「気になる10代名鑑」の806人目は、荒井結音さん(18)。東京藝術大学で油絵を専攻し、日常の中の『平穏』をテーマに絵を描き続けています。「無意味かもしれないことに全力でありたい」と語る荒井さんに、活動におけるインスピレーション源や今後の目標について、詳しく聞いてみました。
荒井結音の活動を知る5つの質問
Q1. いま、力を入れている活動は?
「今年の4月から藝大に通って、油絵を専攻しています。“笑って、ごはんを食べて、寝る”という日常風景や、そこにいる人の“平穏”を描いて記録することが好きです。この普遍的なテーマを、油絵でどこまで表現できるかを模索したくて。そこにこだわっています。
最近では、ダブルドローイングといって、絵のことだけじゃなく、しょうもないことも含めて、会話をしながら、目の前の人間と向き合って絵を描くことに挑戦しました。相手を大切に思いながら、表現していくのは、新しくて幸せなコミュニケーションだなと思っています。
他にも、ずっと作品を見てきた憧れの作家の方のアトリエでお手伝いをさせてもらっています。スキルを見て学んだり、絵が創られる空間をそばで体感できたりもして、毎日充実しています」
水平≒平穏
自分の居場所についての作品です pic.twitter.com/77GhfXSxfl
— アライ (@katumen_) June 24, 2024
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「レゴで遊んだり、折り紙を折ったり……。“ものづくりをする”ということは、いまも昔もずっと好きなことです。でも実は、勉強としてやっていた小中学校のときの図工は、成績は全然良くなくて。
転機になったのは中学校3年生のとき、『ジョジョの奇妙な冒険』に出会ったこと。漫画のコマの模写を始めてみたのですが、だんだんやっているうちに、絵を描くのが楽しくなってきて。それと同時に、平面へのドローイングという表現方法が、自分には合っていると気づいて。
スポーツも勉強も苦手だった自分が、全力で取り組めるものを見つけられたのが嬉しくて、『自分が進みたい道は絵しかない!』と思ったんです。それで、高1から美大に進学することを考えて、画塾に通い始めました」
Q3. 活動の中で意識していることは何ですか?
「自分にとって、絵を描くことはいつだって、娯楽の延長線上に存在するものなんです。だから、美術は苦しみながらやるものじゃなくて、楽しいからやるものでありたい。
画塾で受験対策の絵に取り組み始めた高2のときに、スランプで絵を描くことが楽しくなくなってしまったことがあって。そのときは正直、つらかったです。その期間は、思い切って、絵をお休みして、美大生のギャラリーを見て回ることにしていました。
そうしているうちに、好きな作品を見つけて『やっぱり美大に通って絵を描きたい』という、前向きなモチベーションを取り戻せたんです」
食いしん坊の絵です pic.twitter.com/TdgE3LWSLj
— アライ (@katumen_) June 18, 2024
Q4. これまでの活動の中で、影響を受けたものは?
「去年まで藝大の油画科で教授をされていた小林正人先生の『この星の絵の具』という自伝小説です。先生のキャラクターも奇想天外で面白いですし、絵にかけている愛と情熱がとにかくすごくて、文章からもエネルギーがあふれているんです。
芸術って、世間一般から見たら、必要なものではないですし、究極なくてもいいという側面もあると思います。でも、意味がないかもしれないものに、どれだけマジになれるか、そうすることがどんなに楽しいことなのかを教えてくれた本なんです」
Q5. 今後の目標は?
「楽しいとか好きと思う感情を大事にして、ずっと描き続けながら生活できたら幸せだなと思います。
これからは、展示や共同制作にも挑戦して、自分のメッセージをもっと多くの人に伝えてみたいです。絵を通して、キャンバスに記録した自分が大切に思っていることをお裾分けすることで、いろいろな人と共鳴できたら嬉しいです。
それから、学んでいくうちにこれまでにいろいろな先生にお世話になって、たくさんのものをいただいたのだと気づきました。今後は、いただいたものを後輩に還元していきたいとも思って、教職にチャレンジしています。いつか絵を教えられる存在になることも目標です」
荒井結音のプロフィール
年齢:18歳
出身:東京都武蔵野市
所属:東京藝術大学美術学部油画専攻
趣味:カラオケ
特技:首が5本ある鶴を折ること
大切にしている言葉:人を大切にできない人に良い絵は描けない
荒井結音のSNS
— アライ (@katumen_) May 28, 2024
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Photo:Nanako Araie
Text:Chihiro Bandome