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林業にはイノベーションが詰まってる!国際見本市『FORESTRISE2024』現地レポート【Steenz Breaking News】

林業にはイノベーションが詰まってる!国際見本市『FORESTRISE2024』現地レポート【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、林業における次世代テクノロジーの利活用を発信する国際見本市『FORESTRISE2024(第4回次世代森林産業展)』のトピックをご紹介します。

国際見本市『FORESTRISE2024(第4回次世代森林産業展)』とは?

2024年9月18日(水)から20日(金)までの3日間、東京都江東区にある東京ビッグサイトで、林業における次世代テクノロジーの利活用を発信する国際見本市『FORESTRISE2024(第4回次世代森林産業展)』が開催されました。

関連する企業がブースを出展し、自社の製品を宣伝するほか、林野庁長官をはじめとする有識者の講演やセミナーもおこなわれました。今日は、林業分野におけるスタートアップや新規事業を取り上げたセミナーから、林業の新しい取り組みを見ていきましょう。

自宅やオフィスで育てたどんぐりが山へ戻る「MODRINAE」

最初にご紹介するのは、「山づくりで土砂災害の人的被害をゼロにする」をビジョンに掲げる「株式会社ソマノベース」。

代表の奥川季花さんは、生まれ育った和歌山県で起業しましたが、もともとは地元が嫌いだったのだそう。しかし、高校・大学時代に、地元が二度の大水害におそわれたことから、地元のためになる仕事をすることを決意。大学へ通いながら、スタートアップに勤務したり、起業のための勉強をしたりしてきました。

そうしていくうちに、山の管理と防災が密接に結びついていることに気が付いた奥川さん。林業会社で経験を積みながら「ソマノベース」を立ち上げ、「MODRINAE」という事業の開発に至りました。

「MODRINAE」は、自宅やオフィスで、どんぐりを観葉植物として育ててもらう事業です。2年後、立派な苗木となったどんぐりは、森へ植林され、地元の林業会社が管理します。つまりは「戻り苗」というわけです。

当初は個人向けのサービスとして想定していた「MODRINAE」ですが、企業からの問い合わせも多く、いまでは企業向けのプランもつくっているそう。2年も育てた我が子のような苗が育っていく様子は、ついつい気になって、どのように育っていくか、関心が向けられるはず。山や森林から遠い場所に暮らしていても、人と森、企業と森との関係性をつないでいける事業になっているのです。

地域ならではのSDGsなツーリズム「掛川フォレストツアー」

続いて紹介するのは、静岡県にある「掛川市森林組合」が手掛ける「掛川フォレストツアー」。森林組合とは、森林の管理を目的とした組織なので、なかなか新しい事業に取り掛かりにくいという背景があります。しかし、掛川市森林組合では、異例の新規事業「掛川フォレストツアー」を創設。主事の宮内貴志さんが説明します。

ツアーに使われるのは、電動アシスト付きのマウンテンバイク。自転車に乗れるという条件はつきますが、体力的な不安がある方でも、参加しやすいツアーになっています。

ただただ眺めのいい場所や、おもしろいコースをめぐるのではなく、森林組合のメンバーが「林業の視点からみた森林」を案内するのもポイントです。お昼ごはんには地元の食材を用いたお弁当の提供も。なかなか知ることのない林業のことを知り、地元の味覚も楽しめるツアーは、森林組合の新しい取り組みとして注目されています。

森をデジタル化する森林計測サービス「RINTO」

「ヤマハ発動機株式会社」がおこなうスマート林業支援サービスを紹介したのは、同社の新事業開発本部・森林計測部の加藤薫さん。もともと、農薬散布用の無人ヘリコプターを作っていたヤマハ発動機。その技術を生かして、森林内をレーザーで計測し、高精細な森林情報を取得する森林計測サービス「RINTO」の提供を、2023年9月から始めています。

生えている木のことを、林業用語では「立木りゅうぼく」といいます。立木にどれくらいの「材積量(=断面積×長さ)」があるのかを調べることができるのが、この「RINTO」です。

これまでは森林へ行って、木を1本ずつ測る必要がありました。広大な森林であれば、想像するだけでも大変な作業です。しかし「RINTO」なら、1回の給油で100分飛ぶことができる無人ヘリコプターに積んだレーザーで詳細な3Dデータを収集し、1日に50~100haの調査を行えるようになるのだそう。また、同時に地形も計測できているので、搬出のための作業道の確認や、使われなくなった昔の林道の発見などにもつながっていくそうです。

いろんな世界でデジタルによる「見える化」が進んでいますが、森林においても同様の取り組みがおこなわれているのが興味深いですね。

日本の国土の7割は森林だから

日本の森林面積は、国土のおよそ7割を占めています。日常生活で森林に意識を向けることはあまり多くないかもしれませんが、広大な面積である森林から切り離して社会を発展させていくことは難しいはず。新たな動きを通して、より良い森林との関係を築いていけるといいですね。

Text:Itsuki Tanaka

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Itsuki Tanaka

ライター

フリーランスのライター。食、農、環境領域 /博物館好き/コーヒー、アイス、チョコも好き。

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