
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、尿検査でがんのリスクを調べられる画期的なサービスを開発したスタートアップ企業をご紹介します。
11月5日は「予防医学デー」
11月5日は「予防医学デー」です。「予防医学の父」と称される北里柴三郎が、1914年11月5日に北里研究所を設立したことを記念して制定されました。
予防医学とは、病気を未然に防ぎ、健康を維持するための医療分野を指します。そして、予防医学によるアプローチが特に重視されている疾病のひとつが「がん」です。現在、日本ではふたりにひとりが生涯でがんにかかり、3人にひとりが、がんで亡くなるとされています。がんは、長年の生活習慣によって、遺伝子にダメージが蓄積することで発症することが多いとされる病気。そのため、日頃からの予防と、定期的な検査による早期発見が重要だと言われています。
しかし、厚生労働省の『2022年 国民生活基礎調査』によると、令和4年時点の日本におけるがん検診の受診率は、多くのがん種で4〜5割程度にとどまっていることが明らかになっています。この低い受診率の改善が、日本の医療の大きな課題となっているのです。
Craifが提供する画期的ながんリスク検査「マイシグナル・スキャン」
そうした課題の解決に向けて開発されたのが、Craif株式会社の次世代がんリスク検査「マイシグナル・スキャン」です。この検査では、尿を採取して送るだけで、大腸がん、肺がん、胃がん、乳がん、膵臓がん、食道がん、卵巣がんの7種類のがんリスクを、約90%という高精度で判定できます。
この検査を可能にしているのは、「尿中のマイクロRNAを捉える」という、Craif独自の技術です。「マイクロRNA」は、細胞間のコミュニケーションを担う伝達物質のひとつ。Craifは、この「マイクロRNA」を定量化し、そのデータをAIで解析するアルゴリズムを開発したことで、尿検査だけでがんのリスクが分かるという画期的なサービスを立ち上げることができたのです。
同社は、より包括的ながん対策をめざして「マイシグナルシリーズ」として、4種類の検査を展開しています。安価にがんリスクを評価できる「マイシグナル・ライト」、唾液からどの部位のがんができやすいのかを調べる遺伝子検査「マイシグナル・ナビ」、DNAダメージをモニタリングし予防につなげる「マイシグナル・チェック」と、それぞれの目的に応じた検査方法を提供しています。
この革新的な技術とサービス設計が評価され、「マイシグナルシリーズ」は2024年10月に、暮らしや社会を豊かに導くデザインとして「グッドデザイン賞」を受賞しました。さらに、同年9月からは、首都圏のドラッグストア「トモズ(Tomod’s)」でも販売が開始され、私たちの暮らしにより身近な存在となっています。
祖父母のがん罹患が創業の大きなきっかけに
Craifの誕生には、創業者である小野瀬隆一さんの原体験が大きく影響しているのだそうです。小野瀬さんが20代のころ、祖父母ががんにかかり、とりわけ祖母は発見時には、余命1ヶ月と宣告されるほど病気が進行していました。この経験から、がんの早期発見の重要性を強く意識したといいます。
その後、小野瀬氏は当時勤務していた三菱商事を退職し、がんに関する事業を立ち上げようと考えていた際に、事業計画を相談していたベンチャーキャピタルの担当者から東京工業大学の安井隆雄教授を紹介されました。安井教授が開発した「尿中のマイクロRNAを捉える」という画期的な技術との出会いがきっかけとなり、2018年にCraifを設立しました。
現在、同社の検査サービスは個人利用にとどまらず、企業の福利厚生としても導入が進んでいます。実際、ある企業ではこのサービスの利用によって従業員の大腸がんが早期に発見され、早期治療と職場復帰につながったという事例もあるそうです。
若いうちからの健康管理が未来の自分を守る
Craifのサービスは、がんの予防や早期発見のあり方を大きく変える可能性を秘めています。従来のがん検診は、がんの種類ごとに異なる検査を受けたり、痛みや苦痛をともなうなど、負担が大きいものでした。しかし、小野瀬さんが「がんが無意識のうちに予防され、発見される世界」をめざして「マイシグナル・シリーズ」の開発・提供に力を注いできたことにより、自宅で手軽に検査ができるようになりつつあります。
こうした予防医学の発展によって、わたしたちの健康管理のあり方も大きく変わるかもしれません。定期的な健康診断や生活習慣の改善に加えて、こうした新しい検査方法を活用することで、より確実ながんの予防や早期発見が期待できるでしょう。
「がんの予防」は、いま10代や20代の方からすると、縁遠い話題に感じられるかもしれません。しかし、約半数の日本人ががんに罹患する現代。自分自身や家族の健康な未来を維持するためにも、こうした新しい技術やサービスの存在に着目してみてはいかがでしょうか。
References:
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(人口動態統計)
厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』
Text:Teruko Ichioka