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南アフリカで増加する誘拐事件。外国人が狙われやすい理由とは?【Steenz Breaking News】

南アフリカで増加する誘拐事件。外国人が狙われやすい理由とは?【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、深刻化する南アフリカでの誘拐問題についてお伝えします。

過去10年で誘拐事件の発生数が倍増

アフリカ大陸の最南端に位置する国、南アフリカ共和国。近年、治安悪化が懸念されていて、日本の外務省でもほぼ全土で、2023年4月からリスクレベルを引き上げました。そんな南アフリカでは、誘拐事件が急増しています。外国人、特にアジア人を狙った誘拐も増えているそう。では、なぜ誘拐事件が増えているのでしょうか。

南アフリカ警察庁(SAPS)によると、過去10年間での誘拐件数は、200%近く増加しました。2022~2023年の南アフリカにおける誘拐事件の総数は、なんと15,343件にものぼります。誘拐のはほとんど決まっており、仕事に行く途中や出掛けている最中に拉致されてるというもの。身代金が払われるまで拉致被害者は拘束され、場合によっては交渉成立まで、長期間拘束されるケースもあるようです。

日本で「誘拐」というと、テレビで中継されるなど、大規模な事件を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし南アフリカでは、意図的に富裕層でない人を狙う「小規模で手っ取り早い誘拐」が増えています。特に、インド人やバングラデシュ人などの、現地に長年暮らして小規模事業を営んでいる人をターゲットにすることが多いのです。

こういった事件は小規模なギャングによって引き起こされることが多く、40万〜400万円ほどを身代金として要求します。件数も多いうえに、身代金が支払われて解決するケースも少なくなく、大規模な事件に発展しない場合がほとんどです。

生きる手段としての犯罪

そもそも、なぜこのように誘拐事件が頻発するのでしょうか。そのひとつに、高い失業率があると考えられています。

世界銀行によると、人口のほぼ半数を占める2,100万人の若者のうち、3分の2が失業状態にあると報告されており、そうした失業率や貧困率の高さから、南アフリカには犯罪組織が多く存在しています。将来に希望を持てない若者が、「手っ取り早く大金を得る」方法として、誘拐をはじめとした犯罪行為に関与していくのです。

アパルトヘイトが残した負の遺産

南アフリカの犯罪率の高さを考える上で切り離せないのが、アパルトヘイト(人種隔離政策)です。アパルトヘイトは1994年に廃止されましたが、その影響はいまでも続いています。アパルトヘイト時代、集団居住地法によって、白人は経済都市で暮らし、その一方で黒人は鉱山といった危険な地域の近くにのみ住むことが許されていました。

アパルトヘイト廃止から30年の月日が経ちましたが、白人政権が設けた最大の黒人居住区だったソウェトには、いまもなお、バラック小屋やテントの家が多く並んでいます。筆者がソウェトに滞在していた際も、見かけた住人は全員黒人でした。彼らは非常に厳しい環境で生活しており、貧困から抜け出すことも、なかなか難しいのが現実です。

改善が急がれる犯罪率の高さ

南アフリカ警察庁は2021年、急増する誘拐に対応するために、誘拐対策チームを設立しました。しかし、南アフリカにはびこるこうした犯罪組織は、国際犯罪組織として巨大化しているケースもあり、その取り締まりは困難を極めます。

アパルトヘイトの負の歴史の傷は深く、その背景には、人種による経済格差があります。政府や警察庁は、組織解体に向けた専門の捜査をおこなうとともに、容易に犯罪に走ってしまう社会的構造を改善させる必要があるでしょう。

References:
Statista「Number of kidnappings in South Africa in 2022/2023, by province」
THE AFRICAN CRIME & CONFLICT JOURNAL「South African kidnappings for ransom increase at an alarming rate」
World Bank「Strenghthening」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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