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ケニアのカルトで400人以上が餓死。 アフリカでカルトがはびこる理由【Steenz Breaking News】

ケニアのカルトで400人以上が餓死。 アフリカでカルトがはびこる理由【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカにおけるカルトの実態と、その勧誘の手口についてお伝えします。

アフリカの宗教事情とは

信心深い人の多いアフリカ。「Statista」のデータによると、サハラ以南のアフリカに住む人口の65%がクリスチャンで、32%がムスリムとなっており、大部分を占めています。

そんな中、懸念が深まっているのが、カルトの存在です。カルトとは、非常に多様な意味を持つ言葉ですが、一般的には、特定の対象を熱狂的に崇拝したり礼賛したりする行為や、その集団のことを指します。その特徴としては、絶対的な忠誠の強要、家族や友人との交流の制限、高額な献金の強要などがあげられます。

日本でも、「地下鉄サリン事件」を起こしたオウム真理教や、献金問題が国会などでも取り上げられた旧統一教会などの報道で、「カルト」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

ケニアにおける大量餓死事件

カルト集団は、アメリカだけでも1万以上存在すると言われていますが、世界中に至るところに存在し、アフリカも例外ではありません。

2023年4月には、ケニア南東部マリンディ近郊の森で、400名以上のカルト集団の信者が餓死したことが、ニュースで大きく取り上げられました。教祖のポール・マッケンジー容疑者は、「餓死すればキリストに会える」と主張し、信者に断食をはじめ、会社や学校を辞めることを指示したというのです。

 

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ナイジェリアでの奇跡ビジネス

また、ナイジェリアでは、「アフリカで最も影響力のある伝道師」とされるT・B・ジョシュア氏が、信者にレイプや拷問していたことが明らかになり、社会に大きな衝撃を与えました。ジョシュア氏は預言者を名乗り、「HIVや癌を完治できる」「障害者が車椅子から立ち上がれる」といった「奇跡の治療」ができるとして、テレビやYouTubeで有名になり、その信者は世界中にいました。

アメリカやイギリスの信者の渡航には飛行機代や住まいも無料で提供し、「外国でも人気がある」というブランディングがされていました。しかしナイジェリアの施設では、ジョシュア氏の指示があるまで就寝ができなかったり、シャワー室までが監視されていたりと、自由を奪う過激な行為あったそうです。

さらに、「ジョシュアに近づくほど神に近づける」といった言葉に操られて、複数の信者が、ジョシュア氏からレイプや性暴力、拷問の被害にあったという報告がされています。牧師や伝道師による性暴力は世界各地で報告されていますが、信者の心理を利用したマインドコントロールであり、許されない残酷な行為です。

アフリカにカルトがはびこる理由

人の命を奪う可能性もある過激なカルトですが、なぜアフリカにおおくはびこり、多くの人がハマってしまうのでしょうか。考えられる理由は大きくふたつあります。

ひとつめは、政府と宗教の関係性です。アフリカの多くの国では、政治と宗教の癒着が存在してます。筆者の住むウガンダにも、カルトやそれに近い宗教団体は存在しますが、その中には政治家から援助を受けたり、特別な待遇を受けているものもあると、現地の友人が説明してくれました。そして選挙の際には、その宗教の信者から、まとまった票を集めることができるそうです。

ふたつめは、貧しい生活のため、十分な医療を受けられず、カルトによって、病気や障害の治療ができるという望みをもってしまうためです。病気の人や障害をもつ人やその家族などが、「医療に頼れないのなら神に頼ろう」と人が集まってくれるのです。実際、T・B・ジョシュア氏の「奇跡の治療」も、その過激な宣伝文句から、治療する経済力のない人たちが、信仰心さえあれば望みがあると考え、盲信的にカルトを信じるようになるのです。

あなたの信仰、利用されていない?

信仰は、ときに人を導いてくれるものであり、宗教の自由という精神のもと、何を信じるかは自由です。しかし、信者の地位や弱みを利用して、経済的・心理的な搾取をしたり、公平であるべき政治を悪用することは許されるべきではありません。日本でも、サークル勧誘に見せかけたカルト集団の活動がよく報告されていますので、遠いアフリカのことだと考えず、少しでも怪しいと感じたら、距離をとったり、しかるべき機関に相談したりしましょう。

References :
Statista「Distribution of the population of Sub-Saharan Africa as of 2020, by religious affiliation」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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