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YouTubeで農作物を売る? セネガルのユニークな農業支援プロジェクトをご紹介【Steenz Breaking News】

YouTubeで農作物を売る? セネガルのユニークな農業支援プロジェクトをご紹介【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今回は、セネガルの若者の生活を向上させる農業支援プロジェクトについてご紹介します。

アフリカでは、いまも農業が盛んにおこなわれている

日進月歩であらゆる分野の技術が進化するなか、世界ではオフィスで事務仕事などに従事する「ホワイトカラー」の仕事に就く人の割合が増加しています。

リクルートワークス研究所の報告書によれば、1996年から2022年の間に、ホワイトカラー就業者の割合はアメリカで46.4%から54.9%、イギリスで36.6%から59.8%、ドイツで39.5%から59.1%と増加していたそうです。この傾向は韓国やマレーシア、フィリピンなどのアジア地域でも見られているといいます。

一方、筆者の住むアフリカでは、いまもなお農業が国の経済や人々の暮らしを支えています。アフリカ大陸の一部において農業はGDPの17%を占めており、各国の基幹産業のひとつとなっていると表現しても過言ではありません。

経済的な豊かさを享受できないセネガルの農家

しかし、アフリカ各地では、農業人口に対する生産性が悪く、いくら生産者が懸命に働いても、経済的に豊かになれないという問題が見受けられます。なかでも西アフリカのセネガルでは、国民の21%が農業分野で働いており、同国のGDPに占める農林水産業の割合は17%です。

実際、セネガルの2023年夏頃における平均月収は約27,000円でしたが、現在の農家の最低月収は約16,000円です。

さらに、農業人口が多いにも関わらず、セネガルでは輸入品が国内の食糧需要量の70%も占めており、セネガル政府としては国内生産率を高めたいとしています。

農家が貧しい理由として、機械化が浸透しておらず生産性の向上に限界があることや、気候変動の影響、土地の劣化などが考えられます。また、販売ルートを増やしたり、マーケティング活動をしたりといった経営の知識が農業を営む人々にないことも、セネガルの農家の収入が上がらない要因として考えられます。

セネガル農家の収入・雇用向上を目指すプロジェクト

そこで、セネガルの若手農業従事者の収益向上や雇用創出を目指して設立されたのが、国際農業開発基金(IFAD)とアフリカ開発銀行、セネガル政府からの資金提供を受けた「AGRI-JEUNES」というプロジェクトです。

農村に変革をもたらすアクションのひとつとして位置付けられているAGRI-JEUNESは、農業も含めた第一次産業で経済活動を持続的におこなうためのスキルを若者に研修することで、彼らがいずれ農業起業家として羽ばたいていくことを目指しています。

そうした研修の中には、動画作成のスキルを磨く講座もあります。アフリカでは、農家が消費者に商品をマーケットで直接売るケースが多くなっており、動画作成のスキルを得られれば、消費者との接点を増やせるからです。カメラの前で野菜を売り込んだり、農場の説明をしたりして作成した動画は、YouTubeやTikTokに載せることで、より多くの販路を得ることにつながると考えられます。

ある統計によると、セネガルの25〜34歳の58.6%がスマートフォンを所有しており、他のアフリカ諸国に見られるように、大多数の若者がSNSを利用しているといいます。アフリカ諸国ではすでに、SNSを利用して顧客を集めている洋服屋やヘアサロン、ネイルサロンを頻繁に見かけます。それと同様の集客方法を、農業でも実現していこうということなのです。

さらに、AGRI-JEUNESは、生産者にとって利益があるだけでなく、B2Bビジネス(※)においても役立っています。たとえば、現地の人の話によれば、飲食店をはじめたい人が生産者を探すときに、生産者の顔と生産方法が見えるのは安心だそう。

※B2Bビジネス:Business to Business。企業間でおこなわれる取引やビジネスモデルのこと。

AGRI-JEUNESの取り組みは、商品の販売方法がひとつしかなかった農家に、国内外やB2Bの顧客を得るチャンスを創出しているといえます。

実際にプロジェクトに参加した女性に話を聞いてみると、「その日のための生活費だけでなく、投資のためのお金を得るようになった」と語ってくれました。日銭を稼ぐことに必死だった暮らしから、少し余裕が生まれ、将来の予定を立てられるようになったということで、AGRI-JEUNESがおこなう活動の影響力の大きさを実感します。

AGRI-JEUNESは今後、セネガルの農村部の15万人の若者に利益をもたらし、働きがいのある雇用を35,000件を生み出すとしています。農業人口が多く、開発も急速に進むアフリカで、AGRI-JEUNESの取り組みは、セネガルの将来を担う若者を経済的に自立させる革新的な手段になるかもしれません。

References:

日本労働研究機構「データブック国際労働比較1999」
労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較 2007,2024」
Agriculture, forestry, and fishing, value added (% of GDP) – Sub-Saharan Africa
Senegal – Agricultural Sector
Take Profit Organization「SENEGAL WAGES: MINIMUM AND AVERAGE」
Playlab「Agriculture, Food Industry」
United Nations「IFAD / SENEGAL WOMEN AGRIBUSINESS」
Start「Smartphone Users in Senegal」
IFAD「Rural Youth Agripreneur Support Project (Agrijeunes Tekki Ndawñi)」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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