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世界で報道されないコンゴ紛争。 アフリカ杯での選手ジェスチャーからコンゴ民主共和国のいまを知る【Steenz Breaking News】

世界で報道されないコンゴ紛争。 アフリカ杯での選手ジェスチャーからコンゴ民主共和国のいまを知る【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、コンゴ民主共和国で長年起きている紛争について紹介します。

知っていましたか?サッカー・アフリカ杯でのコンゴ民主共和国代表のジェスチャー

現在、開催中のアフリカネイションズカップ。その準決勝である、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ民)とコートジボワール戦との試合で、コンゴ民チーム代表選手のパフォーマンスが注目を浴びました。選手たちは、国歌斉唱の際、右手で口を覆って、左手で銃の形をつくり、こめかみに当てるジェスチャーをしたのです。

日本ではあまり報じられることのなかったこのニュースですが、これはいまもコンゴ民で起きている、静かな大量虐殺を象徴したジェスチャーなのです。この国で、いったい何が起きているのでしょうか。

そもそも、コンゴ民は、世界で11位の面積をもつ大国で、コバルト、銅、ダイヤモンド、金といった鉱物の世界有数の産地です。わたしたちが日本で購入するほぼすべてのスマートフォン、PC、電気自動車などに、コバルトは使われていて、世界のコバルト供給量の60%以上が、この国から産出されています。

しかし、そんなわたしたちの生活と密接な関わりを持つ鉱物資源をめぐり、多くの命が犠牲になっているのです。これを理解するためには、コンゴ民の歴史を振り返り必要があります。

世界の思惑に操られるコンゴ民主共和国

コンゴ民主共和国は、1960年にベルギーによる植民地支配から独立。しかし、独立直後から動乱が勃発したり、クーデターが発生したりなど、政治的に不安定な状況が続きました。そして90年代に入ると、経済危機と政治的混乱が激化し、1996年には第一次コンゴ内戦が勃発。1997年には反政府勢力が隣国のルワンダとウガンダ支援を受けて内戦に勝利し、その指導者が大統領に就任しました。

しかし、新大統領の方針に不満を抱いた東部地域のルワンダ系住民の勢力が1998年に蜂起し、第二次コンゴ内戦が勃発。この内戦は長期化し、国土の半分以上が反政府勢力の支配下に入りました。

2002年に和平合意が成立し、2003年には内戦が終結。しかし、その後も和平プロセスは順調に進まず、東部地域では和平合意に参加しなかった勢力が武力闘争を続けました。武装解除や軍の統合への反発もあり、紛争は続いています。

現在、国内には120から140もの武装勢力が存在しており、各地で襲撃が頻発しています。こうした武装勢力は、コバルトなどの鉱物資源の採掘や密輸によって資金を得ていて、紛争鉱物の取引は大きな問題となっています。

コバルトは、電子機器の生産のために非常に重要な資源。そんな中、ルワンダやウガンダが、欧米がコンゴ民の資源へのアクセスを確保するための仲介役を担っていると非難されています。

現在、鉱物資源が豊富な東部地域では、紛争が激化しており、武装勢力による虐殺も起きています。また。ルワンダは東部で活動する「M23」という武装勢力を支援していると国際的な批判を受けていますが、同国は否定しているそうです。

長期化する紛争。忘れ去られる命

コンゴ民では1998年以降、現在にいたるまで、戦争によって540万人が亡くなりました。

虐殺や戦争は世界各地で起きており、ガザでは2.3万人以上が亡くなりました(1月12日時点)。世界の注目が、ウクライナ戦争やガザでの軍事衝突に集まる反面、コンゴ民で起きている紛争には、十分な関心が向けられていない現状にあります。

このような虐殺や他国の関与に対して、抗議活動が広がっています。冒頭に紹介したアフリカカップだけでなく、イギリスやアメリカ、カナダ等でも抗議活動は広がっています。

誰かの犠牲の上に成り立っている豊かさ

同国では600万人以上が国内避難民となっているほか、1月以来、再び衝突が激化し、新たに数十万人が避難を余儀なくされています。この背景には、国民の富になるはずの資源が、国民の命を奪う兵器と化しているという、悲しい現実があります。

わたしたちが便利に、そして豊かな生活を送るための過程で、失われている命があるということに、もっと目を向ける必要があるのではないでしょうか。

References:
DICF「Description」
UNCTAD「Critical Minerals and Routes to Diversification in Africa: Opportunities for diversification into Mobile Phone Technologies – The Case of Democratic Republic of Congo」
USHMM「Democratic Republic of the Congo, 1996–Present」
OXFAM「Daily death rate in Gaza higher than any other major 21st Century conflict – Oxfam」
ALJAZEERA「A guide to the decades-long conflict in DR Congo」
BBC「DR Congo protests: Police fire tear gas to disperse anti-Western demonstrations in Kinshasa」
The Associated Press 「Congo players protest before Africa Cup game against armed violence in their country」
World Vision「コンゴ難民の現状:紛争の歴史やムクウェゲ医師の活動、支援状況を解説」
外務省「コンゴ民主共和国基礎データ」

TextHao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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