「気になる10代名鑑」の742人目は、みな(19)さん。高校生のときから気候変動に関するムーブメントに参加し、もっと地に足を付けた活動がしたいという思いから、農業や食と気候変動を掛け合わせた活動をしています。この取材の直後、20歳の誕生日を迎えるというみなさんに、10代最後の思いを根掘り葉掘り聞いてみました。
みなを知るための5つの質問
Q1. いま、力を入れている活動は何ですか?
「『Slow food youth network Tokyo』という団体の代表をしています。スローフードというのは、食とそれを取り巻くシステムをより良いものにするための、世界的な草の根運動です。
Slow food youth network Tokyoのメンバーは、学生から会社員、農家さんなど、さまざまで。肩書を問わず、それぞれの形でアクションを起こすことを目標にしています。
学生さんに向けては、いまの社会で何が起きていて、自分たちはどんな選択をすればよいのかを気軽に知ることができるようなSNSの投稿を作成しています。社会人の方へも、食を通したゆったりとした時間や対話の場を提供するため、イベント開催、具体的には映画の上映会を開催するなど、それぞれのアプローチでスローフードの達成をめざしています。
スローフードというと、なんだか“意識高い系”と捉えられがちだけど、食べるものは命の根幹であり、またそれだけでなくすべての事柄につながるこ。だから、もっと多くの人の前提意識に、この考え方を広めたいと思っています」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「高校生のころから気候変動に興味があって、スタンディングやデモといった運動に参加していました。でも活動をしていくうちに、自分の中でモヤモヤが溜まっていって。声をあげるだけでは、自分自身が本質的には変われないというか。もっと地に足のついた活動をしたいと思うようになりました。
高校生までは育てた野菜をご近所さんと交換しあうような、贈与社会を生きていました。大学進学をきっかけに上京し、きれいな野菜がビニールパックに詰められて並んでいる様子に衝撃を受けたんです。そこで、いままでの人生では当たり前にあった“農”というものを改めて意識するようになったんです。
そんなきっかけもあって、大学1年の夏に、岐阜飛騨で地域おこしのボランティアをして、自然栽培をしている農家さんと出会いました。そこで一層、農や食のサステナブルな在り方に興味がわいて。地に足をつけた活動への道が開いたと思います。
国際協力にも興味があって、東南アジアを横断したり、インド・ネパール・フィリピン・タンザニア・ケニアを、ひとりでバックパック旅をしました」
Q3. これまでに印象的だった出来事は?
「バックパック旅で見た、世界の食の現状が活動の根幹になっています。いちばん衝撃的だったのは、タンザニアで海外のNGOによるドネーションの現実を見たこと。
タンザニアでわたしがステイしていた現地の貧困支援のNGOでは、いつも豆とごはんの生活でした。野菜や肉、魚はほとんどなかったけど、1日3回食事ができるだけで相当恵まれた環境だと、NGOの理事が話していました。
ステイ中に、スイスのNGOから、肉や野菜など、普段の食生活では考えられない豪華な食べ物の寄付が届いた日があって。こんな豪華な食事は滅多にないと、吐くまで食べ続けてしまう子どもたちを見て、与えることの無力さを感じてしまって……。
貧困でかわいそうだから助けるのではなく、その貧困にさせているものが何なのか、わたしたちを取り巻く社会構造なのではないかを考えたときに、外国から途上国に向けられたまなざし、つまり自分が生きてきた社会にベクトルが向きました」
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Q4. 活動をする中での、苦悩や困難を教えてください。
「やはり、強い無力さです。自分がどれだけ無力なのか、どれだけ恵まれた環境で育ってきたのか、その特権を当たり前のものとして過ごしていたという事実と対面するときは、つらいなと感じます。
特に、与えることの無力さに直面したときは、どうしても涙が止まらなくて……。ケニアのスラムで出会ったおばあちゃんや、タンザニアで出会った子どもたちに慰めてもらったこともありました」
Q5. 最近始めた挑戦は?
「タンザニアで”モリンガ”という栄養価の高い植物を、学校やNGOの敷地で住民が育てて、自分の手で商いをするというプロジェクトを、タンザニアのパートナーと企画しています。
現在のフードシステムを見てみると、伝統に重きを置きすぎて、生産性が低くなったり、反対に効率を求めすぎて伝統がないがしろになったりと、バランスが整っていないなと感じます。
社会問題を解決したい、サステナブルな社会を構築したいという原動力は大事なのですが、現実にはお金がないと実現できないという問題があり、お金を生み出すこと、つまりビジネスは必須だと思っていて。伝統を重視することは必要なんですが、現実には利益が生まれるというビジネスの側面も求める必要もあって。
そういった問題を解決していくアクションをこれからも続けたいです。今後は大学院に進学して、食糧安全保障などを学びつつ、インドを中心に様々な場所で、自分の体で現実を吸収したいです」
みなのプロフィール
年齢:19歳
出身地:岐阜県
所属:上智大学総合グローバル学部、Slow food youth network Tokyo
大切にしている言葉:こころおこそうと思わばまず身をおこせ
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★note
★HP
Photo:Eri Miura
Text:Manami Tanaka