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みんな大好き♥なサツマイモがピンチって本当?「サツマイモ基腐病」の実態を解説【Steenz Breaking News】

みんな大好き♥なサツマイモがピンチって本当?「サツマイモ基腐病」の実態を解説【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、いま、ちょうど旬を迎えている「秋の味覚」の代表・サツマイモに忍び寄る病気についてご紹介します。

ホクホク派?ねっとり派?とにかくおいしいサツマイモ

10月13日は「サツマイモの日」。その由来は、江戸時代、サツマイモを「十三里」と呼んでいたことにあるようです。

なぜ「十三里」なのかというと、諸説ありますが、ひとつは、現在の埼玉県川越のエリアが、サツマイモを名産としていたこと。川越は、江戸からおよそ十三里(約51km)の距離にあったことから、サツマイモを「十三里」と呼ぶようになったのだそう。また別の説としては、江戸時代の焼き芋屋が「栗(九里)より(四里)うまい」ことから、「十三里(=9+4)」とした説もあるそうです。

そうした理由から、サツマイモの旬である10月、そして「十三里」にちなんで13日を「サツマイモの日」として、1987年に「川越いも友の会」により制定されました。

江戸時代からわたしたちの生活に密着し、今日でも、焼き芋にスイートポテト、さつまいも味のドリンクなど、世代を問わず人気が高いサツマイモ。自給率が高いことでも知られていますが、実は、いま栽培の危機にあるといわれています。その原因は、「サツマイモ基腐病もとぐされびょう」という病気。2018年から発生し、主要な生産地である九州を中心に、大きなダメージを与えているのです。

壊滅的なダメージを与える「サツマイモ基腐病」とは?

主に被害を受けているのは、南九州の加工用のサツマイモ品種。都道府県別のサツマイモの生産量を見てみると、鹿児島県と宮崎県で半分近くを生産しています。そのうちの約半数は、加工用のサツマイモです。加工用のサツマイモは、でんぷんを取ったり、芋焼酎やエタノールの原料となったりします。すでに九州の芋焼酎メーカーでは大きな打撃を受け、対策に追われています。

「サツマイモ基腐病」はカビの一種が原因だということがわかっています。葉を枯らすだけでなく、イモ自体も腐敗して、出荷ができない状態になってしまうのだそう。いまのところ、有効な農薬はありません。

サツマイモは、苗が育ってから畑へ植えつけられますが、多くはその段階で、すでに「サツマイモ基腐病」に感染してしまっているそう。また感染してもすぐにはわからないことが、急拡大の要因にもなっているといいます。感染している状態でも、畑に植えられさえすればサツマイモは育つので、雨や灌水によって菌が広がってしまい、結果として健康なサツマイモにも広がってしまうのです。収穫の時期になって枯れはじめ、気づいたときにはもう手遅れ……。ときには出荷量が半減することもあるのだそうです。

雨によって周囲の畑に感染が広がるので、気候変動による大雨や台風の増加も、拡大の要因のひとつといわれています。後継者のいない高齢の農家だと「そこまで苦労して続けることもない」と、廃業してしまうこともあるのだとか。

九州から広がり、年々、北上を続けているという「サツマイモ基腐病」。すでに、生産量の多い茨城や千葉でも感染が確認されています。南九州では加工用の「コガネセンガン」という品種が被害を受けていましたが、関東での生産が多い生食用の「べにはるか」は、特に「サツマイモ基腐病」に弱いのだそう。そうした背景もあり、サツマイモの関係者は危機感を抱いているのです。

サツマイモを守るための取り組みを

この状況を変えるべくアクションを起こしているのが、福岡に本社を置き、農業資材等を中心に扱う「株式会社welzo」です。

現場の農家の状況を見て、このままではサツマイモを中心とする経済圏に大きな影響が出ると考え、産学連携のコンソーシアム「みんなのサツマイモを守るプロジェクト-Save The Sweet Potato-」を設立。酒造メーカーや九州大学、アグリテックベンチャーの「株式会社CULTA」などが賛同し、サツマイモ基腐病へのリサーチや、品種開発への支援をおこなっています。

病気だけじゃない!気候変動のサツマイモへの影響

「金蜜芋のチーズタルト」

気候変動の影響は、病気だけではありません。千葉県では、平均気温が上がり、雨が少なくなったことで、規格外のサツマイモが増えているのだそう。そこに着目したのが、焼き芋メーカーの「株式会社さつまいもの石田農園」です。

大きすぎる、小さすぎる、形が悪いなどの理由から、廃棄されたり、低価格で扱われたりする規格外のサツマイモ。その利用価値を上げ、フードロス削減に貢献するため、蜜芋洋菓子店「金蜜堂きんみつどう」を開店。「Kin Mitsu Imo Sweets Collection」として、こだわりのスイーツを展開しています。2024年9月からは、応援購入サービス「Makuake」で、『金蜜芋のチーズタルト』を販売する試みも。農産物の多くは、出荷のサイズや形が細かく決まっているため、どうしてもロスが生まれてしまいます。しかし、適性サイズではないものであっても、味は一級品。自社でスイーツ化すれば、問題解決に直結しますね。

気候に左右される農業だけど

サツマイモだけでなく、多くの農作物は、環境に影響を受けやすい屋外で生産されています。これまでも、気候に合わせたさまざまな工夫がおこなわれてきましたが、急激に起こっている昨今の気候変動のスピードについていくのは大変なこと。多くの人の支援や、新しい視点での打開策が必要になっていきます。

また同時に、農業にも高齢化の波が押し寄せ、2020年には農業従事者の7割が65歳以上という調査結果もあります。環境だけでなく、こうした社会変化に対応していく必要があるのです。裏を返せば、これからもっと、若者の農業参加が増えて新しい風が起これば、さまざまな問題解決への糸口になっていくのかもしれません。

References:
(独)農畜産業振興機構「サツマイモ基腐病の発生と防除の取り組み」
農林水産省「基幹的農業従事者」

TextItsuki Tanaka

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Itsuki Tanaka

ライター

フリーランスのライター。食、農、環境領域 /博物館好き/コーヒー、アイス、チョコも好き。

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