「気になる10代名鑑」の642人目は、ふなおりんさん(18)。高校時代に演劇の衣装制作の魅力に気づき、文化服装学院に進学しました。「自分で自分を好きになること」をテーマにファッションと向き合っているというふなおさんに、活動のテーマや今後の目標について聞いてみました。
ふなおりんを知る5つの質問
Q1.プロフィールを教えてください。
「広島県から上京して、いまは文化服装学院で、ファッションの勉強をしています。
もともと父がビジュアル系のロックバンドをしていて。その影響で、80年代のバンドファッションが好きになって。わたしは内気な性格なのですが、お気に入りのアイテムを身につけていると、自分に自信がもてるんです。そこから、自分でも服をつくってみたい、ファッションを突き詰めてみたいと思って。両親にプレゼンをして、文化服装学院に進学することを決めました。
ものすごい量の課題があるので、日々それに追われていますが、休みの日を使ってでも、自分の納得のいく作品づくりをしています」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「高校で演劇に出会ったことです。演劇というと、役を演じる演者のイメージしかもっていなかったのですが、照明や音響、衣装デザイナーといった、裏方の舞台スタッフの存在も、演者と同じくらい大きいんだって知って。みんなの力がうまくかけ合わさって、ひとつの演劇になることに、衝撃を受けました。そこから演劇部に入部し、衣装や照明に熱中していました。
昔から、人と被らないものやオリジナリティがあるものが好きで。特に、古着のような一点ものが好きなんです。演劇では、“役のために用意された、その人だけの服”というところに魅了されていて。自然と、「自分の手で衣装をつくってみたい」と思うようになっていました」
Q3. どんなことをテーマに、活動していますか?
「いまの社会は、まわりからの評価や社会通念みたいなものに縛られていて、息苦しいと思うことがあって。わたし自身もパンセクシャルという、性別にとらわれずに人を愛するセクシュアリティで、世の中の“当たり前”には、違和感を感じるときが多いんです。だから、まずは自分で自分を好きになることを大事なテーマにしていて。
いま制作している服も、『女性は赤』『男性は青』といった、無意識にインプットされている固定観念を表現しているんです。ほかにも、ボディラインをあえて強調するデザインと、パーツを縫い合わせて体を覆うデザインを組み合わせてみたり。外見の悩みやコンプレックスを隠すのは、ネガティブなことじゃないって思っていて。自分を認めて、好きになるための行為なんだ、ということを伝えていきたいです」
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Q4. 最も影響を受けた人物は?
「デザイナーのジャン=ポール・ゴルチエ氏を尊敬しています。中学生のときにコレクションを見てから、ずっと大好きなんです。
華やかな上品さと、体型やセクシュアリティを問わないヌーディさが、美しく両立していて。どんな体型であっても、みんなにファッションを楽しむ権利があるはず。ゴルチエ氏のファッションセンスは、そんな当たり前で尊いことに、気づかせてくれるんです」
Q5. 今後の目標は?
「舞台衣装をつくる衣装デザイナーになるのが目標です。着る人に似合っていて、役を表現できている……そんなオリジナルの衣装をつくりたくて。
最近だと、日本の伝統文化にも興味があります。広島から上京してホームシックになったとき、地元の演舞を思い出すことがあって。そのとき、色鮮やかで個性的な衣装や仮面も、舞台衣装の一種だと気付いたんです。日本人ならではの感性や文化を盛り込んで、価値を再発見させるようなデザインにも取り組んでみたいです」
ふなおりんさんのプロフィール
年齢:18歳
出身:広島県広島市
所属:文化服装学院 ファッション工科専門課程 ファッション高度専門士科
趣味:観劇、映画鑑賞、古着屋めぐり
特技:人前で話すこと
大切にしている言葉:未知生、焉知死
ふなおりんさんのSNS
Photo:Eri Miura
Text:Chihiro Bandome