都市にもたくさんの生き物が暮らしている?生物調査イベント『City Nature Challenge』の輪が拡大中!【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、世界的におこなわれている生物調査イベント『City Nature Challenge』についてご紹介します。
2016年から始まった『City Nature Challenge』
自分が暮らす地域や街に、どのような動植物が生息しているのか知るきっかけとなる「生物調査イベント」。近年は、さまざまな企業や団体により、世界中で開催されています。その中でもひと際注目されているのが、2016年からおこなわれている『City Nature Challenge(以下:CNC)』です。
生物調査といっても方法はとてもシンプルで、まず街中を探索し、動植物を見つけたら写真を撮ります。その写真を、動植物を識別するアプリ「iNaturalist」に共有するだけです。毎年4月末に4日間おこなわれていたのですが、今年は二部構成にするとのこと。2025年4月25日~4月28日は動植物の写真を撮る期間となり、4月29日~5月4日は発見した動植物が何かを識別する期間となります。結果は、2025年の5月5日に発表されるそうです。
初回はロサンゼルスとサンフランシスコのみで開催されていたCNCですが、現在は51カ国690都市が参加する国際的なイベントになっています。ちなみに2025年度のCNCには、昨年に引き続き日本の石川県も参加する予定です。
都市の生物を観察し、記録することの意味とは
CNCのような生物調査イベントの開催には、さまざまなメリットがあります。
まず考えられるのは、自分の暮らす街にどのような生き物がいるのかを知ることにより、都市の生物多様性への理解が深められること。そして、動植物関連の研究を手がける科学者にとって、地域に生息する動植物の種類や分布、傾向や特徴に関する情報の収集に役立つこと。さらに、収集した情報を研究や保全計画、生物多様性がどのように変化していくのかの追跡に役立てられる、などです。
では、CNCの中で実際にどのくらいの動植物が発見されたのでしょうか。2024年の結果を見てみましょう。2024年のCNC参加都市数は、51カ国690都市でした。日本は、東京都と石川県が参加。これらの地域で240万件以上の観察がおこなわれたことにより、65,000種以上の動植物が記録され、なかには3,940種の希少動種や絶滅危惧種も観察されたそうです。
ちなみに、観察数と種の数、観察者数の3つにおいてもっとも多かったのは、南アメリカ大陸のほぼ中央に位置するボリビア多民族国の首都ラパスです。観察数が165,839件、種の数は5,352種、観察者数は3,593人でした。
あなたの暮らす街にも希少な生き物が生息しているかも
2024年のCNCでは、希少な生き物たちも発見されました。例えば、台湾中部で発見された「タイワンツグミ」という台湾固有の鳥が1羽のみ観察・記録されたそうです。そのほかにも、アメリカ合衆国・南フロリダでは「Dingy Purplewing」という名前の蝶も観察され、この州では珍しいと注目を集めました。
そして、日本の東京都では976種、石川県では283種の動物が記録されたとのこと。石川県より東京都のほうが発見された種が多いことに、驚かれた方もいるのではないでしょうか。都市化が進み、ビルが立ち並ぶ地域のイメージが強い東京都ですが、意外にも多くの生き物が生息しているようです。
とくに、ナナホシテントウ、オオイヌノフグリ、ハルジオン、キバナダイコン、ムクドリ、ナヨクサフジの順で多く発見されています。詳細については「iNaturalist」に掲載されていますので、気になる方は覗いてみてください。
生物調査もかねて、自分の暮らす街を散策してみよう
CNCは期間限定のイベントですが、生物調査はいつでも気軽にできます。寒さがやわらぎ、さまざまな動植物たちが活発に動き出す春。新年度が始まり慌ただしい日々を過ごしている人も多いと思いますが、生物調査もかねて街中をのんびり散策するのも良いかもしれません。息抜きにもなり、意外な動植物たちに遭遇する可能性もあります。
Reference:
About|City Nature Challenge
The 2025 CNC takes place in 2 parts|City Nature Challenge
Past Results|City Nature Challenge
Identifying species in your city with the City Nature Challenge|Happy Eco News
CNC2024-Tokyo:世界690都市と東京の結果のお知らせ|一般社団法人生物多様性アカデミー
ボリビアってどんな国?|一般社団法人日本ボリビア協会
IUCNレッドリスト|IUCN日本委員会
iNaturalist
City Nature Challenge 2024: Tokyo|iNaturalist
Text:Yuki Tsuruda