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イリオモテヤマネコの無事故日数が410日を達成。西表島で問題となっているロードキル問題を考える【Steenz Breaking News】

イリオモテヤマネコの無事故日数が410日を達成。西表島で問題となっているロードキル問題を考える【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、西表島で起きている野生動物の「ロードキル問題」について、ご紹介します。

イリオモテヤマネコの無事故日数が410日を達成

島のほぼ全体を亜熱帯性の植物が覆い、付近の海では美しいサンゴ礁が見られる、沖縄県八重山郡竹富町に属する西表島。カンムリワシやオカヤドカリ類などといった、希少な動植物が暮らす地域としても知られていて、2021年には世界自然遺産にも登録されました。

西表島の希少動物といえば、イリオモテヤマネコ。西表島の固有種であり、交通事故や生息地の消失などによって個体数が減少しているネコ科の動物です。絶滅危惧種にも指定され、レッドリストにも掲載されています。多様な動植物が生息する西表島では、以前から野生生物、とくにイリオモテヤマネコのロードキル(交通事故)が問題となっていました。

そのような背景もあり、近年西表島では事故防止の取り組みを強化しています。その結果、事故発生件数が減少し、2023年12月23日には無事故日数が365日を達成したと、西表島にてホテルを運営する星野リゾートが発表しました。筆者が2024年2月6日に確認したところ、無事故はそれからも続き、410日連続無事故を達成しています。

西表島で起きているイリオモテヤマネコのロードキルの現状

1978年から2023年1月までに起きた、イリオモテヤマネコの交通事故発生件数は101件。そのうち、93件で死亡が確認されています。この数字から、一度事故が起きると、イリオモテヤマネコの命を助けることが、どれほど難しいことかがわかります。

事故発生の原因としては、イリオモテヤマネコの生息地と西表島唯一の幹線道路が重なっていることや、観光客が運転するレンタカーやツアー送迎車の増加などが挙げられます。道路を横断する蛇やカエルが車に轢かれてしまい、それらを狙ったイリオモテヤマネコが飛び出してきて、自動車と衝突することもあるそう。

また、季節も関係しており、春は子育て中のイリオモテヤマネコのメスが、夏には成長した子ども、そして冬になると、発情期のオスが活発になるため、それぞれ事故に遭う確率が高くなることがわかっています。

事故発生件数を減らすために島内で行われている取り組み

西表島の人々は、環境省などとも連携して、こうした事故原因をふまえた対策に取り組んでいます。

例えば、イリオモテヤマネコの生息地を常に把握できるように、自動撮影のモニタリング調査を行ったり、目撃情報を収集したりしています。また、西表野生生物保護センターでは、集められた目撃情報から「イリオモテヤマネコ運転注意マップ」を毎月発行しています。

西表島の土地勘がなかったり、イリオモテヤマネコの生態に詳しくないという観光客でも、こうしたマップを見ることによって意識が高まり、ロードキルも防ぎやすくなるはずです。

また、星野リゾートが運営する「星野リゾート 西表島ホテル」では、宿泊客向けに、イリオモテヤマネコの保護を目的としたプログラム「イリオモテヤマネコの学校」を開催しています。このように西表島では、ロードキルを減らすために多様な取り組みがおこなわれているのです。

ひとりひとりが気をつけることによって生態系の保全につながる

イリオモテヤマネコの対策のように、野生動物のロードキルは、ひとりひとりが気をつけることによって防げることも多いです。また、日本にはイリオモテヤマネコ以外にも、アマミノクロウサギやヤンバルクイナなど、絶滅の危機に瀕している生きものたちがいます。各地域の問題だと自身から切り離すのではなく、興味をもち、自分ごととして考えてみましょう。

Reference:
西表島について|西表野生生物保護センター
希少な生きものを守るために|西表野生生物保護センター
イリオモテヤマネコの交通事故|西表野生生物保護センター
イリオモテヤマネコ|環境省
いきものログ|環境省

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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