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この平和な世の中は当たり前なんかじゃない、日常の尊さを噛みしめてまっすぐに歌う、高松力都×はなつばめ「夢をみてた」

この平和な世の中は当たり前なんかじゃない、日常の尊さを噛みしめてまっすぐに歌う、高松力都×はなつばめ「夢をみてた」

“00年代生まれによる、00年代のための音楽プロジェクト”『from00』。今回は、このプロジェクトから11月27日に楽曲をリリースした、シンガーの高松力都さん、コンポーザーのはなつばめさんがペアで登場してくれました。プロジェクトの思い出や新曲『夢をみてた』に込めた想いをくわしく聴いてみました。

お互いのこだわりをリスペクトしあう温かい現場、はじめての共同制作は楽しみだった

コンポーザーはなつばめ

―さっそくですが、普段の音楽活動について教えてください。

はなつばめ:ボカロPをしている高校2年生です。ボカロの投稿を始めたのは中3で、この頃はちょうどコロナ禍。なにか新しいことをしてみたいなと思って、自分で曲作りを始めたんです。
自分の声があんまり好きではなく、ボカロに歌ってもらうっていうのが自分の作曲スタイルに合うと思い、ボカロを使い始めたんです。

高松力都:4ピースバンド「Mitei」のボーカルとして活動しています。音楽を始めたのは、高校を卒業して音楽の専門学校に通ってからです。それまでは歌ったり作ったりすることはしてきませんでした。

でも、日常のなかであふれるくらい聴いてきた音楽のことが大好きで。自分でもわからないけど、気づいたら音楽の道を歩んでいましたね。

専門学校では、おもに音楽プロデュースや制作を専攻していたのですが、同時に、友達にボーカル活動にも誘われたのがきっかけで、歌を始めました。

―では、今回のプロジェクト「from00」に参加を決めたときのお気持ちを聞かせてください。

はなつばめ:ボカロPとしての活動は約1年で、未熟な自分がお受けしていいものか、戸惑いはありました。でも、この企画を経て自分が成長できそうっていう気持ちと、自分の夢にも近づけるなっていう予感があって、やるしかないと思いました。

高校で出会った同級生で、歌声がとてもきれいなボーカリストがいて、いつかユニットを組んで音楽を一緒にやりたいという夢があります。誰かとつくる、という経験を重ねることは、もともとやりたいことのひとつでもあったんです。

高松力都:今までは、専門学校でもバンドでも、自分の作った曲を自分が歌う経験が中心だったので、ほかの誰かが作った曲で一つの作品にするっていうのは、今までにない経験。ぼくは、どちらかというとそれがずっと楽しみで、ワクワクしていました。

―ペアが決まったときは、お互いにどんな思いを持ちましたか?

はなつばめ:曲に乗せる「声」はこだわりたいポイントで。今まで、女性ボーカルの声に心を動かされることが多かったので、今回は高松さんにお願いすると知って、どんな男性ボーカルなんだろう? と興味を持ちました。聴いてみると、高松さんはトーンが柔らかくて高音もきれい。すてきなボーカリストだし、この声を生かしたいなって思いました。

高松力都:はなつばめくんのつくる音楽は、文学的で、世界観を大事にしている印象で。聞き手に景色を想像させるような曲づくりができるのは、作曲者としてもうらやましいです。

ボカロ曲は、ふだん歌っているものとは違うので、特に音程で苦戦しそうだと思いましたが、「とにかく早く一緒に音楽を作りたい」って思っていました。

はなつばめ:そういえば、顔合わせのときに自己紹介をしたら、ヨルシカさんなど、好みのアーティストが大体一緒だったんです! 自分の中で、不安とか緊張が少し減って、ワクワクした気持ちが湧き上がってきたことも覚えていますね。

―制作の現場はどんな雰囲気でしたか? 印象的な思い出も含めて教えてください。

高松力都:やっぱりぼくはレコーディングの現場が印象に残っています。自分たちの曲に愛を持って、「ここはこうしたい」と青葉紘季さん(from00プロデューサー)にも意見を伝えながら、尊重していただいた現場がありがたかったです。

はなつばめ:人間のボーカルを担当することに関しては、ほとんど素人だったし、高松くんのボーカル力もすばらしいので、ここは高松くんを全面的に信頼して自由にやってもらいました。

高松力都:ありがとうございます。メインの作詞作曲をはなつばめさんにお願いして、デモが完成できたら、ぼくも歌詞を考えて調整していきました。ギターはぼくが担当しました。丁寧に想いを詰め合わせてひとつにしていくイメージでしたね。

はなつばめ:デモは計4曲ぐらい作って、そのあと、担当A&Rのたなべさんも含めてみんなでやりとりしたのも楽しかったです。LINEのグループでデモを送って「どう思いますか?」って投げてみると「この部分のピアノのメロディが好き!」っていつも細かく聴いてリアクションをしてくださって。

普段、リスナーの方にコメントを寄せてもらうことはありますが、未完成のものにいろいろ意見を言ってもらうことや、直で反応をもらうことで、聞こえ方をより意識して届ける勉強になりました。

高松力都:うんうん。PV撮影のときに弾き語りをしたのですが、そのときも「高松くん、本当に歌上手い!」って褒めてくださって。嬉しかったし制作の支えにもなりました。

当たり前を問うて平和に気づくこと、これが日常の風景を守りつづけるためにできること

シンガー 高松力都

―続いて、楽曲について教えてください。今回制作した『夢をみてた』にはどんな想いを込めましたか?

はなつばめ:今過ごせている平和を噛み締めながら、この平和って、永遠じゃなくていつかは覚めてしまう不安定な夢なのか? 幸せな夢が覚めたら全部変わってしまうのか? と考え直して、当たり前の景色を見渡してみてほしいという思いを込めて制作しました。

高松力都:この曲は「おはよう、目が覚めたら何気ない幸せな夢をみてた」という歌詞で曲が終わるんです。戦争について何回も思いを巡らせるけど、現状、平和な社会にこうやって戻れて、逸脱はしない。

この立場から描ける反戦歌は、ある意味00世代のぼくたちの感覚を映した、僕たちにしか歌えない反戦歌だと思っていて。その感覚をまっすぐ伝えることも意識しました。

―反戦歌というテーマについて、どう解釈して曲に落とし込んでいきましたか?

はなつばめ:戦争を考えることは確かに難しくて、自分が戦争を感じた瞬間を思い起こしてみました。

そこで出てきたのが、旅行先で見た資料館の景色で。今まで広島や韓国を訪れてきたのですが、そこで記録を見るうちに、幸せに暮らしてきた人が離れ離れになること、2度と会えなくなることってこんなに悲しいことなんだと気づいて。

「いつか君に会えるように、別れ言葉が溢れないように」という歌詞にもあるように、戦争による別れの切なさや残酷さを伝えたいと思って作りました。

高松力都:一方で、資料館に行ったとしても、こうした人の想いを“すべて”想像するのは平和に暮らす僕たちにはできないからこそ、甘く考えてはいけないし、慎重に言葉を届けて歌っていきたいとも思いました。

あまり普段は意識することはないけれど、ぼくたちが平和に過ごせている今は、過去の歴史の上にあるものだと意識してほしい。「平和ボケは幸せなことか」と問いかける歌詞にこの思いを込めています。

はなつばめ:こういう価値観は、ぼくだけじゃ絶対にでてこなかったもので、だからこそ一緒に話をしながら共同でつくっていくことの面白さを感じられて良い経験になりました。

―最後に、注目ポイントを教えてください!

はなつばめ:高松さんも気づいてくれたように、景色や物語が見えてくる曲にすることは、ぼくが今までもずっと大事にしていることなんです。曲の中に、音楽ではない、ページをめくる音や目覚まし時計の音などの環境音を入れて、情景をイメージできるようにしています。ぜひ世界観に入りこんで、聴いてもらいたいですね。

高松力都:全体的には、はなつばめさんの、きれいな曲調にマッチするように優しく歌い上げているのですが、「空腹だった日々の味は」から始まるBメロの部分は、正直な自分の気持ちをぶつけるように表現したくて。語尾の処理やブレスの位置を研究して、力を込めて荒々しく歌った部分なので、注目してほしいです。そして、ここの部分のメッセージが皆さんに届いたら嬉しいです。

―ありがとうございました!

11/27リリース。「夢をみてた」

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@from00_ 大学生4人が、同年代の音楽家とともに 自分たちの反戦歌を作るプロジェクト、from00始動。 争いの終幕を信じて、僕ら00年代が届ける反戦歌。 この歌を、一緒に歌ってくれませんか。 #大学生 #反戦 #nowar #from00 #04 #03 #05 #fyp ♬ suara asli – Evxyn – ム O X 口

配信情報

10月30日リリース from00,悠稀。,三栖 / 家路
11月6日リリース from00,おと(CARAMEL CANDiD),Ruliea / 我々贅沢品
11月13日リリース from00,Siglinen,FILEIN / k0t0nakare
11月20日リリース from00,万優子,Terutomo Nakashima / Sphenoid’s Noise
11月27日リリース from00,高松力都,はなつばめ / 夢をみてた
12月4日リリース from00,中島りん,よしだ かなう / 証明
12月11日リリース from00 / アルバム「Blue Truth」

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Chihiro Bandome

ライター

2003年生まれ、埼玉県出身。上智大学文学部新聞学科在学。自分の目で現場を見て、自分の言葉で人と話して、世界を知っていきたい。大学では、主にニュース記事の執筆を学んでいる。2023年より、ライターとして「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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