セクストーションは性的脅迫を意味しており、何らかの手段で得た性的な画像をもとに、その画像に写る相手に対してお金を要求する行為などを指します。
2023年、アメリカの17歳の少年が受けた被害は話題を集めました。彼はInstagramで同年代の女子のふりをした者に性的な写真を要求され、写真を送ったあと、お金を送るよう脅迫されました。最終的に、金銭の脅迫があってから、6時間後、少年は残念ながら自ら命を絶ってしまいました。実は、この少年を標的としたセクストーションの詐欺をおこな行ったのは、アフリカ西部の国・ナイジェリアに住む当時21歳と24歳の兄弟でした。この兄弟はナイジェリアから米国に移送され、彼らは17年半の懲役刑とその5年間の保護観察に処されています。
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どうして詐欺は巧妙化するのか
近年、アフリカでは、暗号通貨詐欺やロマンス詐欺、セクストーションといった、SNSを用いた詐欺が多発しています。その結果、日本人を含めた多くの外国人が被害に遭っています。
ロマンス詐欺とは、SNSやデートアプリを通じて彼女や彼氏、結婚相手になりすまし、借金や治療費、弁護士費用などを理由にお金を送金させる詐欺のこと。2024年、日本ではこの詐欺の被害額が過去最悪の397億円となりました。その中でも国際ロマンス詐欺が増加しており、欧米人などになりすました人とオンラインで出会い、お金を送金したら、実は相手がナイジェリアをはじめとするアフリカに住む詐欺師だったという事件が起きているのです。
ちなみに、ナイジェリアは、アフリカで1番、世界で3番目にロマンス詐欺師が多い国とされており、2021年には22億円以上の被害額に値する1129件のロマンス詐欺が発生しました。
詐欺の標的となるのは、独身の人や結婚生活がうまくいっていない人、相続財産を持つ未亡人などです。被害者の中には、十分に教育を受けた中年の成人もいることから、詐欺はただコピーアンドペーストの文章で被害者とやりとりを繰り返すのではなく、”デート”のような期間を経て、標的となる人の心理的特徴などを把握しながら巧妙に相手を罠に誘っていることがうかがえます。
また、テクノロジーの発展により、現在は自分の顔や声を女性に変換して電話できるサービスもあります。自分の暮らす国とは別の外国の携帯番号もネット上で簡単に購入できるため、詐欺師はこういったサービスやテクノロジーを駆使しています。
詐欺師たちの間で言葉巧みに相手の心に入り込むスキルが向上していること、そしてテクノロジーの発展が、詐欺の巧妙化に大きく影響しているのです。
貧困が詐欺師たちを生み出している
2024年、Meta社は詐欺に使用されたとするナイジェリアベースの63,000件のInstagramアカウントを削除しました。しかし、近年はスマホ1台で気軽に偽のSNSアカウントなどをつくることができるため、対応はいたちごっこで、詐欺数は今もなお増加し続けています。
さらに、2022年、ナイジェリアでは詐欺師を訓練する「ハッスルキングダム」が現地警察によって摘発され、逮捕者が出ました。ここでは国際ロマンス詐欺やセクストーション、フィッシングメールによる詐欺のトレーニングがおこなわれており、中には12歳の若さで詐欺に加担している少年も見つかっています。
なぜ、アフリカでは少年を含めた詐欺師たちが後を絶たずに出てくるのか。
この背景には、アフリカ諸国の失業率や貧困が大きく影響しています。ナイジェリアの平均月収は220ドルです。それに対し、ロマンス詐欺やセクストーションの詐欺では場合によってその10〜1000倍以上を一度に稼ぐことができます。コストパフォーマンスの良い稼ぎ方として、詐欺という手段が選ばれてしまっていると言えます。
あなたはどう考える?
詐欺に加担する人たちにも事情がある一方で、被害者は金銭的損失だけでなく、大きな心理的苦痛を経験することになります。ある研究では、ロマンス詐欺の被害者は鬱やPTSDを発症しやすく、恥や不承認への恐れから外部の支援を受けることに対して消極的であると報告されています。
しかし、一部では「アフリカで詐欺をする若者の行為は、西洋人のアフリカに対する過去の不正に対する賠償」という見方もあります。また、前述の2023年に発生したセクストーションの被害では、自ら命を絶った17歳のアメリカ人の少年の母親が、メディアに対し、「息子がいなくなって寂しいですが、彼ら(米国に引き渡されて投獄されたナイジェリア人兄弟)の母親も息子たちを恋しがっているでしょう」と話していたようです。
テクノロジーが普及したいま、アフリカでは、SNSを使った詐欺が「スマートフォン1台あれば人生を変えられる手段」となっている現状です。あなたはこの現象についてどう思いますか?
Text:Hao Kanayama