世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、企業の環境対策に役立つサービスの開発によって、気候変動の解決に挑戦するスタートアップについてご紹介します。
今年も「史上最も暑い夏」になる
全国各地で梅雨が終わりを迎え、それを待っていたかのように、全国で記録的な暑さが観測されています。例えば、7月20日時点において、35度以上の猛暑日を2日連続で記録した場所が100地点を突破。普段は暑さに強い人でも、熱中症対策を意識したり、さすがに冷房の効いた涼しい屋内で過ごすようにしたという人も多かったのではないでしょうか。
それもそのはず。今年は「史上最も暑い年」と言われていた昨年をさらに上回るような暑さが日本中を襲うと予想されているんです。気象庁も、今夏の気温について高い警戒感をあらわにしています。7月18日に「早期天候情報」を発表し、今年は沖縄から北海道の南部まで、全国のあらゆる場所で、7月24日ごろから例年よりも気温がかなり高い日が続くとしています。
なぜこんなにも暑いの?
では、今年の夏はなぜこんなにも暑くなると予想されているのでしょうか。気象・気候の専門家は、「偏西風の大蛇行」「黒潮の大蛇行とそれに伴う日本近海の海面温度の上昇」「ラニーニャ現象」という、大きく3つの理由を指摘しています。
まず、偏西風の大蛇行については、これまで東北地方を横切るように吹いていた偏西風が、今年はまるで日本を避けているかのように大きく曲がりくねった形で吹いているといいます。偏西風の南側には暖かい空気があり、日本全域がそれに覆われているのです。そのため、平年よりも暑い日が続いているのです。
そして、偏西風が蛇行したことで、日本の南から暖かい空気を運んでくる黒潮も、大きく蛇行するようになってしまいました。通常は紀伊半島を抜けて東へと流れていく黒潮が、今年は岩手県のほうまで流れているそう。
また、ラニーニャ現象の発生も予測されています。南米・ペルー沖の海面水温が低くなり、ラニーニャ現象とは、パプアニューギニアやフィリピン沖の海面水温が上昇するもの。これが発生すると、太平洋高気圧が強まり、日本が猛暑になることが知られています。
これら3つの原因が揃ってしまっているために、今年は非常に暑い夏となることが予想されているのです。
暑さの根本的な原因は「地球温暖化」
そうした「今年の夏を暑くさせる要因」の元凶は、地球温暖化にあると考えられています。
偏西風の蛇行は、北極が温暖化していることが原因のひとつとされています。北極圏が暖かくなり、赤道エリアの気温と温度差が縮小することで、偏西風の速度が低下。速度が遅くなればなるほど、偏西風が蛇行したルートを描いてしまうのです。
北極の温暖化は、地球温暖化が進んだことが原因だといわれています。今年の夏が暑くなるメカニズムを紐解いていくと、その根本には、地球温暖化という世界的な問題が浮かび上がってくるのです。
気候変動の問題に立ち向かうスタートアップ
そんな気候変動の問題をグローバルに解決しようと挑戦する日本発のスタートアップがあります。それが、2024年6月に42億円の資金調達をおこなったことを発表した、アスエネ株式会社です。同社は、企業のCO2排出量を可視化するクラウドサービス「ASUENE」を開発・提供しています。
企業はいま、「いかに環境対策に取り組めているか」という点についても、市場から厳しく評価されるようになってきています。その一方で、CO2排出量の算出業務は、これまで非常に煩雑なものとなっていました。
アスエネは、そこに着目し、企業のCO2排出量の算出・可視化、削減、カーボンオフセット、サプライチェーンの排出量の報告・情報開示を、簡単に実現できるようサポートするシステムを開発しました。この仕組みがいま、多くの企業から注目されているのです。
人気バンドの影響で環境問題に着目し始める
アスエネを立ち上げたCEOの西和田浩平さんは、大学生のころから、環境問題や社会問題に着目し始めたそうです。そのきっかけは、子どものころから好きだったという、Mr.Childrenの存在。ボーカルの桜井和寿さんがチャリティーライブの収益の一部を環境問題に取り組む企業や団体に融資・投資しているという話を大学生のころに知り、感銘を受けたことで、自身も環境問題や社会問題に目を向けるようになったといいます。
その後、西和田さんは再生可能エネルギーに可能性を感じ、三井物産株式会社へと入社。国内外の太陽光発電や風力発電などの新規事業の開発、投資、M&Aに携わった後、2019年10月にアスエネを創業しました。
現在は「ASUENE」だけでなく、ESG評価クラウド「ASUENE ESG」や、温室効果ガスの削減量を証書やクレジットの形で発行し、企業が相互に売買をおこなうカーボンクレジット取引所なども運営し、多角的にプロダクトを展開しています。
同社のサービスは国内だけでなく、海外にも拡大。急速な成長を見せているアスエネは、後戻りができないほど深刻化する世界の気候変動の問題解決を見据えながら、今日も事業を前進させているのです。
Text:Teruko Ichioka