世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、日本企業も取り組みを進めている鶏の飼育方法「ケージフリー」についてご紹介します。
欧米から世界に広がる「アニマルウェルフェア」
動物にとって、なるべくストレスが少ない状態での飼育をめざす「アニマルウェルフェア」。日本語では「動物福祉」とも言われます。動物を愛する、保護するといった意味の「動物愛護」が人間からの視点であるのに対し、アニマルウェルフェアは、飼育や展示される動物が心身ともに健康である状態のことを指します。
アニマルウェルフェアはイギリス発祥の概念と言われており、「飢え、渇き及び栄養不良からの自由」、「恐怖及び苦悩からの自由」、「不快からの自由」、「苦痛、傷害及び疾病からの自由」、「正常な行動様式を発現する自由」という5つを基本原則としています。
今回フォーカスする「ケージフリー」は、卵を採るために飼育される「採卵鶏」を、一般的な飼育方法であるケージ飼いではなく、自然に近い方法で飼育するというものです。屋内外問わず、動き回れるスペースを確保したり、止まり木や砂浴び場を設置したりして、鶏が本来もつ習性に合わせて過ごせる環境をめざします。欧米では特に、こうしたアニマルウェルフェアの意識が広まっており、たとえばアメリカのカリフォルニア州では、2022年1月からケージ飼い卵の販売が消費者投票により禁止となりました。EU(欧州連合)諸国でも、2012年には、「バタリーケージ」という、狭い金網ケージでの飼育が禁止され、そのほかのケージ飼育も規制が進められています。
国内では2024年10月、食品メーカーのキユーピーグループが、2030年までに「キユーピー マヨネーズ」に使用される卵の20%にあたる量を、国内の「ケージフリー卵」で調達できるようにすると発表しました。
「ケージフリー卵」のメリットとデメリット
ケージフリー卵のメリット・デメリットはどんなものがあるのでしょうか。
まず、メリットとしては、動物の快適性が確保できることが挙げられるでしょう。ケージフリーの環境では運動量が確保され、ストレスも軽減されるのではないかと言われています。
一方で、行動の自由度の幅が広がるがゆえに、感染症拡大のリスクや、鶏の本能によるケンカの発生、十分な空間の確保や管理が複雑となるなどの問題もあります。
特に日本の温かく湿度が高い気候風土では、卵に細菌が発生しやすくなるため、欧米と比べてより厳しいリスク管理が求められます。「卵かけご飯」など、生卵を食する日本独自の文化を支えているのも、行き届いた衛生管理のたまもの。日本でアニマルウェルフェアに本格的に取り組むためには、生産コストや技術面などの課題が残るとも言われています。
毎日の卵から食のサステナビリティを考えてみよう
「より安く、より安定した品質の畜産物を消費者に提供する」今のフードシステムは、わたしたちの毎日の食卓を支える一方で、地球環境や動物に与える影響についての配慮も必要です。ケージフリー卵の事例から、多様な食の選択肢や持続可能な食料調達など、食の未来を見つめるきっかけにしてみませんか。
References:農林水産省「アニマルウェルフェアについて」
Text:kagari