去る3月17日(日)、外務省とSteenzがタッグを組んで開催した『JAPAN CLIMATE CHALLENGE LAB 2024 〜SAVE THE OSUSHI〜』。今回のテーマは、「食と気候変動」。日本人のソウルフードである“お寿司”から、気候変動という大きな問題に対して、どのようにアクションをしていけばいいか。専門家やゲストを招いたパネルディスカッション、フードロスについてのトークショーなどを行いました。
今年で第3回目となる、外務省とSteenzのイベントの様子を、2022年の初回から見届けているエディターMが、ダイジェストでレポートします。
MCはお笑い芸人 上田航平さん!ゲストにインフルエンサーひまひまさん
今回、イベントの総合MCを務めたのは、お笑い芸人の上田航平さん。そして上田さんと一緒に、お寿司から、気候変動と食の関係について学ぶのは、人気インフルエンサーのひまひまさんです。
気候変動について、どれぐらい知っているか聞かれたひまひまさん、「授業で習ったことはあるし、去年の夏の暑さがヤバかったのは覚えているけど、実際、何が起きているのかは意外とわからないかも」とのこと。なんとなくヤバいのはわかっているけど、ぶっちゃけどうすればいいの?という気候変動問題について、専門家の方にお話しいただきながら、視聴者のみなさんと一緒に、明日からできる気候変動へのアクションについて、考えていくというのが、今回のイベントの趣旨なのです。
大好きな「お寿司」が食べられなくなる未来が到来する!?
オープニングでは、今回のテーマが「お寿司」であることから、寿司職人が「お寿司と気候変動問題の関係」について語ります。動画に出演してくれたのは、「恵比寿 えんどう」の遠藤記史さん。10代で海外留学した際、日本の魚食文化の豊かさに気づき、鮨職人の道を志したそうです。
「生食で魚を食べる」という日本独自の食文化をこれからも守っていきたいと話す遠藤さんですが、その道を阻んでいる問題こそ、気候変動問題。温暖化による海水温、水質の変化によって、これまで獲れていた魚が獲れなくなっているだけでなく、お寿司に使われる海苔にまで影響があるそう。
動画を見た気候変動の専門家、江守正多さんは、遠藤さんが指摘したお寿司に代表されるように、「食」と気候変動問題というのは、かなり深くかかわっていると強調します。なぜなら、地球温暖化の原因である、温室効果ガス排出量の1/3を占める分野こそ、「食」に関連しているから。
そこで、「そもそも気候変動ってなにが起こっているの? どれぐらいヤバいの?」という、今さら感があって、なかなか聞きづらい気候変動の基本情報について、改めて江守さんに解説してもらいました。
よく聞く”食品ロス”をおさらい。わたしたちが捨てた食べ物はどこに行く?
イベントの第2部でおこなわれたのは、「食品ロスの今」と題したトークセッション。ここからは、食品ロス問題の第一人者の井出留美さん、日本フードエコロジーセンターの高原淳さんにも参加してもらい、食品ロスと気候変動の関係についてお話を伺います。
井出さんからは、「そもそも食品ロスって?」という基本情報から、日本の食品ロスの実態が世界の先進国と比較して遅れをとっている統計が示されました。こうしてロスされた莫大な食品の処理に、毎年、2兆円以上もの税金が使われているなんて、知りませんでした。
続いて、お話しいただいたのは、食品メーカーや飲食事業者によって捨てられてしまった食品廃棄物を回収し、安全な飼料に変える画期的な取り組みをしている、日本フードエコロジーセンターの高原さん。高原さんの説明に先立って、事前に日本フードエコロジーセンターを見学してきたひまひまさんのレポート動画が紹介されました。
捨てられた食べ物のリアルを目の当たりにしたひまひまさんは、「まだ全然食べられる状態のものが、トラックで運ばれてきたことがいちばん驚きました」とコメント。そんな「まだ食べられるけど、なんらかの理由で捨てられてしまった」食べ物が集まる、日本フードエコロジーセンターでは、これらを家畜用の飼料にアップサイクルする取り組みがおこなわれています。見学も受け付けているようなので、気になった方はサイトをチェックしてみてください!
くら寿司も注力!企業による先進的なチャレンジのプレゼンテーション
ここまで第1部、第2部と、専門家の方々からのインプットを踏まえて、第3部では、「なくそう、食品ロス!気候変動のために私たちができること」というテーマのもと、直面している気候変動に対して、どのように立ち向かい、どのようなアクションをとっていうべきかを考えるディスカッションがおこなわれました。
また、第3部にはこれまで登壇いただいた専門家の方々に加えて、くら寿司広報宣伝・IR本部⻑の岡本浩之さん、株式会社コークッキング(TABETE)の代表取締役CEO・川越一磨さん、そして、Steenzの「気になる10代名鑑」にも出演した、株式会社Soffione代表取締役社長の薄井華香さんにも参加いただき、食の現場で最前線に活動する実践者と一緒に、ひとりひとりができるアクションを考えました。
はじめに、お寿司が食べられなくなる未来に、日本を代表するお寿司チェーン店「くら寿司」はどう向き合っているのでしょうか。くら寿司の岡本さんにお話ししてもらいました。岡本さんによると、くら寿司では主に3つのアクションを通じて、お寿司を長く食べ続けるための取り組みを実践しています。3つのアクションの詳細は、動画の2:02:40〜あたりをぜひチェックしてみてください。くら寿司の人気ネタランキングも明かされていますよ。
テクノロジーの力を借りている部分もあるそうですが、いちばん大切にしていることは、地元の漁師さんとのコミュニケーションであると岡本さんは言います。全国に500店舗以上のお店を構えるくら寿司が、ローカルな視点を持って事業をおこなっていると聞いて、薄井さんも「生産者の顔が見えるコミュニケーションは大切ですよね」と、自身が経営する飲食店の実体験と照らし合わせながら、うなずきます。
続いて、フードシェアリングサービス『TABETE』を運営する、株式会社コークッキング(TABETE)の川越さんから、1回1回の食事に、もっと丁寧に向き合うことができるのではないか、という問いが投げかけられました。寿命を80年、1日に3食食べると仮定すると、人間が一生のうちに食べる食事の回数は、およそ87,600回。しかし、忙しい現代では、食が作業化しがちだったり、安ければいいと捉えられてしまったりすることが多い層。
そんな中で、川越さんはつくり手と食べ手の間に、新たなかたちの関係性を構築し、食業界の持続可能性の再定義をすべく、フードシェアリングサービスというかたちで食品ロス削減に向けたチャレンジをおこなっています。『TABETE』は、まだおいしく安全に食べられるのに、「食品ロス」になってしまいそうな食事をレスキューできる飲食店と、消費者をつなぐプラットフォームです。
実際に『TABETE』を使用してみたひまひまさんも、「食品ロスを減らしているのに自分が楽しく貢献できているのが素敵。『TABETE』をきっかけに、新しいお店を知ることもできて、ついアプリを開いちゃいそう」とすっかりお気に入りのようです。
明日から、いや、今日から何ができる?お寿司を救うために、わたしたちにできること
ここまでそれぞれのユニークな取り組みを聞いて、さまざまな意見や質問が飛び交いました。また、視聴者からもさまざまなコメントが寄せられるなど、議論は尽きません。そんな中、イベントも終盤ということで、1日を通しての感想として、ひまひまさんに聞いてみると「今回、さまざまな企業の取り組みや食品ロスの現状を知ることができて、とても勉強になりました。だからこそ、1回1回の食を楽しみながら、未来の食について考えていきたいです」とコメント。
MCを務めた上田さんは「いま、地球上で起きている気候変動のことを知ったうえでお寿司を食べることも、小さな、大きな一歩につながるのかもしれませんね」とイベントを振り返ってくれました。
イベント全編はYouTubeで公開中!
大盛況のうちに幕を閉じた、JAPAN CLIMATE CHALLENGE LAB 2024〜SAVE THE OSUSHI〜。イベントの模様は、外務省気候変動課の公式YouTubeチャンネルで視聴いただけます。見逃したという方は、ぜひご覧ください!
Text:Ayuka Moriya