世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、CO2を削減する野菜「宙べジ」についてご紹介します。
農業におけるサステナビリティとは
わたしたちの生活にとって、切っても切り離せない産業である農業。近年、地球環境や生物多様性の保護を重視しながら、温室効果ガスの排出を削減する手段として、農業に注目が集まっているのです。
農林水産省によると、世界の農業部門の温室効果ガスの排出量は、世界の排出量全体の1/4を占めています。あまり知られていませんが、農業部門では意外と多くの温室効果ガスが排出されているのです。また、日本の農林水産部門の排出量は、全体の約4%にあたる約5,001万トンでした。
その約4%の排出量の内訳を見ると、約39%が農地由来で発生していることがわかります。こうして実際の排出量を確認してみると、農業とCO2の関係が少し見えてきたのではないでしょうか。
カーボンニュートラルな農業のために求められるアクション
では実際に、農業分野において、CO2はどのように発生するのでしょうか。主な原因として、農機や農業施設等における化石燃料使用や、肥料利用によって土壌の微生物が反応を起こすことなどが挙げられます。
そして、こうした問題に対して、最新のテクノロジーを取り入れた農業の効率化や、土壌の適切な管理を実施することで土壌にCO2を固定する方法、さらに農業機器のEVシフトなどの取り組みが、国内外で始まっています。また、そうした新しい農業で生み出された生産物が、市場に出回ることも、少しずつ増えてきています。
食べるだけでCO2が削減される宙べジ
そのひとつが、サステナブルな農業を前進させる「宙べジ(そらべジ)」です。名古屋大学発のスタートアップ企業、株式会社TOWINGによって、「農業のサステナビリティを向上することで、人が宇宙で暮らし始めると言われる20年後、30年後、さらには1000年後の未来においても、おいしい野菜をどこでも食べられるような世界を作りたい」というミッションのもと、開発されました。
例えばこちらのピーマン。見た目は何の変哲もありませんが、食べれば食べるほどCO2が吸収されるという画期的な野菜なのです。その秘密は「炭素固定」と呼ばれる農法を使用した土にあります。宙べジの土には、炭素を農地に固定する効果を持つ植物の炭由来の「高機能ソイル」が採用されていて、苗ひと株あたり200gのCO2を削減することが可能だそうです。
廃棄・焼却されるはずだった植物残渣の炭化物を材料として使用していることから、炭素の固定・吸収効果も期待できます。また、苗のポット部分は、土に還すと苗ひと株あたり150gのCO2削減を可能にするのだそう。今後、宙べジが広がっていけば、さらにCO2削減も進み、農業におけるカーボンニュートラルに近づいていくはずです。
農業に求められる持続可能性
農業というのは、自然に近い産業なので、あまり環境負荷が意識されてにくいかもしれません。そのため、農業をめぐるCO2の問題は、まだまだ認識が広がっていないのが現状です。
今回ご紹介した「宙べジ」のようにサステナブルな農業を実現するための取り組みは、実はさまざまなところで進んでいます。みなさんも、農業の持続可能性について考えてみてはいかがでしょうか。
Text:kagari