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年末年始のお刺身や練り物も、環境に配慮したものを。「海のエコラベル」って知ってる?【Steenz Breaking News】

年末年始のお刺身や練り物も、環境に配慮したものを。「海のエコラベル」って知ってる?【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、「海のエコラベル」をご紹介します。

いっぱいあるエコなラベル。水産物にも付いているって知ってた?

環境に配慮した商品であることを示す「環境ラベル」には、さまざまなものがあります。身近なペットボトルやノートを見てみると、エコマークに再生紙使用マーク、リサイクルマークなど、たくさんついていますよね。

実は水産物にも「海のエコラベル」がついているものがあるのです。年末年始の食卓にごちそうとして並ぶ、魚介類や練り物にもついているかもしれません。いったいどんなラベルなのか、見ていきましょう。

国際的な環境ラベル「海のエコラベル」とは?

MSC「海のエコラベル」は国際的なNPOである「MSC(Marine Stewardship Council/海洋管理協議会)」が認証している制度です。

地球の表面積のおよそ7割を占める、広大な海。海での漁獲は、人類の発生時からおこなわれてきたと言われ、古い歴史をもっています。しかしながら、大型の漁船が誕生したり、人口が増えて需要が高まったりしたことにより、種の存続をおびやかすような獲り方をする漁業が誕生してしまいました。そうした問題に立ち向かうべく生まれたのが、MSCによる漁業の認証制度です。そして、認証を受け、持続可能な方法で獲られた水産物には、消費者への目印として「海のエコラベル」が付けられるようになりました。

1997年の設立以来、大規模な漁業をおこなう世界中の事業者が認証を受け、いまでは世界66カ国で、20,000品目以上の水産品にMSC「海のエコラベル」が付いているのだそうです。

魚介類には、たんぱく質やビタミン、必須ミネラルなど、わたしたちの体に必要な栄養が多く含まれている上に、漁業は、沿岸部に暮らす人々にとって大切な産業です。海洋環境の持続可能な状態をめざすことは、人類にとって、とても大切なことなのです。

「第三者機関による審査」って?

MSCによる認証には、ふたつの種類があります。ひとつ目は、漁法に与えられる「MSC漁業認証」です。資源の持続可能性や生態系への影響が少なく、管理体制が整った漁法かどうか、第三者機関が1年以上かけて審査し、認証します。

第三者の審査機関は研究者や漁業管理者、水産加工業者、政府機関の職員、地域の一員、自然保護活動家など幅広いステークホルダーから構成されています。認証の有効期間は5年間であり、毎年の監査も必要と、なかなか厳しい審査になっています。写真は、2013年から認証を維持し続けている、北海道漁業協同組合連合会のホタテガイ垂下式漁・桁網漁業。2013年の取得以来、10年間認証を維持しているのだそうです。

もうひとつの認証は「MSC CoC認証」です。MSC漁業認証を取得した漁業で獲られた認証水産物と、それ以外の水産物が混ざらないように管理し、店頭まで確実にMSC漁業認証水産物が届くような仕組みをつくっている事業者に与えられるものです。海産物は、箱や袋に入る前の段階で混ざってしまえば、どれがMSCによる漁業で獲られた魚介類か判別がつかなくなってしまいますよね。それを防ぐための仕組みを構築している事業者であることを示しています。

このように、獲るところから、消費者の手元に届くところまで配慮された水産物が、MSC漁業認証水産物、つまりMSC「海のエコラベル」つきの商品として販売されます。

MSC「海のエコラベル」の付いた水産品はどこで買えるの?

MSCの日本事務所は2007年に設立されました。それ以降、日本国内でもMSC漁業認証を取得した漁業も、MSC認証水産物を扱うMSC CoC認証取得事業者も増え続けています。

MSC漁業認証を取得した漁業は、2024年現在では20件。先述の北海道漁業協同組合連合会のホタテガイ垂下式漁・桁網漁業や、明豊漁業株式会社のカツオ・ビンナガマグロ一本釣り漁業などが認証されています。

MSC CoC認証取得事業者の数も、2024年現在では377件、2023年度に販売されたMSC「海のエコラベル」付き消費者向け製品の重量は、約2万トンにものぼります。イオングループや、生協・コープ、セブン&アイグループ、マクドナルドなどが認証を受けているため、気が付かないうちに購入している身近な商品もあるかもしれません。

持続可能な漁業の拡大を加速させるプログラムも開始

世界中でMSC漁業認証を取得した漁業が増えている一方で、過剰な漁獲も増加しているのが現状。いまだに、世界の水産資源の約38%が、過剰漁獲であるとされています。そうした状況を改善すべく、MSCは「MSC漁業認証取得に向けた改善プログラム」を開始。5年のうちに測定可能な改善の成果を出すことを条件として、漁業に対する支援と、インセンティブを提供しています。

MSC改善プログラムに参加する漁業は、MSC漁業認証の表示はできませんが、改善プログラムに参加している漁業で獲られた水産物であることは、表示できるようになります。さまざまな理由により、MSC漁業認証の取得にまで至っていない事業者に対して、スモールステップを踏むことができるプロセスを提示することにより、持続可能な漁業を促していく取り組みなのです。

MSC「海のエコラベル」をチェックしてみよう!

海に囲まれた日本では、古くからさまざまな形で魚を食べる文化が育まれてきました。年末年始も、家族で集まって、海の幸がたっぷりのご馳走を食べたり、おせちを食べたりと、さまざまな形で水産物を食べる機会が増えることでしょう。そんな日本の伝統的な食卓に、MSC認証商品が増えるということは、日本文化を持続可能なものにしていくということにもつながっていくはずです。1年を無事に終えたことに感謝し、新年を迎えられたことを寿ぐ文化が長く続いていくためにも、こうした認証制度は大切なものです。年末年始の食卓の準備をするときには、ぜひラベルもチェックしてみてくださいね。

References:
MSCジャパン「私たちの海を守るしるし MSC「海のエコラベル」を知っていますか?」
FAO The State of World Fisheries and Aquaculture 2024

TextItsuki Tanaka

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Itsuki Tanaka

ライター

フリーランスのライター。食、農、環境領域 /博物館好き/コーヒー、アイス、チョコも好き。

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