
「気になる10代名鑑」の931人目は、冨山ゆりさん(18)。街歩きを通して、人々の暮らしや街の奥に隠れた物語を感じ取り、魅力を探求し続けています。歩くことで生まれる気づきや問いを大切にしていきたいと話す彼女に、活動の原点や未来のビジョンについて聞いてみました。
冨山ゆりを知る5つの質問
Q1. いま、力を入れていることは?
「歩いて街を観察することです。歩くことでその場のにおいや音、時間をかけて生み出された街の魅力を、五感で感じ取ることができるんです。
街の魅力って、すごく奥深くて。人々の暮らしや感情を包み込み、時を超えて存在する空間、その奥にある人の生きた痕跡こそが、街の魅力の本質だと感じています。でも、歩くだけでは気づけないこともあるんです。車やバス、電車などを使うと、街を俯瞰して、全体の流れを見ることもできます。わたしにとっては、どちらの視点も欠かせないもの。お互いを補い合うことで、新たな価値や気づきが生まれていきます。
4月からは、美大に進学して学ぶ予定です。最近では新たな挑戦として、芸能事務所にも所属しました。これからは、歩くことで生まれた考えをどう表現するかも模索していきたいです」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「小さいころから歩くことが好きで、落ちている木の実を見つけて喜んだり、季節ごとに変わる景色を楽しんだりと、街を歩くだけで興味が尽きない子どもでした。
高校に入学し、将来について考えたとき、自分が何を好きで、何を大切に思うのかを見つめ直す時間がありました。その中で、改めて『わたしは街を歩くのが大好きだ』と気づいたんです。その理由を考え始めたことが、いまの活動のきっかけになりました」
Q3. 自身のクリエイティブに影響を与えたものは?
「“salad days: a period of youthful inexperience.”という言葉です。「若く経験の浅い時期」を意味しますが、わたしにとってこの言葉は単なる未熟さを指すものではありません。まだ知らないことがたくさんあるからこそ、好奇心や探究心に満ちあふれ、無限の可能性を秘めた時間のことだと考えています。
新しい表現に挑戦するとき、完璧を求めすぎて動けなくなることもあるけれど、“salad days” の精神を大切にして、『知らないからこそできること』『未熟だからこそ生まれるアイデア』に目を向けるようにしています。たとえ時間が経っても、この感覚を忘れずに、まだ見ぬ世界に心を開き続けていきたいと思っています」
Q4. 活動をする中で、印象的だった出会いは?
「ビルとビルの隙間やドアノブのような、街の中のささやかな存在たちです。
ガスの排気口があったり、キャットフードの容器が置いてあったりと、それぞれが小さなプライベート空間を持っているように感じます。誰かの大切なものがそっと置かれていたり、扉の向こうにどんな景色が広がっているのか想像すると、ワクワクして胸がいっぱいになります」
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Q5. 将来の展望は?
「自分自身の中からあふれる“問い”に向き合い続けたいです。
人に個性があるように、街にも個性があります。でも、最近はどこにでもある同じような店ばかりになってしまって、街の個性が失われつつあると感じていて。売れるセオリーとか、儲かる方法みたいな情報があふれているせいかもしれません。
個性を失わないためには、ブームやSNS、自分向けにカスタマイズされたネット上の情報ばかりに惑わされず、自分自身で問いを立てていく必要があると思っています。
問いとは、自分自身を深く見つめ、価値観や経験、直感から生まれてくるものです。無駄に思える時間も、自分なりに遠回りすることでかけがえのない要素となり、より豊かな未来のために、新たな価値を生み出す源になると信じています」
冨山ゆりのプロフィール
年齢:18歳
出身地:千葉県
所属:Coccinelle Entertainment
趣味:歩くこと、写真、動画、音楽鑑賞、映画鑑賞、歌を歌うこと
特技:書道
大切にしている言葉:「ああ人生に涙あり」の歌詞、salad days
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Photo:Nanako Araie
Text:Honori Kukimoto