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日本のマンガ文化を世界へ!AI翻訳でマンガ作品の世界展開と海賊版の撲滅に挑むスタートアップ企業【Steenz Breaking News】

日本のマンガ文化を世界へ!AI翻訳でマンガ作品の世界展開と海賊版の撲滅に挑むスタートアップ企業【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、AIを活用したマンガ翻訳サービスを開発し、日本のマンガの世界展開に挑戦するスタートアップ企業についてご紹介します。

AI活用で日本のマンガを世界へ。多くの企業が期待をかける株式会社オレンジ

5月7日、AIを活用したマンガ翻訳事業と海外向けの電子マンガストア事業をおこなう「株式会社オレンジ」が、複数の企業や金融機関から資金調達を実施しました。その額、なんと29.2億円! これは、この企業が「プレシリーズA」というフェーズにあることを考えると、なかなか大きな金額。「プレシリーズA」とは、創業からあまり時間が経っておらず、自社製品やサービスがまだ完成していない段階にあるスタートアップ企業のことです。

このスタートアップは、AI技術を活用したマンガのローカライズ支援ツール『Factory』と、米国で2024年夏のリリースを予定しているマンガ専門の電子書店『emaqi』のふたつの事業を推し進めています。両事業の市場への展開は、これから本格化する見込みです。

製品・サービスがまだ目に見えた実績を上げていないにもかかわらず、約30億円という巨額の資金を集められたのは、ひとえに、株式会社オレンジの事業に、多くの企業が期待をしているからです。ではなぜ、同社の事業は、それほどの関心と期待を集めているのでしょうか。

日本のマンガは、世界で飛躍する大きな可能性を秘めている

理由のひとつとして考えられるのが、日本のマンガコンテンツが世界で根強い人気を集めており、市場規模が年々拡大していることです。

多くの方が既にご存じかと思いますが、日本のマンガは、海外でも高い人気を誇るコンテンツのひとつです。『NARUTO』や『鬼滅の刃』、『名探偵コナン』など、いくつもの作品が各国で翻訳され、多くのファンに愛されています。

メディア・コンテンツのマーケティング事業やプロデュース事業を手がける株式会社ヒューマンメディアが2023年12月末に発表した調査によれば、海外における日本の出版物の推計市場規模は2020年より拡大を続けて3200億円に達し、その大半がマンガの売上で占められているといいます。

また、日本貿易振興機構(ジェトロ)の「海外トレンドレポート」によれば、アメリカでは2023年時点で「第2次マンガブーム」が到来しており、ベストセラーになっているマンガの多くが日本の作品だと公表されています。

このように世界にも多くのマンガファンがいて、「日本のマンガが読みたい」というニーズが高まっているにもかかわらず、翻訳されているマンガはごく一部の作品に限られているのが現状。なぜなら、翻訳作業には多くの時間とコストがかかるため、海外で“確実に売れる”と予測できる作品しか、翻訳版をつくれないからです。

国内には約70万点のマンガ作品があるといわれていますが、現状で翻訳版がつくられ、海外で出版されているのは、たったの1万4000点。しかし、コストも時間も膨大にかかる翻訳版の作成をAIが担えるようになれば、より多くの作品を海外に届けることができるでしょう。拡大しつつある海外のマンガ市場に多くの作品を投入することができれば、相乗効果で市場はさらに広がりを見せるかもしれません。

日本のマンガは、海外でさらに飛躍する可能性を秘めており、日本経済を支える産業のひとつになる可能性がある……。そうした背景から、多くの企業が株式会社オレンジに熱いまなざしを向けているのです。

AIによるハイスピードな翻訳が「海賊版マンガ」の撲滅につながる

さらにもうひとつ、株式会社オレンジに期待されていることがあります。それは「海賊版」の問題解決です。現状のように、限られた作品の翻訳版がつくられ、正式に流通していうる一方で、違法に翻訳されてWEBサイト上などで読めるようになってしまっているのです。コンテンツ海外流通促進機構(CODA)によると、その被害額は、2022年の出版分野において、最大で8000億円を超えるほど……。

同社は今回、調達した資金を活用して、毎月500点のペースで日本のマンガを翻訳すると発表しています。さらに、2024年夏には、巨大マーケットである米国で、電子マンガ書店『emaqi』をリリースする予定です。世界で多くの人が読みたいと思っている作品をいち早く正確に翻訳し、適切に販売することができれば、海賊版の撲滅にもつながります。

これから、国内外における日本のマンガの発展に大きく貢献するであろう株式会社オレンジ。今後の動向に注目必至です。

Reference:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000125868.html

Text:Teruko Ichioka

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Teruko Ichioka

ライター・編集

フリーライター。好奇心の強さは誰にも負けない平成生まれ。得意領域もスタートアップ、ビジネス、アイドルと振れ幅が広い。

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