「気になる10代名鑑」の666人目は、山澤充希さん(17)。高校でのプロジェクト活動をきっかけに「江戸東京野菜」という東京の伝統野菜に出会い、その周知や普及に向けて活動しています。これまでの活動を通して、農業の厳しさを味わってきたと話すみっきーさんに、活動をはじめたきっかけや今後の展望について根掘り葉掘り聞いてみました。
山澤充希を知る5つの質問
Q1. いま、力を入れて取り組んでいることを教えてください。
「東京の伝統野菜ブランドとして認定されている『江戸東京野菜』を使って、商品の開発や販売をしています。
僕が通っている聖学院高等学校のグローバルイノベーションクラスでは、『イマージョン・STEAM・プロジェクト』が独自科目として設定されていて。高校2年生のときに、学校のプロジェクト活動として、『Soullume Project』という名前でスタートしました。
高校卒業後も活動を続けていこうと考えていて、今年の2月、個人事業主としての登録もしました。また、渋谷のインキュベーション施設『SHIBUYA QWS』でもプロジェクト活動として採択していただいたので、もっと盛り上げていければと思っています」
Q2. どんなアクションをしていますか?
「東京都北区で生まれた『滝野川人参』を使って、ドレッシングをつくっています。商品はすでにできあがっているので、いまはアンテナショップで販売するための準備に取り組んでいます。
江戸東京野菜は、江戸時代から栽培が始まった東京の伝統野菜の呼称で、約50種類もあるんです。しかし、都市開発が進んでいくにつれて、農地が減ってしまったり、栽培が複雑なことから作り手になる人も減ってしまったりで、生産量が年々少なくなっているのが現状です。
そんなふうに、消滅の危機に瀕している江戸東京野菜について、もっと多くの人に知ってもらいたいと思って、商品開発にチャレンジしています」
Q3. 活動を始めたきっかけは?
「特に、何か大きな出来事があったわけではないのですが、高校1年生のときに、多くの時間を過ごしてきた地元の地域について、『意外と知らないことが多いかも』と思うようになって。聖学院は中高一貫ということもあり、せっかく地元で学生生活を過ごすなら、知らないなんてもったいないし、知ったほうが楽しくなるんじゃないかと思ったんです。
いろいろと調べていくうちに、江戸東京野菜の存在を知りました。正直、東京の野菜があるなんて考えたこともなかったので、驚きました。それから、実際に生産されている農家の方とお話をする機会をいただいて、江戸東京野菜に対する想いを聞いたり、このままだと消滅してしまうかもしれないと聞いたとき、心を動かされて。
『なんとかして東京の大事な伝統を後世に残していたい』という思うようになり、このプロジェクトを立ち上げました」
Q4. 活動する中で、つらかったことは?
「取り扱っているものが、農作物ということもあり、計画どおりに進めることの難しさを感じました。どれだけ準備をしていても、天候の影響で思うようにいかなくなってしまうことも。
去年は猛暑の影響で、たくさんの人参が傷んでしまい、予定していた数の人参を仕入れることができませんでした。本当は300本ドレッシングを製造する予定だったのですが、129本しか製造できなくて。しかも、この知らせを聞いた翌日に、学校のテストがあって、メンタル崩壊の危機でした(笑)。
ただ、『1本もできないよりはましだ』と自分に言い聞かせ、家族や先生、友達に支えられながら、なんとか乗り越えることができました」
Q5. 活動を通して、実現させたい未来や社会ビジョンがあれば、教えてください。
「僕たちの商品を通して、地元への愛着が育まれたらいいなと思っています。地元って、それぞれにたったひとつしかないものだけど、地域の歴史や、地域で生まれたものについて、若者が知るきっかけはあまりない。だから、僕たちのドレッシングを入り口に、地域について考えるきっかけを届けていきたいと思っています。
ひとりひとりが地域について考えることは、新しい形の地域活性化や地域貢献につながると信じています。東京はすごいスピードで開発されているけど、その裏で失われている伝統文化がある。僕自身も、この活動を通して、興味をもったプロダクトづくりやまちづくり、まちのコミュニティ形成について、これから学んでいきたいと思っています」
山澤充希のプロフィール
年齢:17歳
出身地:東京都豊島区
所属:聖学院高等学校グローバルイノベーションクラス(GIC)2期生、個人事業Soullume、Soullume Project
趣味:サッカーをすること、サッカー観戦
山澤充希のSNS
★WEB
Photo:Eri Miura
Text:Ayuka Moriya