世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカのごみ処理事情について、アフリカ在住のZ世代ライターのレポートをお伝えします。
ウガンダで起きた痛ましい事故の背景にあるもの
2024年8月10日、ウガンダのごみ処分場で、大規模な地滑りが発生し、多くの人が犠牲となりました。
アフリカの多くの国では、ごみ処理が適切にされず、人々の生活にも影響が出ています。しかし、そのごみには、アフリカから遠く離れた場所に住む、わたしたちが出したごみも含まれているかもしれないのです。
ゴミ処分場を求めてできあがるコミュニティ
地滑りが起きたのは、筆者が住むウガンダの首都・カンパラ。カンパラの北部に位置するキティージ埋立地は、1996年に開設され、何十年もの期間を経て、ごみの堆積物の山ができあがっています。
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日本のように、ごみの回収や処理のシステムが機能していないアフリカの国では、ごみはそのまま放置されることが多く、路上生活者やストリートチルドレンが、リユースできる廃棄物を探して集まります。
ウガンダの場合、こういった人々がごみ処理場の近くに掘っ建て小屋をつくり、スラムとしてコミュニティができあがっています。
今回の地滑りの直接的な原因は、集中豪雨によるものだそうです。住民が眠っている夜間に発生し、周辺の家を巻き添えにしたことで、多くの犠牲が生まれました。現地の報道によれば、死者数は35人、さらに28人が、未だ行方不明となっています。
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カンパラの市長は、今回の地滑りを「国家災害」と認定しましたが、原因には「世界のごみ処理問題」が大きく関係していると考えられます。
アフリカのごみ山をつくっているのは誰?
みなさんは、日本で出されたごみがアフリカで処分されていることをご存知でしょうか。
「グローバルノース」である先進国の廃棄物は、「グローバルサウス」である途上国に大量に輸出されており、そこで処分されているのです。このことは「廃棄物植民地主義」とも呼ばれ、大きな社会問題になっています。
国際環境NGO・グリーンピースによると、日本もアフリカにプラスチック廃棄物を輸出しており、2020年の輸出量は8,100トンでした。いままでは、中国や東南アジアの国々に輸出していましたが、中国やマレーシアの受け入れが制限されたことで、アフリカ地域への輸出が増加しているといわれています。
「お金はあるが土地はない国のごみ」は、このようにアフリカや南米にある最終処分場に輸出されていますが、最終処分場であっても、ごみ処理が適切にされていないのが現実なのです。
その結果、堆積した廃棄物に有害物質が含まれていたり、地滑りを発生させたりすることで、人々の暮らしを脅かすこともあります。
さらに、ごみ処分場周辺の環境悪化も問題です。例えばカンパラでは、処分場の近くを流れる川には、多くのごみが流れ込んでしまい、「もはや処分場の一部となっている」といっても過言ではありません。
そんな汚染された川であっても、近隣に住む人々は、生活用水として川を利用していて、コレラや赤痢といった感染症の原因にもなっています。
今回の大規模な地滑りによって犠牲となったのはウガンダ人です。しかし、わたしたちの生活から生まれたごみが、遠いアフリカに住んでいる誰かの家の目の前で処分されている以上、責任の一部はわたしたちにもあるという意識をもっておくべきでしょう。
そして国際社会は、「ごみをどの国が処分するか」を議論する以前に、「堆積していくごみをどう処分するか」や「そもそも、なぜ自国で処理できないほどごみが出てしまうか」ということをしっかり議論して、対策を進めるべきではないでしょうか。
References:Green Peace「“ごみの植民地主義” 廃プラスチック輸出、次の標的はアフリカ諸国」
Text:Hao Kanayama