「気になる10代名鑑」の565人目は、イツナさん(19)。高校時代から油絵を専攻し、卒業後のギャップイヤーを経て、来年の春から大学で絵の道を究める選択をしました。「苦しみのなかにあるささやかな幸せを表現したい」と話すイツナさんに、作品にかける想いや、今後の目標についてくわしく聞いてみました。
イツナの活動を知る5つの質問
Q1. プロフィールを教えてください。
「絵を描いています。高校から油彩画の専攻をして、画塾に通っていました。今年の3月に高校を卒業してから、半年ぐらい自分の進路についていろいろと思いをめぐらせて、芸術系の大学に進むことになりました。進学後も、絵の道を究めていく予定です。
この半年の間に、絵への向き合い方が変わりました。以前は、同級生やまわりの子とくらべて、自分の絵に自信をもてなかったけど、自分には自分の取り組み方があるし、自分にしか描けない絵があるから、他の人とくらべる必要がないと気づいて。それで、自信を持って絵が描けるようになったんです。
小さいときから架空の世界に没頭することが好きで、よく絵を描いていました。それに母が美術館に連れて行ってくれたり、画材を買ってくれたりして、絵を描く環境を与えてくれたのも大きかったですね」
Q2. 創作活動のテーマとなっていることはなんですか?
「人間に感情があるからこそ生まれる『陰と陽』が大きなテーマです。例えば、争いの中であっても、誰かの誕生日を祝ったり、新しい命が誕生したりして、そこに喜びを見出せる……。つらくて厳しい世の中でも、小さな幸せを感じることができるのってすごく素敵なことだし、人間にしかできないことなんじゃないかなと思っていて、それを表現したいんです。
高校の卒業制作に、『今日を愛せますように。』という作品を描いたんですけど、このテーマをうまく表現できたと思っています。わたしには『椿』というイマジナリーフレンドがいて、学校にはなかなかうまく馴染めなくて、ひとりでいいやと強がっていたとき、椿が現れて、語りかけてくるようになりました。
そこで、自分が傷ついていることに気づいたんです。苦しい日々の中で椿の存在に救われながら、過去と向き合って誇れる自分になりたいという決意を込めて描いたのが、この作品です」
F150号 キャンバス 油彩画
『今日を愛せますように。』 pic.twitter.com/mGClBYvgg7— イツナ (@hn_itsuna) December 20, 2022
Q3. 影響を受けている作品や人はありますか?
「影響を受けた作家さんはたくさんいます。ジャンルを問わず、西洋の歴史画や宗教画、水墨画など、さまざまなものをインプットして、自分らしい表現を模索しているんです。
最近だと、現代画家の菊池匠さんの絵の雰囲気に惹かれます。洗練されたシンプルな線の中に、力がみなぎっているところが素敵で。それから油絵画家の鴨井玲さんも。特に、生と死について考え抜かれたテーマの作品は、重々しい筆致と色使いの中に、微かな淡さや明るさが見出せる気がしていて。わたしのテーマにも共通する波動を感じるんです」
こんなんばっか pic.twitter.com/f5b1omKIKc
— イツナ (@hn_itsuna) July 23, 2023
Q4. これまでの活動のなかで、印象的だった出来事は?
「高校の卒業制作を描いたときに、その絵を見てくれた後輩の子が『この絵がすごく好きです』と、直接言葉を伝えてくれたんです。
わたし自身、校内コンクールなど作品を披露する機会はあったのですが、まわりの子の素晴らしい作品たちに埋もれてしまって、注目してもらえることなんてないって思っていて。誰にも知られてないんだろうなと思っていたので、すごくビックリしました。それをきっかけに、その後輩と作品や考え方について話すようになり、自分の世界が広がりました。
結果が出なかったとしても、魂込めて描いたものならちゃんと伝わるし、心を射止められるんだと気づいたんです。人の心に届く作品を描きたいと、一層強く持った出来事でした」
Q5. 今後、やってみたいことは?
「この先も絵を描き続けて、一人前の画家になることが目標です。展示会にも挑戦してみたいです。
それから、わたし自身が絵を描くことで、心が救われたという過去があるので、次の世代の子どもたちが心を守る術として絵を描くことを選択肢のひとつに入れてほしいなと、密かに思っているんです。つらくてさびしい思いをしている子どもたちに向けて、小さな絵画教室を開いたり、無料で絵を楽しむことができる場をつくりたいです」
イツナのプロフィール
年齢:19歳
出身:東京都
趣味:人間観察
特技:描くことを好きでいること
大切にしている言葉:故きを温めて新しきを知る
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ゆめのなか pic.twitter.com/HZOe5hLGf7
— イツナ (@hn_itsuna) August 28, 2023
Photo:Eri Miura
Text:Chihiro Bandome