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西洋美術史を学ぶ10代が「もじ イメージ Graphic 展」をレポート。おなじみの絵文字やイラストの奥深さに触れてみた

西洋美術史を学ぶ10代が「もじ イメージ Graphic 展」をレポート。おなじみの絵文字やイラストの奥深さに触れてみた

お菓子のパッケージ、電車広告、YouTubeのサムネイル……わたしの生活は、多くのグラフィックデザインに囲まれています。それに注目してみると、規則性や絶妙なバランス感など、何か面白い発見があるかもしれません。現在、「六本木・21_21 DESIGN SIGHT」では、そんな日本のグラフィックデザインの変遷を学ぶことのできる「もじ イメージ Graphic 展」が開催されています。

そんな気になる展示を訪れたのは、以前「気になる10代名鑑」に登場し、中央大学文学部で西洋美術史を勉強している、石田瑞季さん。普段はあまり触れてこなかったというデザインの展覧会で、ユニークな日本語グラフィックの世界をレポートしてもらいます。

石田瑞季(19)。中央大学で西洋美術史を学びながら、学芸員資格の取得を目指す。

留学経験者をつなぐコミュニティづくりに奔走。得意と好きを掛け合わせて「やりたいこと」を見つける!【石田瑞季・19歳】 | Steenz(スティーンズ)
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https://steenz.jp/9321/

日本語グラフィックの魅力が詰まった展覧会

みなさん、こんにちは。石田瑞季です。現在、大学で美術史や美術館、文化遺産の専門的な見方と知識を学びながら、学芸員資格の取得をめざしています。今回、21_21 DESIGN SIGHTで開催されている「もじ イメージ Graphic 展」をポートするという機会をいただきました。普段は、西洋美術史を中心に勉強しているので、とても新鮮でした。

ちなみに、いまでは世界中の人が使っている「Emoji(絵文字)」も、もともとは日本の携帯電話で用いられていた記号なんです!

主に、1990年代以降のグラフィックデザインを中心に、国内外54組のグラフィックデザイナーやアーティストによるプロジェクトが集まった、盛りだくさんのラインナップ。今回はこの中からふたつ、特に印象に残ったものを紹介します。

Appleは神話と共にやってきた?

鈴木八朗「新聞広告 《Appleが来た》」1985

第1章では、日本語の文字がデザインされてきた歴史と、ポスターなどの戦後のグラフィックデザイン作品を通じて、漢字、ひらがな、カタカナ、さらに現代では絵文字など、複数の文字が組み合わさった日本語が、どのようにデザインされてきたのかを追うことができます。

数多くの展示の中で、特に印象的だったのが、1985年に、日本の伝説的なアートディレクターである、鈴木八朗さんがつくった新聞広告『Appleが来た』。

数々の神話とともに「あのApple」がやって来ました。―日本で、「あのApple」が「このApple」になる日ももうすぐです。―

カラー写真が普及しはじめた1970年代からは、広告もカラー印刷で自社製品をアピールするものが多かったといいます。そんな中、《Appleが来た》はモノクロを基調とし、なめらかかつ力強い筆文字で、会社名を全面にアピールしています。さらに、神々の手にリンゴを持たせるという独創性……。

時代の風潮を破るような、新しいトレンドを常に切り拓いてきたApple。当時から、リンゴマークがいつか社会に定着することが決まっていたかのよう。そのイノベーティブな表現から、当時の人々の驚きと期待を感じ取ることができます。

なんでこんなところに「いらすとや」が…?

みふねたかし 「いらすとや」のイラスト 2012-2020

第2章は、日本語のグラフィック文化が、グローバリゼーションとデジタルの波の中で、何をどう生み出してきたか、そしてどのような可能性を見せているのかを紹介されています。難しそうだな……」と少し身構えながら進んでいくと、突如現れる「いらすとや」のグラフィックの展示。見慣れた絵柄に少しほっとするような、はたまた展覧会で“展示”されていることへの違和感を感じるような、不思議な感情にさせる空間でした。

見慣れたこのイラストが、なぜここに展示されているのでしょうか?

わたしたちは、LINEやSNSなどで文章を書くとき、単調なテキスト文字のみならず、絵文字やスタンプなどのイラストレーションも使いますよね。相手に伝えたい感情をより的確に表現するうえで、補足としてのイラストレーションを活用することは、当たり前となっているカルチャーです。ですが、実は他の国ではあまり見られない、とても日本的な文化思考なのだそう。

そんな文化の中で「いらすとや」は、個人・法人・商用・非商用を問わずフリー(無料)で使用可能であり、アクセシビリティに富んでいて、多種多様な親しみやすい絵柄のイラストが2万点以上あり、利便性にも優れています。

個人だけでなく、企業や飲食店、学校や自治体まで……、日本中のありとあらゆるシーンに浸透しており、これほどわたしたちのビジュアルコミュニケーションを支えているイラストレーターは、他にはいないといっても過言ではありません。このような視点でもう一度見てみると、この展覧会で「いらすとや」が“展示”されていることが、納得できるように感じてきませんか?

展示風景より

ほかにも、PARCOのポスターやJTの広告、漫画、お菓子のパッケージなど、多くのひとが一度は見たことがあるかもしれないグラフィックが、数多く展示されています。このグラフィックが、デザイン史の中で、どんな役割を果たしたのか……「日常」と「展示空間」の狭間にあるグラフィックデザインの面白さを感じながら、自分なりの答えを探してみてはいかがでしょうか。

企画展「もじ イメージ Graphic 展」概要

会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
住所:東京都港区赤坂9-7-6
会期:2023年11月23日(木・祝 )~2024年3月10日(日)
休館日:火曜日(12月26日は開館)、年末年始(12月27日~1月3日)
開館時間:10:00 – 19:00(入場は18:30まで)
入場料:一般1,400円 学生800円 高校生500円 中学生以下無料
展覧会ホームページ:https://www.2121designsight.jp/program/graphic/

Text:Mizuki Ishida

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Steenz編集部

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