Steenz Breaking News

病気も犯罪も、ぜんぶ魔術のせい?アフリカでいまも「魔女狩り」がなくならない理由とは【Steenz Breaking News】

病気も犯罪も、ぜんぶ魔術のせい?アフリカでいまも「魔女狩り」がなくならない理由とは【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカでいまも魔術が信仰されている背景について紹介します。

魔女狩りの犠牲となる女性たち

アフリカの多くの国で信仰されている魔術。例えば、癌を患ったり、強盗や暴行といった事件に遭ったりしたことも、それが魔術に寄るものだと信じている人も少なくありません。

先月23日には、西アフリカに位置するギニアビサウ共和国で、いわゆる「魔女狩り」がおこなわれ、8人の女性が殺害されるという事件も発生しました。「魔術を使った」という疑いをかけられておこなわれる残虐な犯罪であり、多くの場合、被害に遭うのは、力の弱い女性です。

なぜいまもなお、このように魔術が信じられ、信仰されているのでしょうか。その理由と、そして現代社会に与えている影響について説明します。

医者や政治家より信仰される呪術師

「魔女狩り」は、15世紀から17世紀ごろ、欧州で伝染病や天災が起きた際に広まったのが契機であるとされています。当時、原因不明な不幸な出来事が起き、その混乱の中で、多くの女性が魔女と疑われて拷問を受け、殺害されました。

欧州ではその後、科学的思考や、法治国家といった概念の浸透とともに魔女狩りは衰退しましたが、ガンビア、トーゴ、カメルーン、タンザニアなどアフリカの多くの国では、いまでも「アニミズム」と呼ばれる伝統的な精霊信仰が根強く残り、その影響からか、魔女狩りが習慣として残存しているそう。サハラ以南アフリカでは、毎年、数千人が魔女狩りによって命を落としているという調査もあるほどです。

実際には、呪術師や祈祷師によって、特に根拠もなく「魔女」に認定され、迫害行為を受けます。わたしたちの文化や社会では、まったく信憑性がないことにどうしてここまで強制力がはたらくか、疑問に感じる人もいるかと思いますが、アフリカの国々では、医学や政治を信頼していない人も多くおり、呪術師や祈祷師がいまだに支持されているのです。

機能していない司法

しかし実際は、個人間のトラブルや財産問題が、魔女狩りに大きく影響しているといわれています。例えば、畜産農家が泥棒に遭って、牛を盗まれたとします。そうすると、被害にあった畜産農家が財産を奪い返すために呪術師を通して、泥棒の犯人の家族や妻に対して魔女の嫌疑をかけ、恨みを晴らしているのです。

このように、恨みを晴らす方法として使われているといっても過言ではない「魔女狩り」。こうした惨劇が繰り返されるのは、司法に問題があるからと考えられています。昨年、魔女狩りによって90歳の女性が暴行を受けて死亡したガーナでは、同年にはじめて「魔術を理由に暴行するのは犯罪」という法案が成立しました。国際社会からの批判を受けて、ようやく成立したものではありますが、こうした法律があっても、実際には司法が機能しているとはいえない状況だそう。

例えば、何か事件が起きて、生命や財産に危険が及んだとしても、それに関与している人が多い、村長の関係性が近いなどの理由で、正しく捜査されることが少なかったり、裁判を起こす費用が高額すぎて工面できなかったり、農村部にはそもそも裁判所がなかったりする背景から、ハードルの高い司法よりも、どの地域にも存在する呪術師を頼るのです。

アフリカ文化に根強く残る魔術

宗教や信仰と社会システムが分離している日本人からすると、あまり現実味のない話かもしれませんが、米国のシンクタンクの調査では、タンザニアの国民の93%が、いまも魔術を信じているという調査結果も出ています。さらにアフリカ諸国では、魔術だけでなく、スピリチュアルの力も強く信じれています。こうしたものが文化的に継承されてきたことから、「魔術」の存在を背景にした「魔女狩り」などの事件や暴力を完全になくすことは容易なことではありません。

しかし、その信仰や文化を背景に、多くの罪のない人が、命を奪われてきたという歴史があります。アフリカの文化や多様な宗教は、アフリカ社会を形成しているもので、保護されるべきですが、魔術によってさまざまな被害が出ていることは、もっと世界に周知されるべきでしょう。

References:
GENDERCIDE「Witch-hunts in contemporary sub-Saharan Africa」

TextHao Kanayama

SNS Share

Twitter

Facebook

LINE

Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

View More