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ニューヨークの演劇事情をリアルレポート!ブロードウェイ編 Michiho in New York #03【Steenz Abroad】

ニューヨークの演劇事情をリアルレポート!ブロードウェイ編 Michiho in New York #03【Steenz Abroad】

こんにちは、現在ニューヨークの大学で演劇を専攻しているみちほです。

「Steenz Abroad」シリーズ、「Michiho in New York」。今回は、わたしがニューヨークで実際に体感したブロードウェイについてお伝えします!

やっぱりすごいブロードウェイ

ブロードウェイとは、 マンハッタン島の南北を斜めに走る大通りの名前。特に、ブロードウェイの41丁目から54丁目の間には劇場が多く集まっていて、その中でも座席数が500席以上の劇場で公演される演目を「ブロードウェイ・ミュージカル/プレイ」と呼びます。※1

約40箇所の劇場で毎日休むことなくストレートプレイやミュージカルが上演されています。特にこの時期は、演劇界のアカデミー賞と言われることもあるトニー賞に向けて毎週新作が登場しているので、どれだけ見ても作品を全て制覇することができません(泣)

その中でも、わたしがつい最近、観劇したのが、4月23日にオープンしたミュージカル『Just In Time』。これは、Bobby Darinという、60年代のアメリカで活躍した歌手の生涯を描いたもの。昔から歌手やスターの生涯を描いた演劇作品はありましたが、映画『Bohemian Rhapsody』の影響もあってか、こうした本人の曲を使用した自伝的ミュージカルが、ブロードウェイではトレンドになっているように思います。今シーズン上演されたものだけで4つ以上あるとか。(わたし調べ)

そして今作品の主役は、『アナと雪の女王』のクリストフ役やドラマ『Glee』で知られるジョナサン・グロフ。半円形の劇場を活かしたイマーシブな演出生バンドが奏でる音楽が彼の表現力と合わさり、約2時間半の公演中、観客はずっと彼に釘付けでした。前シーズンも彼の出演作品を観ましたが、それと比較しても彼の得意なダンスシーンが多く、役としても彼との共通点が多いのか、より一層生き生きとしているように見えたのが印象に残っています。

でもブロードウェイがゴールとは限らない!

ブロードウェイは、演劇の世界最高峰と言われていますが、『Just In Time』のようにブロードウェイの名にふさわしい作品もあれば、あまりにも出来が悪く、チケットが売れずにオープンから2週間もしないでクローズしてしまう作品もあります。

逆に、オフ・ブロードウェイ(客席数が100~499)やオフ・オフ・ブロードウェイ(客席数が100未満)といった小規模な劇場でも、その芸術性が高く評価され、何年もロングランを続けている作品もあります。例えば、ディズニー音楽の巨匠アラン・メンケンが作曲を務めた『Little Shop of Horrors』は、今年で上演6年目になります。また、オフ・ブロードウェイで上演されて人気を得た作品が、その後オン・ブロードウェイで上演されることも頻繁にあります。(ブロードウェイに行ったら評価が下がった、なんてこともありますが。)

私がこの1年間で1番好きだった作品は、韓国発のブロードウェイミュージカル『Maybe Happy Ending』という、2人のロボットの恋愛を描いた作品です。出演する役者はわずか4人という小規模な作品ながらも、ブロードウェイ仕様の大規模なセットと美しいプロジェクションなどがあいまって、主人公2人の繊細な関係性を保ちつつも、ダイナミックな作品になっていたと思います。ただ、やはりこじんまりとした作品ではあるがゆえに、もっと役者と観客の距離が密接になる小さなオフ・ブロードウェイの劇場で観劇してみたかったとも感じました。このように、作品の人気や興行、芸術的な性質のバランスを取るのは本当に難しいんです。

そのため、大規模な劇場で上演されることが成功というわけではなく、それぞれの作品に合った規模の劇場や観客との距離感をうまく捉えることができた作品こそが、成功していると言えるでしょう。もちろん、ブロードウェイで上演されるトニー賞を狙うような作品も素晴らしいですが、みなさんがニューヨークに来た際にはオフ・ブロードウェイの作品にも目を向けてみてください!

日本人もどんどん活躍中!

さて、そんなブロードウェイ、オフ・ブロードウェイで活躍している日本人もたくさんいます。2023年度のトニー賞の授賞式では、9人もの日本人がパフォーマンスをしていたとか。わたしが最初に紹介した『Just In Time』には、アソシエイトプロデューサーとして高橋リーザさん、サウンドデザイナーとしてヒロ・イイダさん、2人の日本人の方が関わっています。わたしがニューヨークに来て驚いたのは、俳優さんだけでなく(比較的数は少ないものの)、舞台の裏方にもたくさんの才能溢れる日本人がいるということです。

そして、高橋さんやヒロさん、その他30人以上のこの業界で働かれている方々とお会いしましたが、みなさん日本人らしい細やかさと、ニューヨークで生き抜く中で身に付いたであろう力強いバイタリティが印象的で、わたしもこうなりたいと強く思わせてくれます。

日本人コミュニティもありますが、内輪で盛り上がっているだけということは全くなく、それぞれが個人で努力を続け、お互いにインスパイアしあったり、困ったことがあれば助け合ったりするような、温かくもニューヨークらしいコミュニティだと思います。特にわたしはこちらに来たばかりなので、いろんな方がご自身の経験を元にアドバイスをくださって、本当に助かっています。

今回はブロードウェイ中心にお伝えしましたが、次回はニューヨークの演劇文化や教育などについて、より詳しくお話しできればと思います。

※1 ブロードウェイとは?(詳しく解説・割引チケット情報)

Edit:kanon

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島﨑 みちほ

ライター

2005年生まれ。東京都出身。幼い頃から出演者・裏方として演劇に関わる。大学進学を機に渡米し、現在はニューヨークにあるフォーダム大学シアタープログラムに在学中。ステージマネジメントを専攻しており、学内外でステージマネージャー・照明デザイナー・プロデューサーとして活動中。

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