世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日はウガンダ在住のライターが、アフリカの人たちが実際にどんな仕事をしているか、身の回りの働く人々にインタビューした内容をお伝えします。
多様化するアフリカにおける職業
アフリカに住む人々の職業というと、何を思い浮かべますか? 農業や漁業といった、一次産業を思いつく人が多いのではないでしょうか。
国連の調査によると、筆者が暮らすウガンダでも、人口の70%が農家として働いているそうです。しかし近年、経済の発展に伴って、職種も多様化しています。 大企業は少ないため、日本でいう「サラリーマン」の数は少ないですが、主に販売業などにおける個人経営者は多くいます。他には、学歴がなくても成功するチャンスがある「アーティスト」や「ダンサー」を職業にしている人も。
そこで今回は、筆者のウガンダの友人に、仕事についてインタビューしました。
Tembea Kampala Walking Tourを運営するMiti Kinaawolaさん(29)
29歳のMiti Kinaawolaさんは、ウガンダの首都・カンパラの生まれで、ウォーキングツアーのガイドとして働いています。ウガンダを訪れる観光客の多くが、パッケージされたサファリツアーやスタディツアーに参加する中、彼のウォーキングツアーは、ローカルな雰囲気を感じることを目的に、街を歩きながら探索します。
以前はソーシャルワーカーとして働いていたそうですが、自分の替わりがいる仕事ではなく、自分にしかできないことをしたいと思い、ガイドの仕事を始めたそうです。
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パッケージになった従来のツアーでは、空港からホテル、サファリまで送迎付きなので、アフリカは「どこもかしこも大自然と動物だらけだった」という感想をもつ人も少なくないのだそう。しかし、市街のスラムに一歩入ると、乗り物に乗っていだけでは知り得ない独特の雰囲気や匂い、ローカルのエネルギーに触れることができます。
だからこそ、Mitiさんのツアーには、ウガンダの豊かさも貧しさもカオスも、すべて盛り込んでいるそう。外国人が行くにはハードルの高いスラムや人がごった返すマーケットへの訪問を通して、ツアーの最後には「ローカルの一部になった」と感じてもらうことをめざしているそうです。
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また参加者も、ガイドが教えてくれたことをただ聞くだけになってしまうことが多いですが、彼のツアーでは「自由になんでも話し合える環境を整える」ことに注力しているのです。そのため、参加者は、現地ガイドやローカルとのさまざまなコミュニケーションを通じて、自発的に学ぶことができるのだそう。
アフリカ諸国では、政治や特定のトピックがタブー視されていて、特に反同性愛法が制定されたウガンダでは、ジェンダー問題については、話しづらい風潮があります。安全な環境をつくることで、そういったセンシティブなトピックも、ツアー内で自由に発言することができるのだそう。こうした「ガイド」だけではなく、参加者と同じ視点に立って、ひとりの人間として会話のキャッチボールを重ねることは、彼自身のアイデンティティ形成にもつながっていると語ってくれました。
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今後の目標を聞いてみると、「事業を大きくして、若い人をガイドとして雇いたい。また、アフリカに来てくれる外国人が、ローカルコミュニティに良い還元をもたらしてくれるような環境をつくりたい」と答えてくれました。
アフリカの実情を知らずに、経済的な援助をしようとしても、現地の生活や文化を理解していないために、うまくいかなかったり、間違った方向に進んでしまったりすることもあります。アフリカを訪れる外国人の多くは、国際協力に関心があるからこそ、そうしたマイナスを軽減するために活発に議論したり、理解を深める場としてツアーを活用してほしいとも話していました。
歩くからこそ感じられるローカルな雰囲気
アフリカの「ツアー」というと、大きな車でサファリを案内するパッケージツアーを思い浮かべることが多いのではないでしょうか。しかし、Mitiさんの「わたしたちには足があるじゃないか」という言葉はとても印象的でした。ソーシャルワーカーとしてコミュニティ援助を経験した彼だからこそ、自分のツアーガイドという仕事を通じて、またコミュニティに還元したいという想いがあるのだと思います。
このように、アフリカ人の「仕事」といっても、その実態は多種多様で、モチベーションや問題意識もさまざまです。これからも、こうした一般のアフリカ人のリアルな姿やインタビューを通して、アフリカの実情について、レポートしていきたいと思います。
References:
Food and Agriculture Organization of the United Nations「Family Farming Knowledge Platform」
Text:Hao Kanayama