
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、南アフリカの金鉱で起きた悲劇、そして違法採掘が蔓延している背景についてお伝えします。
搾取されやすい金鉱ビジネス
南アフリカの金鉱で違法採掘者が地下に閉じ込められ、2025年1月時点で、少なくとも109人の男性が死亡しました。現地では救出活動が続いていますが、地下には500人以上が閉じ込められている可能性があると報じられています。
鉱物資源が豊かな南アフリカでは、1852年にイギリス人が金を発見して以来、金鉱業が国の歴史や世界情勢に深く関わっています。特にアパルトヘイト時代には、一部の白人が金鉱の利益を独占しやすい仕組みが作られていました。2000年まで南アフリカは世界最大の金生産国でしたが、採算が合わなくなった鉱山が閉鎖され始め、現在、国内には6,000以上の廃鉱山があると言われています。
しかし、南アフリカでは長年にわたって、これらの鉱山を巡る違法採掘が深刻な問題となっています。
閉鎖された鉱山は元鉱山労働者をリーダーとするギャングによって管理され、武装した採掘者も多く見られます。違法採掘者は「ザマザマ」と呼ばれ、地下で「金の街」を築き上げているのだそう。一部の鉱山では、ギャングによってセックスワーカーが連れ込まれるなど、彼らによる性犯罪が横行している状態です。違法に採掘された金は闇市場で取引され、国際犯罪組織を通じて中東のドバイなどに送られていると言います。
南アフリカ議会によると、この違法採掘により、同国は毎年10億ドル以上の損失を被っているとされています。
警察の「兵糧攻め」作戦により死者続出
ザマザマの多くが、一回の採掘にあたって3ヶ月近くを地下で過ごすため、食料や水などは外部からの支援に依存しています。そこで警察は、数ヶ月にわたって食料と水の供給を遮断し、違法採掘者が投降するのを待ちました。1500人以上は自力で脱出し、逮捕されていますが、一方で多くの人が衰弱または飢餓、脱水症状に陥っているそうです。
警察は南アフリカ労働組合連盟(SAFTU)や人権団体などから多くの批判を受け、11月には同国の裁判所が警察に対し、対立の停止と、鉱山労働者への食料の提供を命じました。
現地の報道によると、救出活動が始まってから106人の生存者が助け出されましたが、少なくとも109人が死亡し、さらに500人以上がまだ閉じ込められていると推定されています。
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生存者の内訳は大半がモザンビーク人、レソト人、ジンバブエ人で、南アフリカ人はほんのわずかであったそうです。実は、ザマザマの多くは一攫千金を狙って南アフリカに渡った不法移民なのです。警察とギャングの対立は長年続いていますが、これらの違法ビジネスは組織化しており、巨大な国際犯罪組織が関与しているという背景があります。
現在も救出活動は続いていますが、鉱山の周辺では、地下に閉じこもった家族が生存して帰ってくるのをいまも大勢の人が待っている状態です。
同国には最大10万人もの鉱山労働者がいると言われており、今後、南アフリカ政府と警察は人権を保護しながら、違法採掘ビジネスを取り締まることが必要となってきています。
References:
CNN「Rescuers try to free men trapped in South African gold mine with scores reported dead」
BBC「Inside South Africa’s ‘ruthless’ gang-controlled gold mines」
Enact「Uncovered」
AP「Why did 87 miners die trapped underground in South Africa as police tried to force their surrender?」
SAN「Rescue efforts continue for more than 500 miners trapped in South Africa」
BBC「Trapped underground with decaying bodies, miners faced a dark reality」
CNN「South Africa criticized for ‘horrific’ mining crackdown after 78 bodies pulled from underground」
Text:Hao Kanayama