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ナイロビの若者による反増税デモで、死者50人以上に。ケニアで何が起きている?【Steenz Breaking News】

ナイロビの若者による反増税デモで、死者50人以上に。ケニアで何が起きている?【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、2024年6月からケニアで起きているデモについて、アフリカ在住のZ世代ライターの視点からお伝えします。

SNSを中心に広がる増税反対のデモ

豊かな自然や、多くの野生動物が生息していることで知られるケニア。おだやかなイメージがある同国ですが、2024年6月ごろから、Z世代を中心に、政府の増税案に反対するデモが活発化しています。実際にデモの様子を見てきたという筆者のケニア人の友人にインタビューをして分かったこと、そしてデモの背景にあるケニア政治の問題点についてお伝えします。

ことの発端は、2024年の財政法案に増税案が盛り込まれたことにあります。生活必需品を含む多くの品の税率引き上げや、個人所得税の引き上げなどが含まれていました。

これに対して、首都であるナイロビで、Z世代を中心にデモが勃発。何千人もの人がデモに参加したといいます。

6月25日にはデモ隊が国会議事堂を襲撃し、放火するなど、デモは過激化しており、死傷者も多く出たそうです。

こうした事態を受け、6月26日にウィリアム・ルト大統領(以下ルト大統領)は内閣の大半を解任し、パンやおむつ、生理用品、モバイルマネー送金、食用油といったいくつかの増税案は撤回すると発表しました。しかし、抗議者の内閣への反発は続き、ルト大統領の辞任を要求すると共に、その後もデモは続いています。

現地の報道では、抗議活動の過激化により、逮捕者は600人を超えたといいます。

筆者のナイロビに住む友人は、「自分の兄弟や友人の多くも、デモに参加している。貧困層から富裕層まで、さまざまな立場の人が参加する大規模なデモを見たのは、人生で初めてだ」と語っていました。

これらのデモの特徴として挙げられるのが、デモを主宰する政治的リーダーが存在しないということです。友人は「SNSでは多くの若者の政治への不満を発信しており、デモへの参加を呼びかけている」と話しており、デモはSNSを中心として広がっていったと考えられます。

ケニアは、ルワンダやウガンダといった他の東アフリカの国に比べ、政治的な発言に対する自由度が高い傾向にあるようです。友人も「ケニアの政治で唯一の良い点は、民主主義国家であり、表現の自由があること」と話していました。

増税に対する反感だけではなく、長年の政治不信が影響

では、ケニアの人々はなぜここまで政治に対して反感をもっているのでしょうか。そこには、増税以外の問題も背景にあるようです。

そのひとつが、汚職問題です。ケニアでは、立候補者が支援者に直接お金を渡すなど、選挙期間中からすでに汚職がはびこっていると言われています。「最もお金を使った人が当選する」といっても過言ではないほどで、選挙期間中に、政治家のお金で急に道路建設や公共施設の建設が始まることも稀ではないのだそうです。

政治家に限らず、あらゆる場面で汚職が発生しており、市民のお金が有意義に使われていない現状があるのです。

また、「部族主義」と呼ばれる考え方も、政治に大きな影響を与えているとされています。42の民族と68の言語が存在するケニアには、同じ民族であることから似た価値観やアイデンティティを共有している人々がいます。そのため、同じ民族の人に親しみを感じやすく、結果として「自分と同じ民族や同じ言語を話す人に投票するべきだ」という圧力が生まれているのだそうです。

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過激化するデモ。政府は沈静化に苦戦

これまでのデモ隊と警察の衝突で、警察は発砲もしており、ケニアの人権委員会は、7月下旬時点で70人以上が警察によって拉致されたと発表しました。本来、治安を守るための警察が過度な武力行使をしたことに対しては、国際的に非難されています。

筆者の友人からは「警察を止められないのは、ルト大統領がデモ隊を組織的犯罪者として非難するなど、デモ隊を強く恐れているから。また、デモが政治的リーダーを持たず、SNSで広がったため、政府としても打開策を出しづらい」という声もあがっていました。

過激化したデモは、長年の国民の不満と政治不信がたまった結果であると考えられます。2024年10月には、議会が当時の副大統領を弾劾し、11月にはキトゥレ・キンディキ氏が新たに副大統領に就任するなど、いまも大きく動き続けているケニアの内政。政府の今後の動向、そして他の東アフリカの国々にどう影響していくのか、注目していきたいです。

References:
BBC「Thirteen killed and parliament set ablaze in Kenya protests – medics」
HUMAN RIGHTS WATCH「Kenya: Security Forces Abducted, Killed Protesters」
ACLED「Anti-tax demonstrations spread nationwide and highlight Kenya’s structural challenges」
Family Search「Kenya Languages」

TextHao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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