繊維を中心に扱うライフスタイル提案商社がフードロス問題に挑戦!廃棄予定食材を染料にした「FOOD TEXTILE」【Steenz Breaking News】
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、9月29日の「食料のロスと廃棄に関する啓発の国際デー」にチェックしておきたい廃棄予定食材を染料にするプロジェクト「FOOD TEXTILE」をご紹介します。
9月29日は「食料のロスと廃棄に関する啓発の国際デー」
9月29日は、国連が制定した「食料のロスと廃棄に関する啓発の国際デー(International Day of Awareness of Food Loss and Waste)」。日本では一般的に、食品として生産されたものの、消費されなかったものをまとめて食品ロス、フードロスと呼んでいます。
一方、海外では、食品がどの段階でゴミになってしまったのかを分けて考えます。小売りに到達する前、つまり生産から製造・加工、流通の段階で発生している場合に「フードロス(food loss)」と呼び、小売りから消費の段階で廃棄された場合には「フードウェイスト(food waste)」と呼びます。
このようにカテゴライズすると、小売りから消費までの段階での「フードウェイスト」は、消費者にとっては、比較的取り組みやすい課題であることがわかります。購入するときに、すぐに食べるものは商品棚の手前から取る、冷蔵庫の中のものをきちんと食べ切るなどがその例です。
しかし、「フードロス」は事業者のサプライチェーンの中で発生するものであり、消費者が直接的に関わることは比較的難しいのですが、そうした問題に取り組んでいる企業があります。そのひとつが、繊維を中心に扱うライフスタイル提案商社である、豊島株式会社です。
フードロスにアプローチするプロジェクトブランド『FOOD TEXTILE』
創業から180年を超える長寿企業であり、繊維のスペシャリストである豊島株式会社。原料から製品まで幅広く取り扱い、アパレル企業に素材を提供するだけでなく、オリジナルブランドの開発もおこなっています。
そんな豊島株式会社が、繊維を中心に扱う会社でありながら、食の問題に関わるようになった経緯を、同社広報担当の佐藤さんにうかがいました。
フードロス問題へのアプローチをはじめたのは、2013~2014年ごろのこと。異業種交流会で、大手食品メーカーから「食品残渣(食品の製造・加工・流通・消費の過程で生じる食べられない部分や、規格外・傷などが理由で廃棄される食品由来のごみ)に悩んでいる」と聞いたことがきっかけだったといいます。
そこから、自社のネットワークを生かして、食の問題解決にもつながる製品を作れないだろうかと思いつき、食品残渣を染料として活用したプロジェクトブランドを立ち上げることにしたのだそう。このプロジェクトブランドは「FOOD TEXTILE」と名付けられ、2016年にはレタス・紫キャベツ・玉ねぎを使用した優しい色合いのバッグが、人気セレクトショップの「URBAN RESEARCH DOORS」から発売されました。
とはいえ、野菜を染料にするのは簡単な道のりではありませんでした。そもそも、取引先の染料メーカーの説得が必要です。それに、たとえOKが出ても、食品は時間が経てば腐ってしまうため、その前に染料として活用するための徹底的な管理が必要でした。
試行錯誤した結果、このような赤かぶから柔らかな青い色を安定的に抽出できるようになり、天然素材での染色のデメリットである退色も、化学染料を10%だけ使用して色を固着させることで防げるようになったのだそう。
そして現在では、50食品から、500色以上の色を取り出すことができるようになっています。ひとつの食材から複数の色が抽出できるというのは興味深いですね。
さらに食品残渣の提供が受けられる企業が増え、2024年では約20社の食品関連企業や農園から提供され、70ものブランドへ素材を提供しています。
有名ブランドとの協業も
この「FOOD TEXTILE」、2023年には、アシックスが販売するランニングシューズ「GEL-LYTE Ⅲ OG」「GEL-LYTE V」に、農園から買い取った廃棄予定のルイボス・柿・抹茶・レタスから抽出した色で染色した生地が使用されました。
中国、インド、インドネシア、韓国、アメリカ、オーストラリア、東アジア地域、中東地域、ラテンアメリカ地域での販売もおこなわれ、日本ならではの絶妙なカラーは、海外でも話題となりました。
また、2024年にはカシオ計算機の「G-SHOCK GMD-S5600CT」シリーズのクロスバンドのカラーに採用されました。グリーンに見える「赤かぶ」は長野県の伝統的な漬物である「すんき漬け」をつくる際に余る実の部分が使われています。またピンクに見える「さくら」は、食用で塩漬け加工されたものの、古くなってしまった桜の花が使用されています。
世界展開をめざす、優しい色合い
繊維という、食とかけ離れたフィールドから、フードロスにアプローチしている豊島株式会社の取り組み。生産の上流で環境に配慮することで、消費者は販売されるアイテムを使えば自然と、社会課題の解決に貢献できるものでした。
今後は海外展開を視野に入れているという「FOOD TEXTILE」。日本ならではの染色技術や管理手法を使って生まれた優しい色が、海外に広がっていくと良いですね。
Text:Itsuki Tanaka