Teen's Snapshots

20歳になるの、ちょっとこわいと思っている人に。Steenzブックレビュー 【本と私と。】

20歳になるの、ちょっとこわいと思っている人に。Steenzブックレビュー 【本と私と。】

こんにちは、小春です。「書評アイドル」として執筆活動しながら、モデルなど幅広く活動している20歳です。

「感情と風景が交差するところ」をコンセプトに、新しい本との出会いをみなさんに届ける書評フォトエッセイ連載企画 “Steenzブックレビュー『本と私と。』” 第2弾の今回は「20歳になるの、ちょっとこわいと思っている人」におすすめの1冊『ひと』です。

今回も、私と同じく以前10代名鑑に出演されていた写真家の村山莉里子さんに同じテーマで撮影をいただいています!

20歳になって、よかったことってなんだろう?

私は20歳になりたくなかった。大人になりたくなかったし、10代の自分が好きだったから変わってしまうことが怖かった。でも年は取りたくなくても取ってしまう。もうすぐ一年が経とうとしているんだけど、20歳、よかったことってなんだろう?

今回取り上げる『ひと』の主人公の柏木聖輔は、20歳で両親を亡くして、大学も中退。持っているお金も少ないのに、買おうとした50円のコロッケを見知らぬ人に譲ってしまうような優しい青年だ。彼は、その総菜屋で貼られていた求人ポスターに縁を感じ、新しくそこで働くことになる。その総菜屋の人たちをはじめ、厄介な親戚、適当に生きる大学のサークル仲間、偶然店に訪れた地元の友人……多くの人と関わり合いながら生きていく。

ひとりじゃないって自分に対して思えなかったけど……

聖輔の20歳は親も亡くして完全に独りでスタートしたけれど、人と出会って支えられていく。そんな聖輔の姿を見て私も過去を振り返る勇気をもらえた。私は一人っ子だし、両親が離婚したときも、保健室登校していたときも、ずっと自分はひとりだと思って生きてきた。けど、確かに、友だちも先生もご近所さんもいつも周りには誰かがいた。良い思い出ばかりじゃないから振り返ることは怖かったけど、そこには20年間分出会ってきた人たちがいて、今も昔も、私はひとりじゃなかったんだなってやっと気づけた。そして、そんなすべての出会いにきっと何かの理由があったんだなって感謝できるようになったのは、本当に大きな収穫だったかも。

それに、20歳になって、少しは責任が伴うけど、行動範囲が広くなって好きなことを好きに出来るようになったり、友だちや親と飲みに行ってちょっと夜更かししたり、1週間頑張ったし2000円のランチを食べてもいっか! と思えるようになったり。確かに変わった景色もあるけど、変わって嫌だった景色は意外にもひとつもないんだよね。

手放さない、諦めない選択をすること

聖輔は親戚にせがまれれば大金を渡し、好きだったはずのベースもあっけなく譲ってしまい、その優しさゆえに様々なものを手放してきてしまった。だけど、21歳になってこれからも一緒にいたい人や好きなこと、そして自分の将来は手放さない選択をして、先を意識しながらも今を一つ一つ大切に生きていこうと決める。

私ももうすぐ21歳。大切なことを諦めないのはすごく勇気がいるし、難しい。聖輔のように出会う人も今もこの先も一つ一つ大切にしながら生きていきたいな。

今回紹介した本

ひと 小野寺史宜

『ひと』小野寺 史宜  著/祥伝社

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小春

小春(こはる) 2004年生まれ。大学生、書評アイドル。12歳からアイドル活動を始め、2017年〜『週刊読書人』でweb連載。「カンコー委員会」一期生、三期生(商品開発)の他、『NHK高校講座現代文』で生徒役を務めた。「ミスiD2021」では本と女優賞を受賞。大好きな本を中心に書評やモデル、俳優など幅広く活動中。

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