Steenz Breaking News

大気中の二酸化炭素を回収するアイスランドの空気プラント。期待が高まる一方で懸念の声も【Steenz Breaking News】

大気中の二酸化炭素を回収するアイスランドの空気プラント。期待が高まる一方で懸念の声も【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、気候危機の解決策として期待されている空気回収プラント「マンモス」について、ご紹介します。

アイスランドで始動した世界最大級の直接空気回収プラント

人類全体の差し迫った問題となっている地球温暖化。その主な原因といわれているのが、二酸化炭素です。そのため、さまざまな国や地域で、二酸化炭素を抑制するための技術開発が進められています。

アイスランドの企業『クライムワークス』が開発、運用を進めている「直接空気回収プラント」(Direct Air Capture、以下DAC)もそのひとつ。DACというのは、あまり馴染みのない言葉ですが、簡単にいうと、二酸化炭素を回収し、安全な方法で地中に貯蔵する装置のことです。

この装置を使用すると、大気中から一部の二酸化炭素を除去できます。そんなクライムワークスが、2024年5月8日、国内最大規模の直接空気回収・貯留プラント「マンモス」の稼働を開始しました。

 

View this post on Instagram

 

A post shared by Climeworks (@climeworks)

クライムワークスとしては2例目となる商用機器および施設であり、規模としては前回設置した「オルカ」の10倍にあたります。地熱エネルギーが活用され、フル稼働させると、回収できる二酸化炭素量は年間で最大36,000トンにもなるとのこと。

現時点で、二酸化炭素の回収に必要な機器72個のうち12個の設置が完了しており、最初の二酸化炭素の回収も問題なくおこなわれました。いまも年内の完成をめざして、機器の設置が進められているそうです。

「マンモス」に対しては疑問の声も

 

View this post on Instagram

 

A post shared by Climeworks (@climeworks)

炭素除去のために期待の高まる「マンモス」ですが、この手法に対して、疑問の声もあがっています。確かに二酸化炭素排出量の削減にはなりますが、「早急性や規模的な面に着目すると、気候変動対策としては不十分なのではないか」と話す専門家もいるようです。

また、海洋保護団体である「ocean care」は、マンモスが稼働する際に海水を大量に使用するために、海洋生態系に悪影響を与える恐れがあることや、DACの技術が非常に高コストであることなどを指摘しています。

その他にも、二酸化炭素の排出を防ぐうえで、再生可能エネルギーの活用が欠かせません。豊富な地熱エネルギーの恩恵を受けているアイスランドだからこそ、事実上100%再生可能エネルギーでの運営が可能なのであって、世界で展開するとなると、現段階では難しいのではないかという指摘もあります。

このようにDACプラントは、炭素回収ができる反面、専門家や環境保護団体などから、疑問の声も寄せられているのです。

賛否が別れる「マンモス」に今後も注目

大気中から二酸化炭素を回収し、地中深くに貯蔵・除去する直接空気回収プラント「マンモス」。年間、最大36,000トンもの二酸化炭素を除去できますが、同時に環境への影響や、稼働させるためのエネルギー問題など、不安要素があることも事実です。

「マンモス」は2024年の末までに、すべての機器の設置が完了します。実際に運用される中で、本当に予想どおりの成果をあげられるのか、専門家たちが指摘した問題が浮上するのかなどに注目しつつ、様子を見守りたいですね。

Reference:
Careers at Climeworks
Climeworks switches on world’s largest direct air capture plant|Climeworks
Climeworks’ “Mammoth” vacuum cleaner is not a solution to the climate crisis|ocean care

Text:Yuki Tsuruda

SNS Share

Twitter

Facebook

LINE

Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

View More