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和装の魅力を発信する10代が「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」をレポート。若者世代が惹かれるポップさと強さの正体とは

和装の魅力を発信する10代が「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」をレポート。若者世代が惹かれるポップさと強さの正体とは

1980年代のアメリカのアートシーンを代表するアーティストのひとりである、キース・へリング。そのポップでキャッチーな作品は、2000年以降に生まれた10代であっても、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。それほどまで、現代においても絶大な人気を誇ったアーティストの、大型作品を含む約150点の作品を集めた展覧会「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」が、森アーツセンターギャラリーで開催中です。

そんな気になる展覧会を訪れたのは、以前「気になる10代名鑑」に登場した、北村悠吾さん(19歳)。文化学園大学に通ってデザイナーになるための勉強をしながら、和装の魅力を国内外に発信するべく、普段から和服を身にまとって過ごしています。そんなオリジナリティをもつ北村さんが、キース・へリング展で何を感じ、何を受け取ったのか。レポートしてもらいました。

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これがキース・へリングのキャリアの始まり!3分間で描きあげた作品

こんにちは、北村悠吾です。現在19歳で、大学でファッションについて学びながら、着物のスタイリングなどのお仕事もしています。今回は、森アーツセンターギャラリーにて開催されている「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」を観に行ってきました。

キース・ヘリングの作品は、誰でも一度くらいは目にしたことがあると思います。オリジナリティあふれる作風で、おしゃれでどこかかわいらしくて……。そんな作品を、どんな思いで描いていたのか。ニューヨーカーたちの心をつかんだ彼のアートを、さっそく観ていきたいと思います!

最初の空間には、今回、日本初公開だというサブウェイ・ドローイング5点を含む、全部で7点の作品が公開されています。そこで、キース・ヘリング展の開催にあたって、アートコレクターのタッカー・ヒューズさんのお話を聞くことができました。

オレンジのベストにキャップを被り、地下鉄の作業員に変装したタッカー・ヒューズさん

ヒューズさんは、キース・ヘリングがまだそれほど有名ではなかったころから、力強くてユニークなサブウェイ・ドローイングに魅せられたそう。彼の絵をコレクションするため、午前2時に起きて、オレンジのベストに帽子を被って地下鉄構内の作業員に扮装し、へリングが描き上げたばかりのドローイングを、撤去される前に急いでヘラを使ってキレイに剥がし、ベッドカバーに包んで持って帰っていたそうです。

そのことを話すヒューズさんは、なんだかとても楽しそうでした。

ポップさの中にある強いメッセージ性

黒い紙にチョークで描かれたサブウェイ・ドローイングを堪能したあとは、みなさんが見たことある、カラフルな作品群へと移ります。「キース・ヘリングといえばこのカラフルで独特な作品でしょ」と思っていたので、いよいよ本番といった感じです。

どの作品を見ても、古臭くなく、本当におしゃれ! たまに、性的なモチーフなどを描いた作品もあるのですが、キース・ヘリングのタッチだといやらしさはありません。

特に気になった作品は、こちらの「南アフリカ解放」です。この作品は、南アフリカの人種隔離政策(アパルトヘイト)によって、迫害を受けていた黒人たちの闘争を描いたものです。

どうしてこの作品が気になったのかというと、アメリカで起きた黒人男性が白人警官に撃たれて亡くなったというニュースを思い出したからです。当時、そのニュースを聞いたとき、強く心が痛みました。その思いを、キース・ヘリングの絵を見て改めて思い出し、差別について改めて考えさせられました。

キース・ヘリングは日本がお好き?

今回の展覧会で初めて知りましたが、キース・ヘリングは何回も日本に来ていたんです。そんなこともあって、日本っぽいモチーフをつかった作品なども多数展示されていました。

わたしは普段から着物を着ているので、日本の掛け軸やお扇子などの作品には、特に強く惹かれました! キース・ヘリングのようなアートも、こうやって見ると日本の文化に馴染んで、さらに日本人に受け入れやすくなっているような気がしました。

わたし自身、海外に着物の魅力を広めたいと思っているので、このようにその国の文化と融合させることが和装の発信につながっていくんだなと気付かされました。

また、広島の平和を祈った作品や、核廃棄のためのポスターなども展示されていました。

原爆で被爆された方の多くが亡くなられて、最近ではその悲惨さを伝える人が少なくなっていると聞いています。

わたしの曽祖母は、東京大空襲についていつも話してくれます。火が迫って逃げるところが川しかなく、飛び込んで溺れてしまった人のことや、火に囲まれて逃げれなかった人のことを、94歳になったいまでも鮮明に覚えているそうです。わたしの曽祖母は被爆者ではありませんが、こういう話が聞けるのも貴重なことなのだなと感じています。

今回のキース・ヘリングの作品を通して、わたしたちの世代が、原爆についても関心をもつべきだなと感じました。

お楽しみのアートグッズ売り場

展示を見終わったあとは、お楽しみのアートグッズ売り場に立ち寄りました。

ポストカード、かわいいいいい! 全種類、欲しくなってしまいましたが、予算に限りがあるので、厳しい審査をおこなって、なんとか3枚のポストカードに厳選しました。めちゃくちゃ素敵なオリジナルのTシャツなどもあって、それらも家に連れて帰りたくなりましたが、ぐっと耐えました。

まとめ

本当に楽しい展示でした! わたしとしては、キース・ヘリングの原点であるサブウェイ・ドローイングの展示と、日本をテーマにした展示がいちばんのお気に入りでした。あと、キース・ヘリングがかつて日本滞在を楽しんで、「東京はすごい」と展示に書かれていたのが印象に残っています!

ほかにも、さまざまテーマがあり、それぞれブースが分かれているのもあって、非常に見応えがありました。みなさんもぜひ、「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」を見に行ってみてください!

「キース・へリング展 アートをストリートへ」概要

会場:森アーツセンターギャラリー
住所:〒106-0032 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
会期:2023年12月9日(土)~2024年2月25日(日)
休館日:会期中無休
開館時間:10:00〜19:00(金曜日・土曜日は20:00まで)※入場は閉館の30分前まで
観覧料:一般、大学生・専門学校生 2,200円/中高生 1,700円/小学生 700円、未就学児無料 ※事前予約制(日時指定券)

© Keith Haring Foundation. Licensed by Artestar,New York.
Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation

Text:Yugo Kitamura

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Steenz編集部

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