
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、ワールド・モニュメント財団の「危機遺産リスト」についてご紹介します。
月が「危機遺産リスト」に追加へ
建造物を中心とした世界中の文化遺産の保存活動に取り組む、ワールド・モニュメント財団(以下:WFM)。同財団は2025年1月15日、「危機遺産リスト」に25の遺産を新たに追加したと発表しました。その中には、なんと「月」という言葉も。リストに地球外の土地が登録されたのは、今回が初めてです。
月を危機遺産リストに追加したWFMは、1965年にニューヨークで設立された民間の非営利組織です。国や文化などの枠組みにとらわれず、文化遺産の保護・保全のために、経済的・技術的支援や教育・啓発活動をおこなっています。設立以降、112ヵ国の700以上の場所で多様な文化遺産を保護してきました。
そもそも危機遺産リストって?
WFMの「危機遺産リスト」とは、気候変動や観光、紛争、自然災害などを理由に存続が危ぶまれている歴史的遺産を選び、一覧にまとめたものです。遺産保護の必要性を世の中に訴え、保護活動を活性化させることを目的に作られています。別名「ワールド・モニュメント・ウォッチ」とも呼ばれており、リストは2年ごとに更新。世界中の団体や個人の推薦により候補が挙げられ、そのうちの25個が選ばれます。
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過去には、ポルトガル・エヴォラの「アグア・ダ・プラタ水道」(2016年)や、アメリカ合衆国・ユタ州にある「ベアーズ イヤーズ国定公園」(2020年)などが追加されており、日本では香川県高松市の国内初となるモダニズム建築「旧香川体育館(船の体育館)」(2018年)が選ばれました。ちなみに、「危機遺産リスト」はユネスコにも存在しますが、WFMのリストとは異なるものです。
日本の能登半島もリストに登録
2025年度版には、29カ国の遺産と月が登録されました。内容としては、フランスの「ソルボンヌ礼拝堂」や、中国の麦積山と雲岡の仏教石窟、パレスチナの「ガザの歴史的な都市構造」などです。また、今回のリストには日本の能登半島も登録されています。その背景としてWMFは、「震災被害を受けた地域の歴史的建造物を修復することが、地域の復興と回復力を促進する」と説明しています。
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そして、何といっても今回特に注目されているのが「月」の登録です。1969年7月20日に、アポロ11号が月面着陸に成功して以来、月には90以上の着陸地点や衝突地点が存在します。その中には、着陸船やモジュール(部品)、科学機器などの遺物が約106点保存されている着陸地点もあるのです。しかし近年、月面で人類が活動することへの関心が再び高まっています。また、商業目的の宇宙産業も急成長していることから、着陸地点などの「史跡」や遺物の保存に新たなリスクが発生していると危惧されています。そうした理由から、今回のリスト入りに至りました。
“何が”だけではなく“なぜ”にも注目してみて
このように、危機遺産リストに追加された遺産にはさまざまな背景があります。「なぜ、これがリストに?」と思うものもありますので、気になる方は調べてみるとおもしろいかもしれません。“何が登録されているのか”を知ることも大切ですが、“なぜ登録されているのか”を知ることも重要です。背景を知ることにより、リスト入りしている遺産たちへの見方も変わってくるでしょう。
Reference:
World Monuments Fund Announces 2025 Watch Including the Moon, Swahili Coast, Gaza, Ukraine|World Monuments Fund
World Monuments Fund
World Monuments Watch|World Monuments Fund
Noto Peninsula Heritage Sites, Japan|World Monuments Fund
The Moon|World Monuments Fund
Text:Yuki Tsuruda