
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、4月27日に公開となる、圧制が続くミャンマーのいまを伝えるドキュメンタリー作品『夜明けへの道』について、ご紹介します。
ミャンマーではいま何が起こっている?
2021年2月のクーデターから3年が経過したミャンマー。現在も、民主化をめざす市民や少数民族との連携により、国軍との激しい戦闘が日々展開されています。4500人もの市民が国軍に殺害され、計約2万6000人が拘束、避難民は約230万人にのぼると、地元人権団体が公表しています。
今回ご紹介するドキュメンタリーは、ミャンマー映画界において著名な監督であるコ・パウ氏によって撮られたものです。実績も名誉もある彼ですが、2021年2月のクーデター後、抗議デモに参加したことにより指名手配犯となり、その生活は一変しました。命の危険を冒してまで民主化運動を続ける理由とは、そしてドキュメンタリー作品『夜明けへの道』を通じて伝えたいこととは、いったい何なのでしょうか。
指名手配となり家族と離れジャングルで送る日々
本作は、コ・パウ氏がクーデター以前のロックダウン期間中にSNSで発表した、コメディ作品の映像から始まります。「限定的な民主主義」であったとも表現されている、民主主義政権下の言論の自由があった時代が崩壊してしまったことを強く印象づけさせます。
「著名人である自分こそ立ち上がらなければ世界に現状は伝わらない」とデモに参加し、ヤンゴンで逮捕状が出たコ・パウは、妻子を残して隠れ家を点々とする生活をスタートします。iPhoneを中心に撮影したという逃亡や移動のシーンは、画面から緊迫した様子がありありと伝わり、逃亡生活のリアルが垣間見える貴重な映像です。
作品の後半では、民主派勢力の支配地域である国境付近のジャングルへたどり着いたコ・パウ氏が、内部での暮らしや活動の様子をありのままに伝えていきます。武器を手に取り訓練をする男性たち、無差別な焼き討ちに遭って家をなくした老人、穴を掘っただけのような防空壕で頭上に飛び交う戦闘機に怯える子どもたち。報道では知ることのできない、人々の生の声や息づかいは、胸に詰まるものがあります。
抵抗をやめて普通の生活に戻る人も
ミャンマーで映画人としての地位があるコ・パウ氏は、クーデター以前、自由な表現活動をおこなっていました。それが一変し、軍に都合の悪い情報が厳しく統制されるようになりました。抵抗の意思を示せば、軍によって投獄されたり、家族を含め命の危険にさらされたりする可能性もあるのです。
市民が弾圧される状況下で、映画関係者や芸能人たちも、次第に声を上げることを諦め、軍側に都合の良い“普通の芸能人”に戻る動きも。しかしコ・パウ氏は、「子どもや孫世代へ明るい未来をつなぐためにはもう後戻りはできない。どうしても活動を続けなければならない」と決意を語ります。
いまこそ知るべきミャンマーのこと
ジャーナリストやクリエイターだけでなく、国内で潜伏を続けながら闘う者、隣国などに逃れて闘う者など、いずれも自身の身に危険が及ぶリスクを抱えながら、祖国の革命のために発信している人はたくさんいます。一方、日本国内では、日に日に少なくなっているミャンマーに関する報道。
民主化を渇望し、戦うミャンマーの人々を通じて、「ミャンマーの現在」に注意深く関心を払い、民主主義国家である日本に生きていることの意味を再考してみませんか。
『夜明けへの道』概要
2024年4月27日(土)より、新宿K’s cinemaほか全国順次公開
監督・脚本・撮影:コ・パウ
プロデューサー:アウンミンナイン 編集:ドーナマウン メムテッウィン コ・ピョー
音楽:コ・パウ コ・ピョー 歌手:ミンモゴン コ・パウ
英題:RAYS OF HOPE 協力:北角裕樹 配給・宣伝:太秦
2023年/ミャンマー/101分/16:9/ステレオ/ミャンマー語
公式HP:https://yoake-myanmar.com/
Text:kagari