Steenz Breaking News

政府によるドラッグ非常事態宣言も。シエラレオネで流行している合成麻薬「クッシュ」の恐しさ【Steenz Breaking News】

政府によるドラッグ非常事態宣言も。シエラレオネで流行している合成麻薬「クッシュ」の恐しさ【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、シエラレオネで蔓延してる薬物、クッシュについてお伝えします。

シエラレオネの人々を蝕む新種の麻薬

6年前に誕生した合成大麻系の麻薬「クッシュ」が、シエラレオネで猛威をふるっています。毎週約10数人が死亡し、数千人が入院しているのにもかかわらず、国中で老若男女がこの麻薬を求めて、大きな問題に発展しています。ジュリウス・マーダ・ビオ大統領も、合成麻薬クッシュの使用が急増していることに深刻な懸念を表明し、緊急事態を宣言する大統領令に署名したそうです。

貧富の差をかかえるシエラレオネ

海に囲まれたシエラレオネの小さな首都、フリータウン。海を眺められる見晴らしの良い地域にお金持ちが住み、洪水などの影響を受けやすい低地にはスラム街があります。フリータウンは面積の小さい都市なので、街に出ればスラム街はすぐに目に入ります。

この国は貧困格差が非常に大きいのが特徴です。ヨーロッパ旅行に行けるほどの富豪がいる一方で、廃材で建てられた家に住み、物乞いをしてなんとか命をつないでいる人も多くいます。

シエラレオネでは、金資源をめぐった内戦が10年間にも及び、2002年に終結したばかりです。内戦中には多くの子どもが誘拐され、少年兵として働かされました。こうした少年兵の中には、戦闘への恐怖を取り除いたり、もしくは組織に依存させたりする目的で、薬物漬けにされた人も多くいるそう。また、戦争のトラウマから逃れるために、薬物をはじめる人も。

このような背景からシエラレオネでは薬物が蔓延しているといわれています。

たった30円で現実逃避できる

「クッシュ」は、ディーラーによって紙に包まれ、約30円という安価で販売されています。クッシュの生産拠点は明らかではありませんが、海外から輸入された麻薬の原材料をもとに、シエラレオネ国内で生産されていると考えられてます。

貧困格差が大きいシエラレオネで、貧困や内戦のトラウマから逃れたいと思う人々が、クッシュのような安価で手に入りやすい薬物に食いついているのです。

しかしクッシュには、首や関節の痛みをはじめとしたさまざまな健康被害や、重大な自傷行為を引き起こす可能性が指摘されています。クッシュによって手足が腫れあがってしまったり、自らを傷つけて動けなくなった若者が、フリータウンのスラムには多くみられます。また中毒性が非常に高いため、貯金のすべてをクッシュに費やしたり、売春や犯罪行為によってクッシュを購入したりする人も増えているのだそうです。

またSNSには、公務員や警察官が公然とクッシュを使用している写真や動画が出回っています。当たり前に薬物が蔓延しているという現状が、さらに中毒者を増やすという悪循環を加速させているともいえます。

求められる根本的な問題解決

このように、国家を危機的状況に陥れているクッシュですが、その対策は十分ではありません。金やダイヤモンドといった鉱物ビジネスで、シエラレオネに関与しているグローバル企業や組織は多くありますが、同国の社会問題に対するアクションは、非常に少ないのが現状です。

シエラレオネの貧困問題は深刻で、「麻薬中毒になってはいけない」「人生がダメになってしまう」と理解していても、一日数百円のために働くより、30円で「現実から逃れるほうがマシ」と考える人が多くいます。緊急事態宣言を受け、警察も売人や薬物使用者の取り締まりを強化していますが、新たな売人が生まれ続けているのが現状です。

このクッシュの猛威から人々を守るためには、表面的に取り締まるではなく、国民にとって薬物が「生きる選択肢」にならないように、環境を整える必要があるのではないでしょうか。

TextHao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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