“00年代生まれによる、00年代のための音楽プロジェクト”『from00』。今回は、このプロジェクトから11月13日に楽曲をリリースした、シンガーの万優子さん、コンポーザーのTerutomo Nakashimaさんがペアで登場してくれました。プロジェクトの思い出や新曲『Sphenoid’s Noise』に込めた想いをくわしく聴いてみました。
映画鑑賞からスタートした制作、プロジェクトへの挑戦は自分の糧に
―さっそくですが、普段の音楽活動について教えてください。
万優子:JPOPシンガーとして、リリース活動と歌の投稿を行っています。友達に勧められてTikTokで歌を投稿したことをきっかけに、「高校生歌うま選手権(KBC 高校生のじかん)」に出場してグランプリをいただきました。
もともと音楽は好きで、ジャンルを問わず色々聞いていましたが、高校で軽音部に入部してから、人前で歌を歌うようになりました。もっといろんな人たちと歌いたいと思うようになって、軽音部の外でバンドも組んでいます。
Terutomo Nakashima(以下、Terutomo):YouTubeやSoundCloudにボカロなどを用いた自作の曲を配信したり、ギタリストとしてバンドのサポートを務めたりしているのが、メインの音楽活動です。
家族みんな、音楽が大好きで、物心ついた時から音楽が身近な環境でした。楽器に触れる機会も多くて、中学生のころに、ギターを触り始めてから、作る側にもチャレンジするようになりました。小学生のときにボカロが流行っていてよく聴いていたことをきっかけに、高校3年生のころからは、ボカロでの作曲に取り組み始めました。
―では、今回のプロジェクト「from00」に参加を決めたときのお気持ちを聞かせてください。
万優子:バンド活動を通して、ひとりじゃなくて誰かと音楽をやることに楽しさを感じながらも、仲間内のリラックスした空気のなかで、音楽活動が続いていることに気づいて。はじめましての人と出会って一から音楽を作っていくことで、新しく経験値を増やせたら良いなと思って参加を決めました。
Terutomo:今まで家の中でひとりで作って発信していた音楽が、誰かと奏でるものになることは純粋に面白いし、良い経験になるなと思い、参加しました。プロジェクトを通して、自分の音楽がどこまで通用するか確かめてみたいなとも思ったんです。
それから、ボカロ曲の制作をしている中で、人間の声には感情を乗せて奥行きをしっかり作れて、魅力的なものだなと改めて気づいて。いつか誰かに自分の曲を歌ってほしいと思っていたんです。なので、今回お話をいただいた時は、本当にワクワクしたのを覚えています。
―ペアが決まったときは、お互いにどんな思いを持ちましたか?
万優子:私も、小学生のときにボカロ曲を聴いていたんですけど、当時聴いていたものと、Teruさんの音楽は全然別物だと思った記憶があります。スタイリッシュな音楽に仕上げられるTeruさんってすごいなと思いましたね。
ちょっと不安だったのは、自分の歌唱スキルです。ボカロは設定すればその通りに音が出て、速さも高さも自由につくれるけど、Teruさんの作りたいボカロベースの音楽に自分のスキルが応えられるかはわからなくて。でも最善を尽くそう! って思いました。
Terutomo:そうだったんですね! はじめて万優子さんの音楽を聴いたとき、R&Bやソウル的なアプローチで、力強くて芯のある歌声に本当に度肝を抜かれましたよ。逆に、ペアが自分でいいのか?と恐れ多いぐらいでした。絶対にいいものが作れるし、作ろうと思えたのを覚えています。
万優子:Teruさんは作る曲がダークでカッコイイのに、いつでも優しくて穏やかに接してくれる方で。この人からこんな曲が生まれるのか! とギャップにも驚かされました。
Terutomo:自分でもダークなテイストの曲作りには自信はあって。これまでの「反戦歌」は明るい曲調で平和を願うものが多い印象だったけど、ストレートに暗さと恐ろしさを伝えることで戦争を終わらせたいと考えさせるものがあってもいいのではと思い、自分の得意分野と組み合わせました。
―実際、どのように制作を進めていきましたか?
Terutomo:戦争を経験していない僕たちが、どう戦争を表現するか? は大きな課題で。そのために、戦争の認識やイメージについて、ブレーンストーミングをしながらすりあわせていくという作業をしました。
万優子:Teruさんとは『縞模様のパジャマの少年』など、同じ戦争映画を2、3本観てその感想を語り合ったんです。そこで出たキーワードをヒントにTeruさんに歌詞を作っていただきました。次にデモをつくって、それをもとに私がレコーディングして、という流れです。みわさん(担当A&R)も話し合いの時に意見を出してくれたり、英語の歌詞に苦戦したレコーディングのときに励ましてくれたり……。ユニークな友達でもあり仕事仲間でもあるような頼れる存在でした。
フィクションじゃなくて、今もどこかで戦争が起こっている「現実」に目を向けて
―映画からイメージを膨らませて作った今回の楽曲について教えてください。「Sphenoid’s Noise」はどんな曲になりましたか?
Terutomo:戦争から帰ってきたけど、PTSDによって、戦地での忘れられない出来事が、当たり前のように日常の中で続いている、苦しんでいる若い兵士を主人公にした一曲です。
タイトルは「蝶形骨の雑音」という意味です。蝶形骨は、頭蓋骨の一部で、自律神経を司る器官のひとつなので、PTSDやトラウマを象徴したキーワードとして使いました。自分の中で正気を保てないほどの頭の中の雑音を表したくて、刻まれているスネアの音をあえて曇らせるなどサウンドの工夫もしています。
―プロジェクトを通して、戦争に対する思いは変わりましたか?
万優子:インプットとして戦争映画を見ていた期間は特に、戦争の残酷さを直に感じる日々で、こんなことは起きてはいけないんだと強く思うきっかけになりました。
今は日本で戦争は起こっていないし、私自身これまで戦争について考えることはほぼなかったです。でもいつか起こるかもしれないし、今この世界のどこかで確実に起きていることなんだなと実感して。自分ごとじゃないとは言い切れないんだってことを聴いてくれた人も感じてほしいし、戦争に思いを巡らせる機会にしてほしいなと思います。
Terutomo:ぼくも映画を観ていた期間は、自分の気持ちが引っ張られてしまって、暗い気持ちになっていました。なかなか実感しづらいし、映画を観て学んだのは過去の戦争だけど、戦争はこの世界で今確実に起きているということは、本当にそのとおりで。だからこそ、世界にも眼差しを向けてほしいという意味も込めて、全編英語の歌詞で作詞しました。
―最後に、注目ポイントを教えてください!
万優子:コーラスです。気持ち悪くて普通ではないハモリ、さらにオーケストラとも合わさって不穏さやおどろおどろしさを表現しました。この部分は、レコーディングで試しながら作り上げた部分で、頑張ったのでぜひ聴いてほしいです。
それから、普段は歌詞の読解を重視して、感情的に歌い上げることが多いのですが、今回は、現実へのどうにもならない憤りを表現して、逆に感情を抑えた歌い方も取り入れているので、そこもぜひ注目してほしいです!
Terutomo:1曲にかけられる準備期間が長かったので、その分、たくさん音楽も勉強して、楽曲に取り入れています。ポップス的なメロディ要素には、アイナ・ジ・エンド、宇多田ヒカルなどの楽曲を、歌詞には、Kraftwerk、Radioheadなどの楽曲をリファレンスにしているので、たくさん聴いて、ぜひ工夫を見つけてみてください。
―ありがとうございました!
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大学生4人が、同年代の音楽家とともに
自分たちの反戦歌を作るプロジェクト、from00#2始動。争いの終幕を信じて、僕ら00年代が届ける反戦歌。
この歌を、一緒に歌ってくれませんか。 pic.twitter.com/zQd2ncNApt
— from00 (@_from00) July 27, 2024
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@from00_ 大学生4人が、同年代の音楽家とともに 自分たちの反戦歌を作るプロジェクト、from00始動。 争いの終幕を信じて、僕ら00年代が届ける反戦歌。 この歌を、一緒に歌ってくれませんか。 #大学生 #反戦 #nowar #from00 #04 #03 #05 #fyp ♬ suara asli – Evxyn – ム O X 口
配信情報
10月30日リリース from00,悠稀。,三栖 / 家路
11月6日リリース from00,おと(CARAMEL CANDiD),Ruliea / 我々贅沢品
11月13日リリース from00,Siglinen,FILEIN / k0t0nakare
11月20日リリース from00,万優子,Terutomo Nakashima / Sphenoid’s Noise
11月27日リリース from00,高松力都,はなつばめ / 夢をみてた
12月4日リリース from00,中島りん,よしだ かなう / 証明
12月11日リリース from00 / アルバム「Blue Truth」