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パステルカラーにうっとり!仏文専攻・フランス留学経験のある10代がマリー・ローランサンの展覧会をレポート

パステルカラーにうっとり!仏文専攻・フランス留学経験のある10代がマリー・ローランサンの展覧会をレポート

ピンクやグレーの淡い色彩で描かれる、デフォルメされた女性たちの絵画。20世紀前半に活躍したフランスの女性画家、マリー・ローランサンの作品は、みなさんも一度はどこかで見たことがあるのではないでしょうか。

そんなマリー・ローランサンの作品が集められた展示が、アーティゾン美術館で開催中の「マリー・ローランサンー時代をうつす眼」。今回訪ねたのは、以前「気になる10代名鑑」に登場し、古着を素材に使用したバッグを製作する学生団体・carutenaのHanaさん(20)。

大学ではフランス文学を専攻し、昨年、半年間フランスのアンジェという街に留学をしていたということで、フランスにゆかりのあるティーンです。大学生まではWEB予約をすれば無料で観られるというこちらの展覧会について、Hanaさんにその魅力をたっぷり語ってもらいました。

Hana(20)。回収した古着でバッグへのアップサイクルに取り組む学生団体・carutena(カルテナ)で共同代表を務める。

パリジェンヌである画家、マリー・ローランサンの世界

こんにちは、Hanaです。今回はアーティゾン美術館で開催中の「マリー・ローランサンー時代をうつす眼」という展覧会に行ってきました。

フランスに留学をしていたときはよく美術館に行っていたのですが、日本ではあまり行かないので、今回はどんな作品と出会えるかとても楽しみにしていました。マリー・ローランサンは、フランス生まれの画家。フランス文学を学び、フランス留学の経験もあるわたしは、マリー・ローランサンがパリジェンヌだったことを知って、なんだか親近感をもちました!

キュビスムのイメージが変わる?

展示風景

まず最初に強く惹かれたのは、《若い女たち》(1910‒11年、ストックホルム近代美術館)という作品。こちらはキュビズムの影響を受けているそうです。背景は確かに図形で簡略化されているものの、前にいる女性たちの体の曲線は、なめらかでとっても美しい!

もともと持っていたキュビスムのイメージって、代表的なピカソの作品のような、角張った四角や三角が強く出ている、どこか幾何学的なもの。一方、それとは打って変わった印象を抱く作品で、目を奪われました。

4人の女性の配置のバランスの良さは、遠くからこの作品を見るとよりいっそうわかります! 大きい絵を真正面から見られる美術館だからこその気づきでした。

独特の色づかいにも注目

《女優たち》、1927 年頃、ポーラ美術館

ローランサンといえば、印象的な色彩。特に素敵だなと思った《女優たち》は、淡いパステルカラーのピンクやブルーが基調とされていました。同じピンクの中にも微妙なグラデーションがあって、舞台の幕やドレスのふんわりとした感じがよく表されています。

くっきりとした線が見えないのに、遠近感が色の寒暖差によって伝わってくるし、椅子もはっきりと描かれていないけど、左側の女性が座っているのがわかります。実はこの色の技法については、留学中の西洋美術史の授業で学んでいたんです。そのおかげで、絵をより深く楽しめました。

挿絵も手がけたローランサン

《椿姫》シリーズ、1936年、マリー・ローランサン美術館

また、わたしはフランス文学を専攻していることもあって、マリー・ローランサンが文学者と活発に交流していたという側面にも興味が湧きました。彼女自身も、詩を書いていたのだそう。彼女の中で、あらゆる芸術がつながっていることに、なんだか胸がワクワクしました。

フランスの小説家・劇作家、アレクサンドル・デュマ・フィスが書いた小説「椿姫」の挿絵も手がけたローランサン。小さい部屋の壁に、一列に絵が飾られていて、まるで物語の中にいるかのよう。椿姫のさまざまなシーンが、豊かな色遣いと優しいタッチで描かれていて、かわいかったです。

今後、フランス語の勉強するとき、ローランサンが挿絵している本を使ってみようかな……なんて贅沢なことを考えたりしました(笑)。

戦争を生き抜いた画家

展示風景

一方で、マリー・ローランサンは戦争の時期に生きた人でもありました。

第一次世界大戦の際、彼女がスペインへの亡命中に書いていた絵には、グレーが多く使われていたことが特徴だそう。その中でもひときわ目を引いた静物画が、グレーと黄色だけで構成された《レモンのある静物》(1919年、パリ市立近代美術館)です。

素朴なモチーフなのですが、黄色のレモンを使っているのは、悲しみの中にもひとつの希望があることを表しているようにも見えます。

美しい花モチーフにうっとり

《花を生けた花瓶》、1950年頃、マリー・ローランサン美術館

ローランサンといえば、花! 最晩年の花の静物画《花を生けた花瓶》は、とにかく色彩が豊かで、画面中央から全体に向けて広がる鮮やかなブーケは、息を呑むほど美しかったです。この作品を描いたとき、ローランサンは60代後半とのことで、おばあちゃんになってもこんな華やかな絵を描けるなんてびっくり。この絵、欲しくなっちゃいました!

アンドレ・グルー(デザイン)、マリー・ローランサン(絵付)、アドルフ・シャノー(制作)、《椅子(2脚)》1924年、東京都庭園美術館

《椅子(2脚)》は、ローランサンが椅子の背もたれ部分に絵付けした作品。家具にも画家が手を施すだけで、作品にもなれるのかと感動しました。花のブーケの絵はローランサンらしくデフォルメされていて、濃い緑色の葉とのバランスが美しかったです。家にあっても、美しすぎて、もったいなくて座れなさそうだな……とか思っちゃいました(笑)。

展示風景

花以外にも、扇や真珠、マンドリンや犬など、ローランサンの絵には、特定のモチーフが頻繁に登場します。それらに注目しながら展覧会を回るのも、宝探しみたいで面白いですよ。

同世代のアーティストとも比較してみて

作品を通して、ローランサンは画家以外にもいろんな仕事をしていたという好奇心旺盛な側面も知ることができました。

影響を与えたアンリ・マティス、アンドレ・ドラン、ジョルジュ・ブラック、パブロ・ピカソなど同時代の画家たちの作品も展示されているので、比較してみるとよりいっそう唯一無二のスタイルが浮かび上がってきます。影響を受けつつも、決して真似にはならないその姿勢がかっこいい! わたしもこんなふうに、オリジナリティを大事に、いろんな仕事に携わっていけたらなぁと刺激をもらえました。

また色彩やモチーフから、たくさんのインスピレーションも受けました。いつか、わたしが代表を務める、回収した古着でつくるバッグを販売する学生団体・carutena(カルテナ)でも、ローランサンの作品とのコラボ商品をつくれたら、かわいいだろうなぁと夢が膨らみます!

「マリー・ローランサン ―時代をうつす眼」概要

会場:アーティゾン美術館 6階 展示室
住所:東京都中央区京橋1-7-2
会期:2023年12月9日(土) ~2024年3月3日(日)
開館時間:10:00-18:00(2月23日を除く金曜日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで休館日:月曜日(2月12日は開館)、2月13日
入館料 :
一般(WEB予約チケット)1,800円 ※クレジット決済のみ
一般(窓口販売チケット)2,000円
大学生・専門学校生・高校生 無料(要WEB予約)※入館時に学生証か生徒手帳をご提示ください。
中学生以下 無料(予約不要)

Text: Hana

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Steenz編集部

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