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耳心地最高!ボーダーレスな新感覚ミュージック Miso Extra「50/50」【21歳の音楽コラム 渡辺青のこれ聴いて!】

耳心地最高!ボーダーレスな新感覚ミュージック Miso Extra「50/50」【21歳の音楽コラム 渡辺青のこれ聴いて!】

21歳、東京の郊外でぽけ〜っと暮らす、音楽ナードの渡辺青が日々のDIGりの中で出会ったさまざまな「これ聴いて!」な音楽たちを、新旧問わずに紹介していく企画「渡辺青のこれ聴いて!」

今回紹介するのは、日本とイギリスにルーツを持つシンガーソングライター/ラッパーのMiso Extra。
Miso Verseなる理念のもとに、日本語と英語の両方が使われるリリックは新鮮でわたし的、今最も日本でもっと広まってほしいアーティストNo1!!!

ジャンルをするすると超えていく新感覚・ヒップホップ(なのか?)

彼女のつくる音楽をひと言で説明するのはちょっと難しい。

とにかく一度聴いてみて欲しいのだけど、サンプリングが散りばめられた個性的なエレクトロ・ビートにキュートな声のラップ、たまにどろっとしたリリックが出てきたかと思えば、最終的にはポップにまとまっている感じ。するするとジャンルの境界を超えていく、そんな自由さが聴いていて楽しい。


なんといっても、彼女はリリックの扱い方がとてもユニークで、ロンドンが拠点なのにもかかわらず日本語と英語が行ったりきたりして、時にはほとんど日本語詞の曲もあったりする。

おそらく、それは彼女にとってはごく普通なことだったのではないかと思う。西洋で育ちながら、アジアのカルチャーの影響も思いっきり受けてきたのであろうことは、初期のMVなどビジュアル方面からうかがい知ることができる。某超有名即席麺のパッケージを模した『Miso Extra』のロゴは秀逸だ。

確かに「洋楽」なのに、日本人のわたしにとってこんなにダイレクトに理解のできる音楽があるということに、はじめて聴いた時、頭の中が一瞬混乱状態(もちろんポジティブな意味で)に陥るくらい、今まで感じたことのないフィーリングだった。本当に「これ聴いて!」って感じだ。

Miso Verse的日常

そんな彼女のバックボーンから生まれた感性は「Miso Verse」というコンセプトによって説明される。彼女自身、自らの音楽性の説明に困った時に出てきた言葉だという「Miso Verse」は、ジャンルという壁を超え、彼女の曲を聴く人々がありのままでいることのできる、ひとつの居場所のような音楽だとわたしは解釈している。

この理念を掲げて活動する彼女の作る音楽には、音作りに限らずゲームのBGMの様なバーチャルなエッセンスを感じる。

例えばオンラインゲームの中では、向かい合う相手が本当はどんな人間なのかなんてわからない。でも同時に、その中では人種や性別、年齢や立場なんていう鬱陶しい分断も存在しない。

だいぶ理想的な話かもしれないけれど、自分を含め、全ての人が分断のない、どこの誰で何をしていても「全然フツー」に生活できる世界があったらいいなとわたしは思う。そしてエンパワーメント性のある強い言葉と、日々のふとした気持ちを両立させるMiso Extraのリリックは、そんな新たな世界へと誘うサウンドトラックの様に聴こえる。

背中は押さないチアアップ


粒揃いの楽曲ばかり披露してきた彼女なので、どの曲を紹介しようかと迷ってしまった。結論が出なかったので、わたしのいちばんお気に入りの曲を紹介させていただきたい。

『50/50』は彼女のセカンドEP『MSG』(MonoSodium Glutamate=グルタミン酸ナトリウム。いわゆるうまみ調味料の意味意)に収録されている。


ポコポコ鳴るリズムパターン、きゅんきゅん鳴る癖になるシンセのメロディ、突如現れるボイスサンプリングなど、シンプルな音数の中で、あるべきところにあるべきものが置かれている感じがとても心地良い。

そして、彼女が彼女自身を呟きながら鼓舞しているかのように聴こえるラップは、決して押し付けがましくない感じで、淡々と、「ま、そっちも頑張れや」と言ってくれているような気がする。

少し落ち込んだ時にこの曲を聴いている。バイト先にはあんまり合わない人がいるし、朝ごはん食べれなかったし、なんか曇りだし……みたいな、ちょっとしたことでダウン目な日とかに、別にその落ち込みが解消されるわけでは無いんだけど、ま、いっか。となれるような曲だ。

初のフルレングス・アルバム

そんなMiso Extra、5/16に超待望のデビュー・アルバム『Earcandy』のリリースを控えている。

既に何曲か公開されており、NYの歌って踊る6人組R&Bコレクティブ、MICHELLEのメンバーから提供された『POP』『Certifiied』はインディー・ポップ好きとしては興奮モノだし、DJ Boringとの共作『Slow Down』はUKガラージを取り入れた一曲で、没入感たっぷり、エレクトロ好きもしっかりノックダウンさせている。

まだ未公開だが、個人的にはつい先日デビューEPをリリースしたロンドン出身のR&Bシンガーソングライター、tysonとのダブルクレジット曲『Candy Crushin’』が特に楽しみで、グルーヴィー&アブストラクトな音楽性を持つtysonとの共作はどんな味付けなっているのか、とても気になる。


24年の夏に彼女自身ファンでもあるというGorillazのフロントマンを務めるDamon Albarnのstudio 13を拠点に制作されたと言う本作は、上記のようにコラボ楽曲が多く入っており、従来のMiso Verse的世界観を豪華なコラボレーター達と一緒に楽しんでいる様が聴いて取れるような、メインストリームに限りなく近い部分で、インディシーンの個性的な音が爆発するような、そんな素敵なポップ・アルバムに仕上がっているんじゃないだろうか。

わくわくしながらリリースを待っている。欲を言えばMiso Extraとしての初来日も、早く見てみたいところだ!

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ライター

渡辺青(わたなべ あお) 2003年生まれ。家業の大家を継ぎつつシェアスペース「空き地さんかく」の主宰&レコード屋と古本屋で働くなど、一体何屋なんだか不明な生活を送る。2025年の目標は、DJをできるようになる事。

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