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野生では絶滅したハワイのカラス「アララ」がマウイ島に戻ってきた!種の保存に向けた取り組みに迫る【Steenz Breaking News】

野生では絶滅したハワイのカラス「アララ」がマウイ島に戻ってきた!種の保存に向けた取り組みに迫る【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、野生では絶滅してしまったハワイ固有のカラス「アララ」を再び自然環境の中へと戻す取り組みについてご紹介します。

2024年12月、マウイ島の空に5羽の「アララ」が放たれた

ハワイ諸島の中でも、2番目に大きい火山島として知られる「マウイ島」。

豊かな自然環境が魅力のこの島に、2024年12月4日、5羽のハワイ固有のカラス「アララ(正式名称:ハワイガラス)」が放たれました。マウイ島へのアララ放鳥は、史上初。そのため、いま世界から注目が集まっています。

今回放鳥されたのは、ハワイ諸島内にある二カ所の鳥類保護センターで飼育されていた2羽のメスと3羽のオスです。5羽は自然の厳しい環境下でも生きていけるよう、センター内で数カ月間、アララ同士で絆を築き、社会性を学んできました。また、専門家がアララの餌探しの能力や、マングースのような捕食者への反応を評価。さらに、 獣医による健康診断も受けています。

アララは、IUCNのレッドリストで「野生絶滅」に分類されている

このような徹底した事前準備の裏には、アララの「レッドリスト」登録が関係しています。レッドリストとは、国際自然保護連合(以下、IUCN)が管理する、絶滅の危機に瀕している野生生物のリストのことです。

リスクの高い順に9つに分類されており、アララは上から2番目である「野生絶滅」にカテゴライズ。その名の通り、野生では絶滅し、飼育下でのみ種が生き残っている状態です。

では、野生のアララはなぜ、絶滅してしまったのでしょうか。

その原因のひとつ目は、ネズミ退治用に放たれたマングースや猫がアララを襲ったこと。ふたつ目は、外来種によりハワイ諸島に持ち込まれた、鳥類が感染する病気の蔓延です。これらの生き物や病気により、アララの個体数は急激に減少。個体数が減ると、強い血縁関係にある個体同士の交配(近親交配)も増えます。すると、病気または環境ストレスに弱い個体や先天的な異常をもつ個体の誕生、出生率の低下などがおこります。アララはそのような原因により、野生絶滅まで追い込まれてしまったのです。

1993年から保護活動を開始。20羽未満の個体が現在は110羽以上に

アララの個体減少を食い止めるために、1993年から『ハワイ絶滅危惧鳥類保護プログラム』が始まりました。当時はまだ野生のアララが存在していたため、巣から卵を回収し、孵化させ自立するまで育て、野生に放していたそう。しかし、そうした努力もむなしく、一度始まってしまった個体数の減少は止まりませんでした。

そんななか転機となったのが、1996年のアララの保護施設完成とフルタイムでのお世話の開始です。アララに対し、施設で十分な食料と安全な住環境、繁殖環境を整えました。その結果、無事に個体数は増加。2016年から、ハワイ島などで放鳥を再開しています。

また、保護や放鳥のほかにも、地元の子供たちと一緒に在来種のくだものを育て、アララに与えているとのこと。これは、アララに自然のくだものを楽しみ、慣れ親しんでもらうことが目的だそうです。このようなハワイ諸島の人々の献身的な保護活動が実を結び、1990年代後半に20羽未満だった個体数は、現在は110羽以上にまで回復しました。

まずは知ることが大切

アララの個体減少は、もとを辿ると私たち人間が外来種をハワイ諸島に持ち込んだことが始まりです。人間の勝手な都合で無計画に生態系を変えてしまうと、さまざまな生き物に悪影響を及ぼします。現在、レッドリストに掲載されている動植物は42,100種類以上。これ以上その数を増やさない、そして減らしていけるように動いていかなければいけません。

「自分には何もできないから……」と、そのまま見過ごしてしまうのではなく、まずはレッドリストにどのような動植物が載っているのか、なぜ登録されているのかなど、知ることから始めてみませんか?自然環境を守るために、その一歩がとても大切だと思います。

Reference:
IUCNレッドリストカテゴリーと基準|IUCN日本委員会
Keauhou Bird Conservation Center and Hawai‘i Forest Institute working together to save endemic forest birds on the brink of extinction|Hawai`i Forest Institute

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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