Steenz Breaking News

アフリカの若者に広がる、SNSを利用した売春。 一体何が起きているの?【Steenz Breaking News】

アフリカの若者に広がる、SNSを利用した売春。 一体何が起きているの?【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今回は、アフリカで広がりつつある、TikTokなどの誰もが利用できるメディアを利用した売春について調査しました。

売春は違法でも……

アフリカでは、ほとんどの国で売春、もしくはそれに関連する活動は違法となっています。しかし、筆者が住むウガンダをはじめ、渡航したことのある他のアフリカの国では、公共の場で「立ちんぼ」と呼ばれる売春相手を探すセックスワーカーを頻繁に見かけます。

また、売春宿の設置や利用が違法である国でも、実質的に売春宿として活動している場所は存在しています。

ウガンダや他の多くのアフリカの国では、売春宿や路上で客が立ちんぼのセックスワーカーに声をかけることで売春行為が成立しますが、近年は「SNSを利用した売春」が急速に広がっています。

手っ取り早い稼ぎ方として「SNSを利用した売春」が広がっている

その中でも、売春につながる行為がおこなわれていたり、違法な性的コンテンツが売買されたりしているために、問題となっているのが、TikTokです。

TikTokは、他のSNSに比べると、インフルエンサーやSNS運用の専門家でなくとも収益化しやすいと言われています。そうした特徴から、アフリカでは若い世代でのTikTokユーザーが急激に増加。ドイツの統計データ会社 Statistaの調査によれば、ナイジェリアでは、2,739万人がTikTokを使っているそうです。

世界中の若者が流行のコンテンツやダンス動画を発信しているように、アフリカでも中学生くらいの子どもたちが動画を投稿している姿を見かけます。しかし、こういった動画やライブストリーミングの中には、10代と20代の女性が発信元となった性的コンテンツが含まれていることがあります。

そもそもTikTokでは、過度な露出や性的サービスを提供することはポリシー上、許容されていません。そのため、アフリカでもポリシーに違反するコンテンツを監視し、規制するモデレーターは存在します。

しかし、実際にこのようなコンテンツは夜間帯にアップロードされることが多いもの。モデレーターの人数や稼働時間帯の関係から、性的コンテンツの規制が間に合っていないのが現状です。

SNSを利用した売春の実態とは

TikTokのライブストリーミング機能では、発信者は視聴者が送った「ギフト」を換金できます。そうした機能を使い、個人間で性的コンテンツが売買されており、近年、アフリカで女性が生計を立てる新たな手段のひとつとなっています。

性的コンテンツを買う側には現地の人のほか外国人も含まれており、これには世界的にオンライン決済の方法が充実したことによって、支払い方法が増加したことが関係していると考えられます。

例えば、ケニアでは、モバイル送金や決済ができる「M-Pesa」といったモバイルマネーサービスが現金よりも広く利用されています。スマホ一台さえあれば、性的コンテンツを発信することで、学校や仕事がなく貧困にあえぐ女性でも、他の仕事をするより容易に良い報酬を得られるのです。

女性の発信者にはセックスワーカーとして働いている人も含まれていますが、ごく一般の若い女性も軽い気持ちで性的コンテンツを発信しているケースがあるようです。


さらに、これらの発信者に近づくデジタル上の売春斡旋者も増えています。

女性の発信者に対して、売春を斡旋することで手数料を得て稼いでいるのです。女性は公共の場で立ちんぼとして値段交渉などをする必要がなくなり、客と一対一の環境に置かれるよりもトラブルを回避しやすいといったメリットがあることが、オンライン上での売春が増えている一因であると考えられます。

メディアリテラシーの普及が必要

2023年、ケニアのウィルアム・ルト大統領はこれらを問題視し、TikTokとの会議で「不適切コンテンツの削除とTikTokのケニア事務所を設立し、多くのケニア人を雇用すること」で合意しました。

しかし、多くのTikTokユーザーがいるアフリカでは、毎日のようにポリシーに違反するコンテンツが発信されています。また、メディアリテラシーの授業がアフリカでは広まっておらず、人々は「SNSを利用する上で何が不適切であり、違法であるか」を知りません。

イギリスでモバイル事業を展開する団体の調査によると、2030年までにサハラ以南のアフリカでは人口の87%がスマートフォンの利用者になると予測されています。

スマートフォンの普及によって、人々が性的コンテンツに身近に触れる機会が増え、女性の売春への入り口となることで、セックスワーカーを含めた貧困層の女性の働き方にも変化が見られるようになっています。今後、アフリカ各国は教育や法整備によってSNS上の犯罪を防止し、メディアリテラシーを普及させることが求められてきています。

References:
TikTok視聴者数が最も多い国
Statista「Social media in Africa – statistics & facts」
PRESIDENT OF THE REPUBLIC OF KENYA「TIK TOK TO MODERATE ITS CONTENT」
Consultancy.africa「Number of smartphone users to spike in Sub-Saharan Africa」
National Library of Medicine「Female sex workers in Africa: Epidemiology overview, data gaps, ways forward」
TikTok「慎重に扱うべきテーマと成人向けテーマ」

TextHao Kanayama

SNS Share

Twitterのアイコン

Twitter

Facebookのアイコン

Facebook

LINEのアイコン

LINE

Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

View More