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先人たちの服の愛し方に学ぶ。伝統技術で服を循環させて業界の課題に切り込むファッション学生【木口龍一郎・19歳】

先人たちの服の愛し方に学ぶ。伝統技術で服を循環させて業界の課題に切り込むファッション学生【木口龍一郎・19歳】

「気になる10代名鑑」の927人目は、木口龍一郎さん(19)。服をリメイクしてファッションショーやお祭りで活用し、循環の大切さについて広める活動をしています。使い捨てではなく、人とつながる服作りをめざし、デザインやワークショップを通じて新たな価値観を広めている木口さんに、活動をはじめたきっかけなどを聞いてみました。

木口龍一郎を知る5つの質問

Q1. いま、力を入れていることは?

着られなくなった服や誰かが手放した服に新たなデザインや役目を与えて、服を循環させることに力を入れています。

日本の昔のひとたちは、服を大切に継ぎはぎしながら着続け、その傷や思い出さえも愛していました。ファッション産業は現在、世界で2番目に廃棄汚染が多い産業だと言われていますが、昔のような服の愛し方がもういちど流行れば、解決に近づくんじゃないかと考えているんです。

そんな日本の文化や伝統技術を自分なりに解釈したデザインを古着に施して、ファッションショーやお祭りの衣装として活用したり、販売したりしています。

例えば、最近では下北沢中で集めていらなくなった服を『SHIMOKITA COLLEGE』で開催された祭りの装飾に活用しました。その後、それらをリメイクして別の祭りの衣装として再利用し、布を循環させる価値を発信しました」

 

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Q2. 活動を始めたきっかけは?

ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』で、不要になった服が大量にアフリカなどへ送られ、最終的には現地で捨てられている映像を見たことがきっかけです。日本では服を簡単に捨てることが当たり前になっているけれど、その行為が遠い場所で環境汚染や生活の危機につながっていることを知り、強い衝撃を受けました。

ちょうどそのころ、通っていた隠岐島の高校で、島の人たちが服の整理に困っていると聞きました。そこで、島中からいらなくなった服を回収して、リメイクしたものを販売してみたんです。誰かにとって不要になった服が、別の誰かにとって必要なものになる。その経験を通じて、服の循環はもっと広い社会でも実現できるはずだと考えるようになりました。

さらに、授業の中で『自分の夢を探求する』という総合型学習の時間があり、その中で改めて服の問題について深く考えるようになりました。小さな島での取り組みから、より大きな社会へ、服を循環させる仕組みを自分の手で広げていきたいという想いがいまの活動につながっています」

Q3.活動をする中で、印象的だった出会いは?

「昨年の夏、日本の伝統技術を実際に見てみたいと思って、遠州織物を代々受け継いできた福田織物さんの工場を見学したんです。圧倒的な技術力とこだわり、奥深い歴史に触れ、改めて日本の織物文化の魅力を感じました。でもそれ以上に衝撃を受けたのは、福田社長の人柄でした。

僕の質問ひとつひとつに真摯に向き合い、ときにはユーモアを交えながらも、真剣な眼差しで想いを語ってくださる姿に感動しました。こういう人だからこそ、伝統を受け継ぎ、新たな歴史を積み重ねていけるのだと実感しました。

その後、福田織物さんのコーデュロイを使ったファッションショーを開催して、福田社長にも登壇してもらったんです。この出会いを通じて、伝統を未来につなぐことの大切さを改めて感じています」

 

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Q4. 活動をする中で、壁に感じたことは?

辛かったことはあまりありませんが、想いに賛同してくれる方はいても、それが購入という形にはなかなかつながらないことに壁を感じています。まだ18歳で、自分の知識や活動の幅も発展途上だからこそ、もっと突き詰めて形にしていこうと努力しています。

また、デザイン性にもまだ課題があると感じているんですけど、いまの若い世代には、服の見た目だけでなく、その背景やストーリーにも目を向けてもらいたくて。デザインだけじゃない価値に気づいてもらえるようなワークショップも開催しています。これからも交友関係を広げながら、面白い人たちといっしょに新しいことに挑戦していきたいです」

Q5. 将来の展望は?

服を循環させることで生まれる感動を、もっと多くの人に伝えたいと考えています。服は衣食住の一部であり、わたしたちにとって欠かせない存在です。でも、本当の価値はただ着ることだけじゃなくて、修理したり、デザインを施したりしながら循環させて、歴史を積み重ねていくことにあると思っています。

今日着ているこの服も、下北カレッジで配布した服もそうです。誰かが手放した服を他の誰かが手にして、みんなで共有しながら着ることで、一体感が生まれた瞬間がありました。その服を通じて感じたつながりや思い出も、ファッションの持つ力のひとつだと実感しています。

すぐに使い捨てるのではなく、手に取る瞬間から、その先の時間まで、思い出を重ねられるような服が広がってほしい。そのために、服作りだけでなく、日常の中でもこの感動を伝えられるような活動を続けていきたいです」

木口龍一郎のプロフィール

年齢:18歳
出身地:大阪府高槻市
所属:国際ファッション専門職大学、SHIMOKITA COLLEGE
趣味:魚を食べる
特技:魚を捌く
大切にしている言葉:成るように成る

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Photo:Nanako Araie
Text:Honori Kukimoto

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ライター

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