Steenz Breaking News

優里からYOASOBIまで、韓国で広がるJ-POPの波。その背景に迫る【Steenz Breaking News】

優里からYOASOBIまで、韓国で広がるJ-POPの波。その背景に迫る【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、韓国で日本のアーティストによる単独コンサートが続々と開催されている背景についてご紹介します。

日本や世界で人気を博すK-POP

「韓国×音楽」というキーワードで多くの方が思い浮かべるものと言えば、やはりK-POPではないでしょうか。

1980年代からさまざまな変化を経て、いまやグローバル市場で確固たる地位を築きつつあるK-POP。アメリカの有名な音楽チャート『Billboard』では、この数年でK-POPグループの名前を見かける機会が格段に増えたように思います。また、国際レコード産業連盟によると、2023年に世界で最も売れた20枚のアルバムのうち、19枚はK-POPアーティストの作品だったそう。

 

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日本国内でも、K-POPはかねてから人気のジャンルです。アメリカの調査会社・ルミネートによると、2023年、日本では、K-POPの上位100組の音楽や映像コンテンツが97億回も再生されたとのこと。Z世代の女性を中心に、K-POPのファン層が広がり続けています。

韓国で“J-POPブーム”が起きている?

そんな中、いま、韓国で“J-POPブーム”と表現しても過言ではない現象が起きています。

2024年に入り、日本のアーティストが韓国で相次いで単独コンサートを開催しているのです。すでに終了した今年の公演をざっと列挙してみると、以下のとおりです。

2月:Ado
3月:羊文学、Reol(れをる)、amazarashi
4月:King Gnu
5月:Eve、RADWIMPS
6月:新しい学校のリーダーズ
7月:LiSA

直近では、11月11日にシンガーソングライターの優里がソウルの「YES 24 LIVE HALL」で単独公演を開催。同公演のチケットは、発売開始直後、チケットサイトに35万件のアクセスが発生して、1分でソールドアウトしたことが話題となりました。この反響を受け、優里は先日、2025年5月3日と4日に最大15,000人の観客を収容できる「KSPO DOME」での単独コンサートを開催すると発表。日韓で大きな注目を集めています。

また、『アイドル』などの楽曲が世界的にヒットしたYOASOBIは、12月から自身2度目となるアジアツアー『YOASOBI ASIA TOUR 2024-2025』を開催。その中でソウルを訪れ「INSPIRE ARENA」でコンサートを開催する予定です。

 

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さらに、11月30日と12月1日にはOfficial髭男dismが、12月14日には藤井風が、それぞれアジアツアーの中で韓国公演を行うことが発表されています。Official髭男dismは当初1日程だけだった公演日を、2日程に拡大。藤井風は、これまでにBLACKPINKやBTSなど人気K-POPアーティストが公演を行った「高尺スカイドーム」で、日本のアーティストとしては初となる単独公演の開催を発表しました。韓国のメディアやファンから、熱い視線が注がれています。

日本のアーティストが受け入れられている理由

では、なぜいま、韓国でこれほどまでに日本のアーティストが受け入れられているのでしょうか。その理由はさまざまなものが考えられますが、ここでは大きく2つの背景に分けて考察したいと思います。

ひとつめは、日本発アニメの影響です。日本のアニメは世界中にファンが多く、韓国でも例外ではありません。実際、韓国のコンテンツ産業育成を担う韓国コンテンツ振興院によれば、2023年は『スラムダンク』や『すずめの戸締り』、『名探偵コナン:ハロウィンの花嫁』、『君たちはどう生きるか』といった日本発の劇場版アニメが韓国の中で人気を博したそう。日本のアニメの主題歌は、多くの場合、日本のアーティストが担当していますから、アニメとセットで音楽のファンになる人が続出しているのです。

ふたつめは、K-POPアーティストによる日本のアーティストの楽曲カバーの影響です。例えば、先ほどご紹介した優里は、SEVENTEENのDKやTREASUREのパク・ジョンウなど韓国でも高い人気を誇るアーティストが『ベテルギウス』をカバーしたことで、SNSを中心に人気に火がつきました。

また、最近では、NewJeansのハニが松田聖子の『青い珊瑚礁』をカバーし、日韓で話題に。同楽曲は、韓国で日本の80年代歌謡曲への関心を誘う大きなきっかけを作りました。

音楽が日韓の架け橋に

実は、韓国ではかつて、1900年代初頭の植民地支配の歴史を背景に、日本発のCDや映画、漫画、ゲームなどを流通させることが禁止されていました。

その方針は1998年に転換点を迎えます。当時のキム・デジュン大統領が日本の大衆文化を段階的に開放すると表明したことで、2004年には日本発の音楽が韓国の中で全面解禁となったのです。

そうした歴史的な経緯を踏まえて、現在の「韓国におけるJ-POPブーム」を見てみると、長く歴史問題でわだかまりを抱えていた日本と韓国の間に、文化的な側面で新しい関係性が生まれている兆しを感じ取ることができます。

若い世代を中心に、国境の垣根を超えてJ-POPやK-POPを相互に楽しんでいる両国。歴史的な問題は容易に解決できるものではないものの、エンターテインメントを発端として、日韓の関係が新たな段階に突入する日は近いのかもしれません。

References:
ifpi「Taylor Swift, SEVENTEEN and Morgan Wallen top IFPI Global Album Charts」
Kpopmap「Global K-Pop Popularity Surges to Over 90 Billion Streams」
韓国コンテンツ振興院「2023 애니메이션 이용자 실태조사: 사람들은 올해 어떤 애니메이션을 가장 많이 봤을까?」
長崎県立大学「韓国における日本文化の流入制限と開放」

TextTeruko Ichioka

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Teruko Ichioka

ライター・編集

フリーライター。好奇心の強さは誰にも負けない平成生まれ。得意領域もスタートアップ、ビジネス、アイドルと振れ幅が広い。

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