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小説だけど、起業と人生の教科書。将来を考える10代は必読の一冊【『あすは起業日!』座談会レポート】

小説だけど、起業と人生の教科書。将来を考える10代は必読の一冊【『あすは起業日!』座談会レポート】

29歳のある日、勤めていた企業をクビになった主人公のスミレ。スキルや人脈、お金、何もない中で、勢いのままに立ち上げた会社を本格稼働させ、人との出会いや成長を経て、唯一無二のオンライン選書サービスをつくり上げていく――。

去る8月7日に開催された、そんなスタートアップ奮闘記を描いた小説『あすは起業日!』の著者・森本 萌乃さんを囲む座談会の様子をレポートします。

会場となったのは、森本さんが運営する選書専門のブックカフェ「チャイと選書 Chapters Bookstore」

森本さんは、新卒で大手広告代理店に入社。その後スタートアップ企業2社を経て起業。現在は、本を通じて “本棚で手と手が重なるような” ロマンチックな人との出会いを提供するオンライン書店「Chapters」と、今回の会場にもなったブックカフェ「チャイと選書 Chapters Bookstore」を運営しています。そんな森本さんの体験談をもとに書かれたのが、小説『あすは起業日!』です。

座談会に参加したのは、過去「気になる10代名鑑」に出演したメンバーによるコミュニティ「Steenz Community」の13名。年齢は15歳から22歳と幅広く、起業に興味がある・実際に起業しているメンバーもいれば、「起業にはまったく興味がない!」というメンバーも。約1時間にわたる座談会は、小説に関する質問をはじめ、起業に関する相談、人生相談などで盛り上がりました。

本書の特徴は、小説でありながら「起業の教科書」でもある点。スタートアップのシード期(商品やサービスの構想段階)に必要な用語が丁寧に解説されていたり、資金調達やメンバー集めをどのように乗り越えたか、経験をもとに生々しく描かれていたり。起業を目指したことがある座談会参加者からは、「もっと早くこの本に出会いたかった!」という声が上がっていました。

小説でありながら、起業やお金の教科書

ここからは、座談会の模様の一部をご紹介します。

みぎら:実話とフィクションを混ぜて書かれていると聞きました。どこまでが実話で、どこからフィクションなのかを教えていただきたいです。

森本:半分がフィクション、半分が実話です。ただ、主人公のスミレが起業を目指して七転び八起きするときの感情は、わたしが本当に感じていたことをありのままに書きました。起業のノウハウを書いたビジネス書って、本当にたくさんあって。でも、わたしは起業するとき、起業にともなう不安や辛さをもっと知りたかった。だから、感情の部分はめちゃくちゃ正直に書いています。

みぎら:もっと早く、自分が起業を目指していたときに読みたかったなと思いました! まわりの友人にもすすめたいです。

好きなことを仕事にor現実的に就職?起業家の視点でアドバイスも

座談会では、将来に悩むメンバーからの質問も多くありました。

小春:いま20歳で、就活中です。好きなことを仕事にするか、ある程度見通しのつく現実的な仕事を選ぶかで悩んでいます。

森本:どっちのほうが気持ちは強そう?

小春:わたしは、学生をしながら好きなことを仕事にもしていて。家族からは現実を見なさいって言われるけど、好きなことを続けたいとも思うんです。

森本:わたしの経験から言うと、『新卒で大企業に就職』って、1回しか切れないカードなんですよ。いまの夢にそこまで大きな自信が持てないんだったら、まずは新卒で大企業を目指して、大きなものに巻かれてみる。で、いつでも降りていいゲームをしてみるっていうのはアリだと思います。

小春:なるほど。

森本:わたしは新卒のとき、やりたいことが見つからなくて。でも大手の広告代理店だったら、いろんな仕事の幅があると思って就職しました。そこでの濃い4年間で「お客さまと直接関わる仕事がしたい」って気付いたことが、いまにつながっています。だから、いったん新卒で大きなところに挑戦しておいて良かったなって。

小春:なんか……メラメラ燃えてきました!

森本:もしチャンスがあるなら、ためらわずに、めちゃくちゃ難しい大企業とかにも挑戦してみたほうがいい。起業してうまくいっている人って、いつでも「プランB」をもっているんですよね。それは夢を諦めたってことではなくて。いましかない新卒カードを使って、大きなお祭りに参加してみる。それから、やりたいことをやろう!

読者が「応援したくなる」主人公

もも:起業というと、難しい印象を抱きがちだったのですが、ストーリー構成がおもしろく、とても楽しく理解できました。執筆にあたり、読者のターゲット層に向けて意識されたことはありますか?

森本:わたしは起業家なので、ずっとビジネスのことを考えてるんですよね。どうしたら人の財布が開くかなって。一方で、執筆はわたしにとって芸術活動に近くて。読者層は、あえて考えずに書いていました。考えすぎると、小手先のテクニックとかで何とかしちゃいそうで(笑)。 でも、ひとつだけ意識していたのは「みんなから応援される主人公にしよう」ということスミレはわたしであって、わたしじゃない。読者を置いていくような天才ではなく、読者が、そしてわたしも応援できるような主人公にしよう、と思って書きました。

そのほかにも、森本さんの学生時代の話や好きな本の話、Steenz Communityからの「起業を考えていて、資金調達やメンバー集めに苦戦している」「起業したいけど、どんなサービスにしようか悩んでいる」という具体的な相談にいたる場面も。

森本さんのユーモアあふれる話、ときには鋭い意見やアドバイスを受けて、参加した全員が、霧が晴れたような清々しい表情になっていくのが印象的でした。そして、それぞれの夢や目標に対する熱がどんどん高まっているのを感じた1時間でした。

エネルギーに満ちた10代・20代のいまこそ、読んでほしい一冊

森本さんが「わたしが起業するときに知りたかったことを全部詰め込んだ」と表現するとおり軽快に展開していくストーリーの中で、お金の使い道や大切さ、人とのつながりについても描かれている本書。実際、読書会やトークイベントを開催すると、涙で声を詰まらせながら、感想を話してくれる読者もいるのだそうです。

起業に興味ないという人も含め、座談会に参加したどのメンバーも、本書との出会いと今回の座談会で、生き方のヒントをもらえたり、背中を押されたりと、多くを得る機会になったようでした。

最後に、森本さんからのメッセージを紹介します。

「わたしが10代のころに比べて、起業がグッと身近な、当たり前の選択肢になっているんだと感じます。『何かしたい!』とブンブンしている勢いの良い人、起業したいと考えている人は、読んだら絶対に道が開けるはず。今日集まってくれたメンバーをはじめ、Steenzには世界を変えそうな匂いのする若者たちがたくさんいますよね。エネルギーに満ちた10代・20代のみなさんにぜひ、読んでほしいと思います

▼座談会の様子はこちら

森本 萌乃さんプロフィール

1990年東京生まれ。株式会社MISSION ROMANTIC代表。新卒で広告代理店に入社後、外資系企業とスタートアップ2社の転職を経て、2019年自身の会社を創業。本を通じた人との出会いを提供するオンライン書店・Chaptersは、オープンから2年で登録者延べ5,000名を超え、独身男女から新たな出会いの選択肢として注目を集める。2024年4月、東京・市ヶ谷にリアル店舗「チャイと選書 Chapters bookstore」をオープン。趣味は旅先での読書。

書籍情報

『あすは起業日!』
著者:森本 萌乃
発売日:2024.3.13
発行:株式会社小学館

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Kyoko Onishi

エディター

呉服屋、事務職、大学・専門学校のパンフレット制作を経て、現在はフリーランスのライター兼エディターとして活動中。過去には、趣味である温浴・サウナ関連のWEB記事やエッセイ、書籍の執筆にも携わる。

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