Steenz Breaking News

思い出は眠らせておくのではなく長く活用する方向に。土屋鞄製造所が取り組むランドセルのアップサイクル【Steenz Breaking News】

思い出は眠らせておくのではなく長く活用する方向に。土屋鞄製造所が取り組むランドセルのアップサイクル【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、ランドセルを取り巻くサステナブルな取り組みについて、ご紹介します。

役目を終えたランドセルはどこにいく?

4月の一大行事といえば、入学式。新品のランドセルを背負って、入学式に向かう小学生を、街中で見かけたりしますよね。今回はそんなランドセルについてのトピックです。

「株式会社 土屋鞄製造所(以下:土屋鞄)」が、小学6年生または中学1年生の子どもの親を対象に、役目を終えたランドセルに関するアンケートを実施しました。その調査結果によると、54.2%以上の人がランドセルをリメイクしたいと思っているようです。その理由としては、「思い出が詰まったものだから」や「捨てるのが勿体ないから」といったことが挙がりました。

ちなみに、親や祖父母といった子ども以外が選んだ場合より、子どものみ、または子どもと一緒に選んだほうが、ランドセルを大切に保管したり、実際にリメイクしているようです。自分で選んだことにより、一層愛着がわいて、簡単には捨てられないのかもしれませんね。

このような理由もあり、近年では、ランドセルのリメイクサービスをおこなう企業が増えています。

土屋鞄製造所でもランドセルのリメイクを行っている

1965年に創業した老舗鞄メーカーである土屋鞄も、ランドセルのリメイクサービスをおこなっています。土屋鞄では、約200人の職人が、ランドセルをひとつひとつ手づくりしていて、これまでに累計90万本以上を生産販売しています。そんな歴史と実績をもつ土屋鞄では、2024年、第1回目のランドセルリメイクの予約受付がスタートしました。

卒業年度を問わず役目を終えたランドセルを、一般的なミニチュアランドセルはもちろん、タペストリーやフォトフレーム、ペンケース(キーチャームセット)、パスケースといった5種類の中から選びリメイクできます。オプションとして、ランドセルの名刺ポケット部分をリメイクする、「卓上カレンダー」もあるそうです。

実際に依頼したユーザーからは、リメイク後の姿に満足したことや、「遊びに夢中でつけた傷や汚れをそのまま残してくれて、かえって思いで深いものになった」などといった声が届いているようです。

ちなみに今年からは、一部の他社製品もリメイクが可能に。もしも自宅にランドセルが眠っていて、その保管に悩んでいる場合は、選択肢のひとつとして考えてみても良いかもしれません。

土屋鞄製造所ではランドセルの製造過程で出た端材にも注目

ランドセルを取り巻くサステナビリティな活動は、リメイクだけでなく、さまざまに展開しています。

例えば、ランドセルを製造するときに出る端材の有効活用。土屋鞄の「コートバン(馬革)製ランドセル」は、蓋の部分にコートバンを使っていますが、1枚の革から採れるのは1枚分のパーツのみ。それに加えて、革によって形状も異なるため、他の製品に使うこともできず、ただストックされていたそう。

このストックした端材を有効活用できないかと考え、誕生したのが、Apple Watch専用のレザーウォッチバンドです。上質なコードバンを使っているため高級感もあり、防水加工も施されています。通常、雨の日に使うことを躊躇してしまう革製品ですが、防水加工済であれば安心して使えますね。

また2023年には、江戸風鈴の老舗である「篠原風鈴本舗」と協力し、「ランドセル革短冊の江戸風鈴」を数量限定で発売しました。泡やシワを理由に使われずに眠っていた江戸風鈴に、ランドセル端材からできたカラフルな短冊を付けたものです。短冊の色は、ミントブルーやラベンダーなど「大人でも欲しくなる色」を9色選んだそう。紙の短冊とは違った雰囲気を感じられるため、音だけでなく目でも楽しめる作品となっています。

これからに期待。ランドセルのアップサイクル事業

ランドセルの保管問題を解消し、処分数減少につながるとして、注目が集まるリメイクサービス。生まれ変わらせることによって、歳を重ねても使い続けられるのはうれしいですね。

さらに、ランドセル使われている革は、もともと生き物の体の一部であったものです。そのため活用するのであれば、土屋鞄のように、製造時に出る端材にも目を向け、可能な限り廃棄を出さないように工夫することも大切です。リメイクサービスの普及と同時に、端材のアップサイクルにも着目する企業が増えていくことにも期待したいですね。

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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