「気になる10代名鑑」の588人目は、帆刈万皓さん(19)。東京藝術大学で油画を専攻し、「大学を卒業するまでに個展を開く」という目標を掲げて、知識や技術力を磨いています。最近では木彫にも挑戦するなど、日々創作に取り組んでいる万皓さんに、自身の創作に影響を与えた人や、実現させたいビジョンについて、話を聞きました。
帆刈万皓を知るための5つの質問
Q1. あなたがいま力を入れていることについて教えてください
「絵を描くための知識をインプットすることです。藝大には、何年間もかけて画材の研究を重ね、技術も磨いたうえで入学している人もたくさんいるのですが、僕は現役で入ったこともあり、まだまだ知らないことも多いし、大学の友人と話していると、自分の知識は本当に少ないんだなと思い知ることが多くて……。
技術も知識ももっている人たちに、早く追いつきたい。最近は、油絵以外のメディアにも挑戦しようと思って、木彫にも取り組んでいます。普段は平面での表現をメインに創作をしているのですが、立体で空間をとらえてみることで、平面の創作に何か取り入れられるものはないかと考えています」
Q2. 創作活動をしようと思ったきっかけは?
「単純に、自分で何かを生み出すという行為に興味があったのと、自分がかっこいいと思うものは自分がいちばんわかっているはずだから、他の人がつくったものを購入するより、創作したほうが満足できるのでは……と考えたことがきっかけです。
明確なテーマをもって創作し始めたのは受験のとき。方向性を決めるために自分の作品を振り返ったときに、“不安感”を表現するのが向いていることがわかったんです。いまも自分の得意とするテーマのひとつになっています」
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Q3. 自身の活動に影響を与えた人はいますか?
「藝大の大学院油画専攻を卒業されている、現代美術家の井田幸昌さんです。大きなキャンバスに、左官屋さんが使う道具や、大きい筆で、体全体を動かして絵を描いていて。画家本人の動きが想像できるような、とても力あふれる作品なのですが、そのなかにも繊細さがあって。実際に作品を目の当たりにして、強い衝撃を受けたし、憧れの人です」
Q4. 創作を通して、実現させたいビジョンがあれば教えてください
「誰かが自分のつくった作品を見て、純粋に楽しいと感じてもらいたいです。何か難しいことを感じてほしいという目標を設定しているわけじゃないし、解説や構図ばかりに注目するのではなく、どんな解釈をしてもいいから、とにかく楽しんでもらいたいなと思っています。
最近は、『僕の絵を観る人に楽しんでほしい』という気持ちから、“不安感”というメインテーマから少し外れた創作も試しています。不安感を画面に演出するために、暗めの色を多く使うことが多いんですが、そういった意図が、見ていて疲れてしまったり、わざとらしさを感じてしまったりする原因になるのかも……と考えるようにもなったんです。
自分の抱える感情を描こうとすると、どうしても不安感に近いテーマになることが多いのですが、これからどういったもの表現していくかは、よく考えていきたいです」
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Q5. 将来の展望について教えてください
「卒業するまでに個展を開くことと、学部を卒業したら修士課程に進んで、井田さんのアシスタントになりたいと思っています。
ある程度大きな規模の個展を開きたいので、いまはそのために技術や知識を養う時期だと考えて、日々の創作に取り組んでいます。修士課程は、自分で絵を描いて、教授から指摘やアドバイスをもらいながら、作品をよりよくしていくことが主な内容になるので、課題でガチガチな状態があまり好きじゃない僕には、とても楽しそうだなと感じたんです。
また、目標とはすこし違うのですが、大きなアトリエがほしいです。いまはひとり暮らしの部屋や、大学にあるスペースである程度描けていますが、やっぱり広いと表現の幅も広がるし、井田さんはもともと工場だったところをふたつ、アトリエにしたという話も聞いたので、大きなアトリエで、自分がやりたい創作を思いっきりやれるようになりたいです」
帆刈万皓のプロフィール
年齢:19歳
出身地:福島県郡山市
趣味:中野ブロードウェイに行くこと
特技:泳ぐこと
大切にしている言葉:いったん疑う
帆刈万皓のSNS
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人木彫
進級展示で展示した作品です。
今は家に飾ってますいい感じです。 pic.twitter.com/gGd4kBBXLU— 帆刈万皓 (@Hogattyo823) December 23, 2023
Photo:Eri Miura
Text:Kanon Yoshizumi