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シェフも党員!? 共産党食堂で食べて感じた結党100年超の底力【政治POPs】

シェフも党員!? 共産党食堂で食べて感じた結党100年超の底力【政治POPs】

― 誰かが、「日本は平和だから、若者が、政治に興味を持たずにすむ」とか⾔っていたらしい。でも、政治は未来の国を良くするためにあるのなら、きっとホントは僕らのもの。なんでもいいから、興味を持とう。政治の話はそれからだ。

こんにちは。フリーライターの中村眞大です。大学を卒業したばかりの22歳で、普段は政治や社会運動についての取材をしています。政治をポップに発信していく新企画「政治POPS.」。中村眞大がナビゲーターとなり、10代の皆さんを楽しくわかりやすい政治の世界へと誘います。

政治と飯。あんまりピンと来ない二つのキーワードだけど、なんか面白そう。ということで、前回の自民党食堂ルポに引き続き、日本共産党の食堂を取材してきました。

党幹部も足を運ぶ美味さの秘訣

JR代々木駅を降りて踏切を渡ると、5分も経たないうちに地上11階建ての日本共産党本部に到着する。共産党は、今からおよそ100年前の1922(大正11)年に結成された日本最古の政党だが、残念ながら今まで一度も政権をとったことがない。現代でも国会や地方議会では「野党」として「与党」の不正や腐敗を追及するイメージが強い政党だ。

受付で出迎えてくれた広報の黒田さんと一緒に4階の「食堂ホール」へ上がる。お昼時ということもあり、食堂は多くの党職員で賑わっていた。前に訪れた自民党と比べても広く、複数人でワイワイご飯を食べている人が多いようだった。

今日のメニューは、鰤の照り焼きと豚汁うどんの選択制。両方に小松菜と薩摩揚げの煮浸しがついてくる。まず手を洗い、ご飯をセルフでよそっていき、棚から主菜をとる。給食の配膳にちょっと似ている。ご飯がセルフサービスなのは、若い人から年配の人まで、好きな量をよそえるようにという配慮らしい。

お盆を持って自席に戻り、いざ実食。

「いただきま……おや?」

遠くの座席に何やら見たことある人がうどんの載ったお盆をもって座るのが見えた。あれはおそらく、小池晃書記局長だ! 小池さんは、他党では幹事長にあたる共産党の幹部。故・安倍晋三元首相をはじめ、歴代総理大臣と国会で舌戦を交わしてきた凄腕の議員だ。早速、声をかける。

 「よく食堂には来られるんですか?」

「週に4、5回、いやもっと来てるかも」

「一番好きなメニューは?」

「揚げ物が好きだから、鶏のから揚げかな(笑)」

まさか党の幹部が食堂でうどんを啜っているとは思わなかった。

座席に戻って実食。

「うん! うまい!」

脂も程よくのっていて食べやすい。もっと欲張ってよそっておけば良かったと思うほどにご飯が進む。

豚汁うどんのほうは、豚のほかにいんげんや根菜類も入っており、ボリュームたっぷりだ。隠し味にコチュジャンを入れているところがこだわりポイントらしい。なんとこれで全品統一480円。ものすごくコスパが良い。

シェフまで党員という共産党草の根の強み

お昼のピークも過ぎて、人も少なくなってきたころ、日本共産党食堂の責任者・髙塚さんに来ていただき、お話をうかがった。食堂のシェフは全員が共産党員で、外部委託はしていない。ちなみにこれはシェフだけでなく、警備員、IT技術者、機関紙「赤旗」の記者まで全員共産党員だ。

食堂は1967年、各地で料理の仕事をしていた党員を集めて開設。現在のシェフたちも前職は、ホテルのシェフ、豚カツ屋さん、ラーメン屋さん、イタリアンなどと和、洋、中華さまざまで、髙塚さんも居酒屋などで10年ほど働いたのち、2002年から食堂で勤務しているそう。凄腕シェフが揃う共産党食堂では、ソースや出汁もいちから作っているというから驚きだ。

「私たちも党員なので、仕入れ先の業者さんから社会問題にかかわる困りごとを聴く機会があります。築地市場の移転問題のときも魚屋さんからいろいろな話を聞いて、党に届けたりしましたね。こういうところは共産党ならではの強みだと思います」

「『共産党はいつもステーキ食べてる』は誤解です!」

普段のメニューは肉か魚の2つのみだが、年に1回、7月15日の党創立記念日は品数を増やしてお祝いのお膳を振る舞っている。また、月に1回ほど、ステーキが出ることも……! こうしたスペシャルメニューの日は、自然と客足も伸びるらしい。そして、髙塚さんにはどうしても伝えたかったことがあるという。

ステーキやお膳ばかりメディアで取り上げられて、『共産党の本部職員はいつもこんなもの食べてるのか』みたいにネットで書かれるんですが、それは誤解で、普段はあんな豪華ではないんです。月全体でバランスとって収まるようにしてるわけで、特に豪勢なメニューの前後はとても質素なんです。ステーキだって100gないですからね。上から撮るからでっかく見えるだけであって、横から撮るとこんな薄いですから(笑)」

「こだわりポイントはなんですか?」

「夜は野菜の小鉢を一品増やしているところですね。夜遅くまで働いている人のために、栄養バランスには気を付けています。皆さんが仕事の合間に楽しい時間を過ごしてもらえるように、そして、元気になるように日々心がけていますね」

日本共産党食堂の皆さん、ありがとうございました!

「政治POPS.」はまだまだ続きます! お楽しみに~!


今回訪れたのは……

日本共産党本部食堂

東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 日本共産党本部ビル4階
営業日:原則無休(月1休)
営業時間:昼 12:00~13:40、夜 17:20~19:00
党専用のキャッシュレス決済を導入 / 党本部見学会の際に事前申し込みがあれば食堂も利用できる

Text / Photo:Masahiro Nakamura

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Masahiro Nakamura

ライター

2002年生まれ。小学校低学年の頃、校門横にあった選挙掲示板のポスターをきっかけに政治に興味を持つ。小学校5年生で友達と架空政党「政治改革党」を結党するも程なくして消滅。中2のとき、突然思い立って生徒会長選挙に立候補、思いがけず当選。高校3年次に校則問題をテーマにしたドキュメンタリー映画『北園現代史』を制作し、大学入学後から本格的に取材・発信活動を始める。趣味は一人旅。編著『わたしたちの世界を変える方法 アクティビズム入門』。

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