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「環境問題には興味ない」という10代が森美術館『私たちのエコロジー』展へ。たどりついたのは死生観?

「環境問題には興味ない」という10代が森美術館『私たちのエコロジー』展へ。たどりついたのは死生観?

国際機関「世界経済フォーラム」の調べによると、Z世代のうち約90%近くが社会問題及び環境問題を意識していることがわかっています。現代日本に生きる10代も、環境問題に関心がある人は多いはず。

でも一方で、必ずしも全員が環境問題に関心があるわけではなく、興味がないという10代もいるはず。以前「気になる10代名鑑」に登場した、クリエイティブな活動に熱心なれいんぼーさん(18歳)もそのひとり。「環境問題の知識はほとんどない」と語ります。

そんなれいんぼーさんと一緒に、森美術館で開催中の『私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために』を訪ねて、ゼロから環境問題や生態系について考えてきてもらいました。

れいんぼー(18)。プログラミングや建築など、クリエイティブなジャンルに興味があり、何にでも挑戦している。

レインボーヘアで毎日をワクワク過ごす!プロジェクト、アート、プログラミング、どれも楽しい!【れいんぼー・16歳】
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https://steenz.jp/9741/

環境問題とか一切興味ないけど…私たちのエコロジー展に行ってみた

はじめまして、れいんぼーと申します。普段は通信制の高校に通っていて、たまに企画やデザインのお仕事をしたりして、ほんの少しものづくりをかじってる「虹」です。今回は森美術館で行われている、『私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために』という展示に行ってきました。

……もしかすると、「あれ、ものづくりと関係なくね?」って思うかもしれません。確かに、レインボーが普段やっていることと、この展示内容……ほとんど関係ないです。れいんぼーが普段手がけているものは、環境問題や社会問題と、少しもかすっていないと自覚しています(笑)。

でも実は、森美術館の展示は毎回行っている、大好きな美術館だったりします。

そもそも環境問題についてはゼロ知識だし、半分ノリで来ちゃったので、この記事は「環境問題を一切通ってこなかった、無知な高校生からの視点」と思って見ていただけるとありがたいです!

テーマは「生と死」なのかもしれない

タイトルに「エコロジー」ってあるので、最初はめっちゃ「ザ・環境問題」系の展示だと思うでしょう。自分でも「楽しめるかな」って少し怖かったです。でも実際に行ってみたらそんなことはなく、もちろん公害などの環境問題が取り上げられているんですが、その中に、ひとつのテーマを見出したのです。

それが「生と死」です。

もっとゴリゴリに、遠くの国や地域の環境問題を扱っているのかなと思っていたけれど、身近に感じられました。そして、この「生と死」という言葉が自分の頭の中に現れてからは、展示についてのテーマが自分の視界に入りやすくなった気がします。

ホタテの貝殻を“踏む”

ニナ・カネル《マッスル・メモリー(5 トン》

SNSなどでも見かけた、この展覧会の代表的な作品といえばコレです! 大量廃棄と再利用が課題になっている北海道産の5トンものホタテの貝殻の上を歩くという展示なのですが、正直なところ、歩いていて感じる感触や音は、全然いい気分になりません……。

でも、だからこそ、命の重みを感じます。だって、廃棄された命の抜け殻の上を歩いているのと同じですよね。例えば、羊毛でつくられた絨毯の上を歩いたり、ワニの皮で作られたバッグをもったりしても、命の重さを感じることはほとんどないけど、この展示で、気持ちの悪い音と踏み潰された貝殻が一面に広がる光景が、自分の目と耳を痛めつけてくる感覚がしました。

砂の顔が壊れていく…

鯉江良二《土に還る(1)》、1971年
所蔵:常滑市(愛知)、撮影:怡土鉄夫

砂でできた顔が、崩壊していくような作品。実はこれ、ただの砂でできているのではなく、便器や洗面器などに使われる衛生陶器を粉末にしたものでできていて、作家さん自身の顔が崩壊していく様子が表現されているそうです。

雨が降って土に浸透して、いずれ飲み水になって、それをまた自分たちが消化して、海に流れて、また空の上で雨となっていく。それと同じように、砂や泥などの自然物で作られたものが壊れて、また本来あった場所へと還っていく……。このような地球全体のサイクル、まさに“エコロジー”を描いた作品でした。

一方で、いまの時代はプラスチック製品のような、循環が難しいものばかりがあふれていますよね。アートのような創作も含め、“つくられるもの”というのは、こうであるべきなのだと強く訴えられているような気がしました。

真珠がプカプカと浮かぶブルーの空間

モニラ・アルカディリ《恨み言》

カーテンを開けると、ブルーの部屋に白い球体が5つ天井から吊るされています。これまでの展示と比べても、とっても異様な空間です。部屋の隅には、ポエムが書かれているかのような紙も置いてあり、ささやくようにそのポエムが聞こえてきます。

どうやらそれぞれの玉には、「侵入」「搾取」「干渉」「劣化」「変貌」とテーマがあるようです。

ポエムの音声は、心地のいいものではないです。けれども、もしかすると自分も含めて、誰もが似たようなものを心に秘めていて、心地が良くないと感じるのは、この作品の中に入り込むと心の中が暴かれている感じがするからなのだと思いました。

レンガづくりの映像から何を見る?

アリ・シェリ《人と神と泥について》

「自分が見たかった作品はコレだ」と強く思った展示です。ダム建設で強制移住をさせられた日雇い労働者が、泥からレンガを作る映像とともに、ナレーションで神話や聖書からの引用が流れます。

聖書には、神は泥を用いて自分の分身を作るように人間を創造したと書かれているそう。泥から生まれた人間が、自分たちの源からまた新しいものを創造していく。未来へとつながるように、与えられたものが、命がめぐる……。仏教の考えにはなるけれど、「輪廻転生」の概念にも近いものを感じました。

神話や聖書にあまり詳しくないので、言葉にするのは難しいですが、たくさんの人に見てもらいたいと思った作品です。これぞ死生観だと感じるはずです。

今回訪れた『私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために』は、言葉以上に感じることが多い展示だと思います。この記事もふくめ、誰がが書いた感想を読むのはそこそこに、実際に行ってみて、体感してみてほしいです。

この展示を通して得た感情や考えたことを、実際の日常生活の中に押し込むことは、とても大変なことだと思います。でもきっと、心に染み付く、そんな展示だと感じました。

「森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」概要

会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー 53階
会期:2023年10月18日(日)~2024年3月31日(日)会期中無休
開館時間:10:00 – 22:00(火曜日は19:00まで。ただし3月19日(火)は22:00まで)※最終入館は閉館時間の30分前まで
入場料:
[平日]
一般 2,000円(1,800円)
学生(高校・大学生)1,400円(1,300円)
子供(4歳~中学生)800円(700円)
シニア(65歳以上)1,700円(1,500円)
[土・日・休日]
一般 2,200円(2,000円)
学生(高校・大学生)1,500円(1,400円)
子供(4歳~中学生)900円(800円)
シニア(65歳以上)1,900円(1,700円)
※専用オンラインサイトでチケットを購入すると( )の料金が適用されます。
展覧会ホームページ:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/eco/

Text: Rainbow

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Atsuko Arahata

エディター

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